2009/05/20(水)低電圧ヘッドホンアンプの問題解決

低電圧ヘッドホンアンプの最大の弱点は、低電圧動作時(±1.25V/エネループ2本駆動)における電圧出力範囲の狭さにありました。

問題の詳細

op-dbuf_p1.png

使用するオペアンプは、Rail to Rail(レイル・ツー・レイル)と呼ばれる電源電圧付近まで出力できるタイプのオペアンプです。

その後段にあるバッファはいわゆるダイアモンドバッファです。バイポーラトランジスタ特有の超低インピーダンス出力が可能な一方、バイポーラトランジスタでは避けて通れないVbe電圧0.6Vが失われ、出力電圧範囲はおよそ±0.6Vになります。

低インピーダンスヘッドホン使用時は±0.6Vで十分であったものが、50Ω~上のヘッドホンなどでは±0.6Vでは音量不足となることがあります*1

*1 : 例えばAKG Kx71などでは、普通聴く音量では十分ですが、大き目の音量でききたいと思うとクリップ歪みを感じてしまいます

出力ミックス

ここでPと書かれた部分を何らかの方法で接続し、Aという出力経路のほかに、Bの出力経路も使用可能にすれば、オペアンプ出力範囲である±1.2Vの出力を得ることができます。

この接続方法が問題です。

  • 0Ω(ジャンパ)では、オペアンプから負荷を駆動する役割が大きく低音のしまりが悪くなります。
  • 1Ωでは、低音のしまりはそこそこ確保できますが切断時ほど明瞭ではありません。また1Ω出力抵抗による音質劣化が少し気になります。
  • 10Ωでは、低音のしまりは問題なく確保できますが、10Ω出力抵抗による音質劣化が大きく気になります。

抵抗を介さずに接続すると明瞭感や音のしまりが悪くなり、抵抗を介して接続すると抵抗による音質劣化が気になります。またあまり抵抗値を大きくすると、1.2Vの駆動範囲がどんどん狭くなります。

低インピーダンスヘッドホンしか使わないのならばPは切断したほうが音がいいし、中~高インピーダンスヘッドホンしか使わないのならばPは接続してしまっても音質的にほとんど変わりません。

しかして人間とは欲深いもので。どちらのヘッドホンでもベストの音質を得たいと思うのは自然なことです。

解決編

そもそも、出力電圧が±0.6Vの範囲ならばBルートで電流が通らないほうがいいので抵抗を使うことがナンセンスです。これが半年以上もジレンマだったのですが、うまい解決策を見つけました。

op-dbuf_p2.png

D1/D2にように互いに逆方向に並列接続したショットキーバリアダイオードを接続するだけ(シリコンダイオード不可)。SBDの順方向電圧があるので±1.2Vとは行きませんが±1.0V程度の出力範囲を得ることができました。これならば、バッファの出力範囲内のときはBルートには電流は流れないので、音質の劣化も心配ありません。

感想とか

低電圧(±1.2V)はもうやり尽した感じです。

正直飽きた(笑)

電圧が限られると回路上の工夫も限られますので、これ以上はもう無理だろうって感想です。次期HPAがあるとすれば低電圧動作で高gmなMOS-FETが登場したときか、D級アンプとかでしょうか。*2

次アンプ作るとしたらスピーカーアンプ作りたいですね。もっとも、ほとんど同じ回路でもスピーカ鳴っちゃうんだけど(笑)