オペアンプの仕様と音質の謎

はてブ数 2008/06/29電子::オーディオ

※この記事は多少古くなっています。書かれている情報はおよそ正しいのですが、一部アップデートが必要な箇所があります。また一覧表に含まれない音質の優れたオペアンプもたくさんあります。


およそオーディオ用と思われるオペアンプを一覧に纏めてみました。

一覧表

20080730_opamp_list.gif

  • 色々なメーカーを横断的に調べました。ほかに追加情報あればよろしくお願いします。

音質三大要素

  • 入力換算雑音が低いこと
  • 駆動できる電流が大きいこと
  • 発振しにくいこと

入力換算雑音

音質と最も深く関するのは入力換算雑音です。入力換算残音は低域ほど増大する傾向があり、着目すべきは公称値よりも0.1~10Hzの雑音電圧(nVpp)です。音の明瞭さに対して大きく影響します。

また面白いことに入力換算電流雑音はそこまで大きく問題になりません(まったくではないので注意する。例えば、AD797は入力換算電圧雑音の割にあまり音は良くない)。

  • 1/fコーナーと言われる低域雑音が増大するポイントが、低ければ低いほど良いです。
  • 低雑音を謳いながら、高周波(1MHz以上)でしか入力換算雑音が小さくないオペアンプも結構あります。この傾向はビデオ信号用オペアンプで多く見られます。
  • 0.1~10Hzが乗ってなかったとしても、入力換算電圧雑音 対 周波数のグラフを見ることです。例えば1Hzの値を読めば、そのまま電圧値として換算できます。

入力換算雑音は通常定常状態で測定されます(信号が一定の状態)。音楽などでは、信号は常に変動しているため(非定常状態)、この信号と定常入力換算雑音に比例した、もっと大きな雑音(非線形な雑音→歪み)が発生していると予想されます。

追記

0.1-10Hzの換算雑音が低いということは「音声帯域における雑音が少ない」ということだろうと推測しています。

また入力電流雑音という値があり、入力インピーダンス(オペアンプを入力と見た時の入力側出力インピーダンス)×電流雑音=入力換算電圧雑音と等価となりますので、回路構成をみながら両方考慮する必要があります。

駆動能力

入力換算雑音が入力側の性能を表すパラメーターだとすれば、出力側の性能を表すパラメーターが駆動力です。オペアンプ駆動型ヘッドホンアンプ(Chu-Moy等)で特定の周波数に対する癖などは、この駆動能力によるものと推測されます。

オペアンプはNFBをかけることで強烈に負荷を駆動(制御)しますが、これが理想的に働くためには大きな駆動力が必要です。駆動力に制約があるとき、いくらみかけの出力インピーダンスが0.1Ω以下であっても((歪み率でも同じ))、実際にその能力を発揮することはできません

駆動力は次から分かります。

  • 駆動電流(出力インピーダンス)
  • 出力可能電圧範囲

駆動電流は、そのままどれだけの電流を一気に放出できるかという能力を表します。

見落としがちなのが駆動電圧です。コイルとコンデンサが合わさったような厄介な負荷(ヘッドホン等)を厳密に制御するためには、出力電圧が無限まで出せる必要があります。しかし通常のオペアンプは電源電圧はおろか、電源電圧よりずっと小さい電圧しか出力することができません。

レールツーレールと呼ばれるオペアンプは、おおよそ電源一杯まで出力することができ、電源電圧効率の点では有利になります。

例えば、1Vppの矩形波を出力する実験をしたとします。Aのオペアンプは1.2Vppまで出力できるもの、Bのオペアンプは10Vppまで出力できるものです。負荷が1kΩぐらいの抵抗ならば、どちらも綺麗に矩形波を出力します。しかしヘッドホンのようなコイルとコンデンサがあわさった、しかも低インピーダンスの負荷を持ってきた場合、Aのオペアンプでは駆動力不足になり波形が崩れてしまいます。

電源電圧を高くしなければ性能を発揮しないオペアンプ等は、このような原理によるものです。最近は低電圧で高性能なオペアンプが活発に開発されており、これらをうまく利用することで、低電圧・高性能なオペアンプ型ヘッドホンアンプも製作できます。*1

*1 : 実際作成しています。回路図等はいずれお知らせします。

音質改善の指針

オペアンプ型ヘッドホンアンプで音質を改善するためには2つの要素があることが分かります。

  1. 入力換算雑音の小さいオペアンプ使用による、音の明瞭感の確保(濁らせない)。
  2. 駆動力確保による、出力の癖の除去。

入力換算雑音が小さく、駆動力の大きいオペアンプがあれば良いのですが、なかなかそのようなものはありません。オペアンプヘッドホンアンプの出力段にダイアモンドバッファを付ける人が多いのは、ドライブ能力を大きくする意味があります。

同じように、LME49600やBUF634、LT1010などのバッファICを使うことで大きな駆動力を確保し、安定した動作をさせることもできます。LM6172のように出力抵抗が小さく電流の大きいICをバッファ代わりに使うこともできます(参考記事:LT1010とBUF634を改めて比較 by 司さん)。

つまり、A47式のような構成をする場合ならば、1段目に入力換算雑音が小さいオペアンプを、2段目にとにかくドライブ能力が高く安定した(負荷容量に対して安定な)オペアンプを用意することで、より良い音質を確保出来ます。

オペアンプの音に変な癖がない、入力換算雑音の少ない好みのICを初段として用いると良いでしょう。

その他パラメータ解説

帯域(GB積)

Gain Bandwidthというものですが、増幅可能な周波数帯域です。測り方で数倍以上変わってくるためあまり参考にはならないのですが、同じメーカー内なら参考にはなります。

同じ仕様ならば、GB積の高い物の方が音質がよくなる傾向があるようです。しかし、GB積が高くなると発振しやすくなる諸刃の剣です。

安定ゲイン

表に安定ゲインとして書いてありますが、メーカーが「閉ループで何倍動作を保証しているか」という部分の抜粋です。これも表記がまちまちで、同じ「unity gain stable」でも位相補償を付けないと安定じゃない等あります。詳しくは仕様書を見るしかありません。

PSRR, 消費電流

オペアンプは電源ノイズがあるとき、それをそのまま出力に出してしまう傾向があります。電源ノイズに対してどれだけ耐性があるか、電源ノイズを無視してどれだけ出力を安定させることができるかというパラメーターがPSRR(電源電圧変動除去比)です。大きいほど良くなります。*2

消費電流はアンプ1chあたりの消費電流です(出力電流を含まない)。オペアンプはそれ自身の動作で消費電流が変動し、自分自身で電源ノイズを生み出します。ですから、消費電流が小さくPSRRが大きい方が良い……と一般には思われていますが、音質との関係は微妙なところみたいです(関係ありそうなんですけどねぇ……)。

またPSRRは特定の周波数でのみ測定されていることが多く、一般に周波数が高くなればなるほど影響を受けやすい傾向があります*3。これも(あれば)対周波数のグラフを見た方が確実です。

裸ゲイン, 出力抵抗

裸ゲインが大きい方がオペアンプとしての性能は良いことになりますが、これまた測り方で何十倍も異なる上、周波数と共に減少するので目安程度にしかなりません。

出力抵抗はオペアンプ自体の持つ出力抵抗です。発振のしやすさに関係してきます。書かれていないことが多いパラメーターです。*4

「GB積・裸ゲイン・出力抵抗」が小さい方が発振しにくくなります。逆に「GB積・裸ゲイン・出力抵抗」が大きなると発振しやすくなります。

スルーレート

信号の立ち上がりの良さを示します。そのせいか、スルーレートと音の立ち上がり(スピード感?)を関連づける論調がよく見られますが、無関係と言ってよいと思います。

例えば、簡単な位相補償(LPF)をつければスルーレートは激減しますが、これで音が大きく変わることは*5ほとんどありません。一時期、この立ち上がりに拘って音質を聞き比べてみたことがあります。しかし本当に何も関係ありませんでした。

*2 : ほかにCMRRというものがありますが、CMRRとPSRRはほぼ比例する傾向があるので記載は省略しました。

*3 : 120dBのPSRRがあっても1kHzではたった60dBなんてことなあります。

*4 : 書かれていなくても、負荷抵抗値によるフルスイング値があれば計算することはできます。

*5 : 抵抗やコンデンサによる音質劣化を除く

発振注意

リストに示した高性能オペアンプは発振しやすい傾向があります。単純な回路置き換えやChuMoy型で単純に使用すると容易に発振するので、載せ替えなどは安易に行わないようにしてください。発振すれすれで使用すると音質が悪化することは、確認済です。

特に、最近は電流帰還型と呼ばれる通常の電圧帰還型とは使い方の異なるオペアンプが存在します。かなり勝手が違いますので、扱いには注意してください(載せ替えは無理と思ったほうか良いです)。

参考リンク

2008/06/28(土)自作バックロードホーンスピーカーのユニット交換

まったく記事に書いてませんでしたが、FE83Eを使ったバックロードホーン(略称BH)式の自作スピーカーがあります。こちらのバックロードホーンを少し改造して製作したものです。板厚15mmのMDFをボンドでくっつけて作りました。

ヘッドホンアンプをあれこれ作る前は、気にならなかったのですが、低域(の高い方。200-300Hzから)の量感が足りないことがどうにも気になって眠ってました。でもヘッドホンだと、どうしても空間表現に限界があるんですよね……。

そんなわけで、FE126Eに取り替えてみました。所詮バスレフ向きのFE83Eと違いバックロードホーン向きのオーバーダンピングユニット(Q=0.25)。FE126Eは店頭のバスレフで試聴しても、ちっとも音の厚みがありません(低音がでない)。

fe126e.jpg
fe126e_bh.jpg
bh_draft01.jpg
bh_draft02.jpg

FE83Eと比べると大きさの差は歴然です*1。FE83用のエンクロージャーにこんなもの入るのかとも思いましたが、ギリギリ入ってくれました。*2

適当に10~20Hzぐらいの信号突っ込んで大音量でダンパーを慣らしたあと*3、音楽を再生してみました。

「おおっ、いいじゃん!」

変な帯域の抜けがなくなり、心配した高域の不足もなく*4、バスレフと違って低音のでかたに変なもやがなく非常に自然*5。はじめからこうしておけばよかった。やっぱり、BHはBH用ユニットじゃないと鳴らしきれないんですね(逆もまたしかり)。

*1 : 一番右は組み立て時の写真から内部構造。一番細い部分は1cm以下です。

*2 : 高さ45cm、幅15cm、奥行き25cm。これより大きいものは邪魔なのでこんなサイズ。

*3 : 低周波すぎるのでもちろん聞こえない。短時間でエージングできるすばらしい方法です。スピーカーはダンパーがある程度ゆるまないと低音がまるで出ません。

*4 : ユニットの口径が大きくなると、高域が出ても指向性が高くなり、試聴位置を選ぶようになってしまう

*5 : バスレフでもしっかり作られたものはこのモヤが少ないのですが、メーカー製含めてそういうものは少ない(or 高い)。

調整

吸音材配置をメモしておきます。ユニット交換済(FE126E)の状態。

  • スピーカールーム(全面)にはグラスウール。
  • ボックス下のスロープ部分下部から背面の板にかけてフェライト布を敷く。
  • 幅55cmの一番下段部分に全面スポンジを入れる。

1番上は基本ですが、下2つは低音の妙な箱鳴りを防ぐためのものです。かなり違います。

2010年現在、このスピーカーはTPA1517アンプにつながれ、非常によい仕事をしています。

追伸

家に「Sansui D607F Extra」というアンプが余ってるんですが、どなたか要りませんか? 年代物ですが、その辺のコンポよりよっぽどまともなアンプです。

2008/06/19(木)ヘッドホンアンプ聴き比べ

今回は自分ではなく、他の人に聞き比べてもらいました

  • DENON DF-101
  • ATH-AD1000

自作3種

LM4880アンプ旧型新型(改良型)

となりました。LM4880は相当優秀(以前キットとして配っていたアンプより確実に上)でしたが、他と比べると音が濁るという結論でした。たぶん抵抗が2つ直列に入る分だけ不利なのでしょう。

旧型と新型の差は非常に悩んでいました。回路は違いますけど原理は一緒ですからね。途中まで「差がない」という結論でしたが、ある曲でわずかに音の止まり(キレ)が新型の方が良いという結論になりました。*1

電気的性能(出力インピーダンス)を考えると、明らかに逆順になるのに不思議なものです。さてこれで次期ヘッドホンアンプの回路は決定です。バイポーラアンプ(旧型)が上にならなくて本当によかった。*2

*1 : 後日自分で確認しましたが、旧型は100Hzぐらいの音のしまりがややないようです。出力インピーダンスからいえば止まっていいはずなのに不思議な結果となりました(おかげで長時間聴いてると耳に妙な圧迫感が(汗))。

*2 : なぜなら、こちらのアンプは出力電圧や電流の制限が厳しく、接続可能なヘッドホンがより限られてしまう。また、使用可能な電源電圧範囲の制限も厳しい。

オペアンプヘッドホン

ついでに006P×2仕様のバッファアンプも聴いてもらいました。LM6171では「音が濁る」とのことで相手になりませんでした。

さてここで人気のOPA627。結論は「どっちも良い」ということで甲乙は付きませんでした。OPA627は多少色が付く(しかしそれが心地よい)という感じみたいです。

蛇足、残念なお知らせ

製作中のPCM2702-DACも聴いてもらったのですが、プレイヤーとしての性能がダメダメという結論になってしまいました。DENONのCDプレイヤー(DF-101)と聞き比べさせてもらったんですが、たしかにお話になりませんでした >PCM2702-DAC

どうりで普段の聞き比べが難しいわけです。PC向けDACの元々の性能のひどさがよく分かりました。それともう1つの問題はニッコームの抵抗……かもしれない(未確認)。仮にそうだとすると、参ってしまいます。せっかく安価で適当な抵抗に巡り会えたと思った矢先に(苦笑)。抵抗ではなく、電源の問題でした。いまは修正済。バスパワーは面倒くさいですね。

それと基準となるプレイヤーが全く存在しないので、CDプレイヤーでも買った方がいいのかなと思い始めています。市販CDプレイヤー並のPC用サウンドカードでもいいのでしょうが、また地雷踏みそうで…。*3

*3 : もっとも、よくこの再生環境で今まで聞き比べてたなと自分で自分に感心しそうです(笑)

PC用DAC(改造済)の聴き比べ

はてブ数 2008/06/18電子::DAC/ADC

音楽再生はもっぱらサウンドカード等で行っていますが、改造しすぎてレベルアップしすぎでよく分からなくなってきたので整理してみます。

比較対象

どれも現時点で考えられる高音質化(コンデンサ、オペアンプ、抵抗の交換)を行っています。

Prodigy192VE

オペアンプ交換し(AD8066)、コンデンサを交換し、カップリングコンデンサを1つ残して削除し、抵抗を交換しました(原則ニッコーム)。最初からは考えられない高音質なサウンドカードとなっています。はっきり言って、その辺の市販品には負けることはないでしょう。

DACチップはSigmatelのSTAC9460という6ch DACです。

SE-U55SX

詳しくはSE-U55SX関連記事をみて頂くとして、部品抜き欠陥の修正、コンデンサ交換、オペアンプ交換(LM6171/LM6172)、抵抗交換(ニッコーム)を行いました。またDC直結DACに改造してあります。

なぜかUSBバスパワー駆動になってますが、これだけの音質が出るUSBバスパワー機器はないんじゃないでしょうか。

DACチップはBB(TI)のPCM1796です。

PCM2702DAC

TIのUSB-DACチップ、PCM2702を使ったUSBバスパワーDACです。まだ一部変更検討中ですが、こちらもDC直結DACです。

比較結果

今回はめずらしくOPA627使用のヘッドホンアンプで行いました。

Prodigy192VE(改v3) < SE-U55SX(改v3) ≦(?) PCM2702DAC

192VEは他と比べるとわずかに音の透明度で劣ります。SE-U55SXとPCM2702は再生音量の差が大きくボリュームの要因を排除仕切れないのですが(後者に有利)、PCM2702の方が一枚ベールが脱がれたようにも感じます*1。おそらく使用しているオペアンプの差*2で、素体の音質ではPCM1796の方が上だと思います。全帯域のバランスはSE-U55SXが上かも。

*1 : 訂正する予定

*2 : SE-U55SXにはLM6172、PCM2702にはLT1028を投入

過去の試聴との位置づけ

過去の試聴1とついでにPCM2901DACも含めると。

Prodigy192VE <<< SE-U55SX < 192VE改
   << PCM2901DAC < SE-U55SX改 < 192VE改v2
   << 192VE改v3 < SE-U55S改v3, PCM2702DAC 

こんな感じです。1行目のときは歪み感がありました。2行目は見違えますね。3行目は頂上決戦?

PCM2702DAC

ほぼ開発が完了したのであらためき聞き比べてみました。

192VE改v3 < SE-U55S改v3 << PCM2702DAC

PCM2702DAC、敵なしです(笑)

おまけ:VLSCについて

SE-U55SXはVLSC通過前と通過後の音を両方聴くことができるよう改造してあり比べてみましたが、明らかにVLSC前の方が良いです。音の広がり、純度共にVLSC通過後は劣りますね。高調波ノイズはVLSC後の方がたしかに減っているのですが、あまり恩恵には与れません。たしかに音の雑味が消えているのですが、デメリットの方が大きい感じです。

LPFに対して、VLSCが大きなアドバンテージを持つかと問われると難しいものがあります。商業上は(効果はともかく)「オーディオ界特有のセールス文句」として成功していますけどね。

部品を置き換えてもこの状況ですから、通常製品に使われるようなVLSC回路では、その回路による歪みの増加(回路の複雑化による音質劣化の増加)の方が恩恵よりも多そうです。本当にしっかりとした部品と回路構成で、初めて意味を持つのかもしれません。

SE-U55SXの最終改造

はてブ数 2008/06/18電子::SE-U55SX

過去さまざまな改造(修正?)をしてきて、「元SE-U55SXだった別物の何か」とかひどい言われようのSE-U55SXですが、ついに徹底的に改造してみました。SE-U55SX(改v3)。*1

*1 : 改v2はオペアンプの置き換えですが、ほとんどその状態はなかったため欠番です

回路図

解説のため、回路図の記事から再掲載しておきます。回路図はRチャンネルのものです(写真で上側に相当)。当然Lチャンネルも改造してますが、説明では省略します。

SE-U55SX_DAC_IV.gif
SE-U55SX_DAC_VLSC.gif

オペアンプ変更 2009/07/22

Q404, Q406をLM6172に、Q410(ラインバッファ)をLM6171に変更しました。Q408は交換しませんでした。Q408周辺の回路は、最終的にQ406にてフィードバック制御されるため(帰還ループ内であるため)、音質への影響は少ないと判断しました。

Q404, Q406, Q410をLME49720に変更しました。Q408は交換しませんでした。Q408周辺の回路は、最終的にQ406にてフィードバック制御されるため(帰還ループ内であるため)、音質への影響は少ないと判断しました。

入手が可能ならLME49720よりLT1364が音質が優れおすすめです。

抵抗交換

抵抗には、直列に入る抵抗が大きく音を左右し、並列に入る抵抗は音質にほとんど(全く?)関与しない不思議な性質があります。この点を考慮し音質に関わる抵抗のみニッコームRP-44Cに変更しました。*2

変更した抵抗について解説します。

抵抗コメント
R426,R428IV変換。この抵抗は(他のどこよりも)音質に影響する
R430,R432直列に入る抵抗。
R434帰還電流(信号)の流れる抵抗
R438VLSC回路への入力抵抗。モニター出力とのmix用抵抗。
R440,R442VLSCの最終出力を決める帰還抵抗。
R454出力の保護用、発振防止用の抵抗。
R458, R460保護抵抗。削除(ジャンパ)

*2 : 鈴商に適当な抵抗値がなかったので、470Ωと680Ωはすべて560Ωに変更しました。出力抵抗も適当に売ってた180Ωです。写真に一部別の抵抗が載っていますが、撮影後ニッコームに変更しました。比較的入手しやすいRP-24Cを買う人は本来の値を使うと良いでしょう。

その他

これは音質には関係ありませんが、VLSCの手前(回路図でR438右側)からも信号が取り出せるようにマイク端子を改造しました。これでVLSCありとVLSCなしの両方の音を聞くことができます。

まとめ

一番強烈に音が変わったのは、IV変換の抵抗とIV変換のオペアンプを変えたときでした。ここ1箇所の変更で、他全部の変更に勝るぐらいの変わりっぷりです。

抵抗の置き換えは音の混ざりをなくすこと、オペアンプの置き換えは音の解像度(明瞭度)を上げることに貢献したように感じます。改v2も相当なものでしたが、ここまで来ると全く別物ですね。設計者もこれでやっと浮かばれるでしょうか。

さてこれにて改造は終わり。長らくSE-U55SX地雷の記事にお付き合い頂き、ありがとうございました。もうONKYO製品は買いません(ぉ

※改造後の音質についてはDAC聴き比べ記事を参照してください。