2025/11/15(土)ハンディオシロ兼マルチメーターET828Proを買ってみたら……
ハンドヘルドオシロスコープがあると、ちょっとした信号確認にオシロスコープを出さずに済んで便利という話を読んでからずっと欲しかったマルチメーター兼オシロスコープ。色々検討してひとつ買ってみました。そして速攻改造しました(笑)
購入の経緯と問題
購入したのはET828Pro(なおアリエクで買うほうが安い)。
- 切替がダイヤル式
- 10MHz/50Msps
- 単3電池×3本
ダイヤル式は使いやすさに直結します。オシロは10MHzまでという話ですが、そこはあまり期待しておらず「50Mspsなら1MHzぐらいまではちゃんと見えるでしょ?」ぐらいの感覚です。
この中で一番気にしたのはバッテリー内蔵じゃないこと。リチウムイオン電池製品は国内メーカー以外はあんまり買いたくないんですよね……。*1
画像はオシロを使っているところです。わくわくしながら信号測定をしてみたら、最小電圧レンジが0.5V/divでした。なんと……。こんなの使い物にならない;;
(アリエクの)商品説明のページにはちゃんと書いてありますので見落としですが、とはいえそんなしょぼい仕様のオシロが存在するとは思ってないので狐につままれた気分になり、その無念さをツイートしたらプチバズ。嬉しくはない(苦笑)
改造すれば良いのでは?
こんなのオペアンプで雑に増幅してADCに突っ込んでるだけなので、増幅率上げてしまえば解決しそうです。ゲイン10倍にして「最小レンジ50mV」もあれば実用に耐えそう。*2
というわけで早速分解。基板型番は「ET201C」の模様。


あれ? 公称50Mspsなのに35MspsのADC(MS9280)使ってるんですが……。オーバークロックで使用してない限りスペック詐称ですね。
気になったのでクロックピン(15pin)をオシロで観測してみましたが、案の定オーバークロックで駆動してました。0.5us, 0.2usレンジ限定でなんと60MHz(他は25MHz)。*3
回路図

U3/U4のオペアンプ2段でそれぞれ3倍に増幅し(写真の青丸抵抗)、ADCに入力しています。レンジ切替はアナログセレクタ(U5/U6)を使いU3出力を減衰させて実現(2:1:0.5)。10倍単位のレンジ切替は、オペアンプ手前のアッテネーターによって実現しています。
しかし入力部のコンデンサは何のためについてるんでしょう? LTspiceでシミュレーションしてみると、10KHz以上を+1dBしているようですが。

入力部コンデンサの役割(追記)
コメント欄にて解決しました。R31, R32の寄生容量による周波数特性の変化を防ぐためのようです。C28以降がない状態で、R31, R32にそれぞれ0.5pFの寄生容量を仮定すると、周波数特性が次のようになります。

ゲインを増やす改造をする場合
現状「9倍(8.77倍)」のゲインを90倍*4に変更すればよいのですが、ひとつのオペアンプだけ変更するとオペアンプの(オシロとしての)帯域幅が結構下がってしまいます。ですので、それぞれのオペアンプを9.5倍に変更して「9.5*9.5=90.25倍」ぐらいにするのが良さそうです。
- 利点
- 入力部を細工しないので、入力部に起因する帯域や周波数特性、耐圧の問題を避けられる。
- 欠点
- 帯域幅が低下してしまう。
- ゲインの値を正確に調整するのが大変。
- オペアンプの入力オフセットや入力雑音なども(増やしたゲインに比例して)大きくなる。
入力アッテネーターの減衰率を改造する場合
入力アッテネーターを改造して減衰率を1/10に減らしてあげれば、ゲインを10倍にするのと同じ結果が得られます。
改造方法として「R31+R32=10M」を固定したケースを考えると、0.5V-2Vレンジのときの(オペアンプの)入力インピーダンスが5MΩ程度になってしまうため、ノイズやバイアス電流などで無理が出そうです。
「R31+R32=800KΩ」にすると比較的楽に実現できますが、元々5MΩテスタリードの入力インピーダンスが900KΩぐらいになるのが難点です。
- 利点
- オペアンプまわりを変更しないので、オペアンプのゲイン増加によるオフセットやノイズ増大を避けられる。
- 欠点
- 入力インピーダンスが大幅に減る。
- 使用する部品によっては、入力耐圧が大幅に減少する(改造前1000V耐圧)。
- 結合コンデンサを置換しないと、AC結合時の入力カットオフ周波数が30Hz程度まで上昇する。
実際の改造
どちらも一長一短ですが、今回は入力アッテネータを改造することにしました。
| R31+R32 | R36端 | R40端 | R47端 |
|---|---|---|---|
| 10M | 2.174% | 0.217% | 0.022% |
| 800K | 21.737% | 2.172% | 0.215% |
| 762K | 22.577% | 2.256% | 0.224% |
計算上は「800KΩ」が一番良いのですが、手持ちの抵抗の関係と元々少しゲインが足りずなかったので「762KΩ」(10Mと1MΩと4.7MΩの並列)としました。

こうしておくと、取り外せば元に戻るので良いかなという感じもあります。
測定画像を見ると一見問題なさそうです。しかし実際には問題があって、入力部コンデンサが邪魔をして帯域が激減してしまいます。20KHzで10dB以上減衰するので使い物になりません。なので周波数特性を平坦にするためC18, C22, C28-C33をすべて取り外す必要があります。

外した後で測定した画像。
先ほどと同じ1.2Vpp波形が減衰していないことが分かります。
注意
- 画像では手持ちの関係で5%精度の1608抵抗を使用していて、耐圧は50Vです(後で交換予定)。
- R31, R32の耐圧問題をクリアしたとしても、R36の耐圧が不明であり、仮に50V耐圧とした場合、入力耐圧は250V以下となります。
- フォトトランジスタO1(EL3H7)のエミッタ-コレクタ間耐圧が7Vしかないため、ここを交換か細工しない限り、-7V/2%=-350V以下の入力耐圧となります。
- 寄生容量による高周波の減衰率低下の問題があるので、元のR31, R32は素直に外したほうが良いです。
オフセット電圧のずれ
GNDを入力したときに0V位置が微妙にずれています。これは、オペアンプAD8091の入力オフセットなどが原因です。「Typ: 1.8mV, 最大: 11mV」と仕様書にあり、全部で9倍ゲインをかけているので、ADC入力時点で「20mV」ぐらいずれることになります。
これについてはオペアンプを高精度オペアンプに交換するしかありませんが、これぐらいなら無視しても良いかもしれません。(次項を参照)
最終改造



使用部品。
| 部品番号 | 型番 | 値 | 耐圧 | 概要 |
|---|---|---|---|---|
| C16,C17 | C1210C104KBRACTU | 0.1u | 500V | - |
| R31 | RCV12064M99FKEA | 4.99M | 500V | 厚膜抵抗 |
| R32 | RCV12064M70FKEA | 4.7M | 500V | 厚膜抵抗 |
| R31x | VT1206BRD07430KL | 430K | 613V | 薄膜抵抗 |
| R32x | VT1206BRD07330KL | 330K | 613V | 薄膜抵抗 |
| R36 | VT1206BRD07200KL | 200K | 613V | 薄膜抵抗 |
| O1 | VO1400AEFTR | - | 60V | フォトリレー |
- 元々のレンジを1倍として残し、0.1倍レンジとの切替式としました。電池の裏蓋を外せば簡単に切替可能になってます。
- ACレンジの帯域確保のため、入力コンデンサを10倍に増やしました。
- x1倍は元々ゲインが少しズレてた(少し足りなかった)ため、値を10MΩから少し減らしました。
- 耐圧確保のため、R36を高耐圧のものへ変更しました。
- 耐圧確保のため、O1のフォトトランジスタを、フォトモス(VO1400AEFTR)に変更しました。
これでレンジを間違えない限りは、1000V入力を加えても問題なさそうです。また入力切替式としたことで、(改造後も)AC 100Vの波形を見られるようになりました。
コンデンサ類を外してあるので「x1レンジ」は高周波を見るには適しませんが、これは気にしないことにします。
オフセット電圧を微調整できない
オペアンプをOPA863Aに変更してみたのですが、オフセット問題が増大したので元に戻しました。ADC部の入力をVcomに固定して調べてみたところ、レンジ(0.5, 1, 2)によってオフセットが変わる謎現象が発生しました。またR35の抵抗値の影響も受けるようです。
ソフトウェア補正か何かをかけているのか、ADCの動作モードが変化しているのか(そんなことある?)、原因はよくわからずじまいでしたが、下手にいじらないほうが良さそうです。
まとめ
使い込んではいませんが、マルチメーターの反応も早く、精度も使ってみた範囲では問題ないです。
オシロの垂直レンジ(最小0.5V/div)だけがほんと残念でしたが、改造で10倍になればまあ許せる範囲かなと思います。なお無改造でもオシロの電圧精度は良くありません(数%ズレる)。
中華リチウムイオン電池に抵抗がなければAmazonとかでも色々売ってるので、ちゃんとスペックや評判を確認して買ってみるのも良いかもしれません。




