2021/08/24(火)OPA1622のGNDの扱いと音質比較

Ti製のSoundPlus高性能オーディオ・オペアンプ「OPA1622」のGNDをどこに接続するか問題について。

OPA1622とは

高性能オーディオ用ICであり、音質も大変優れていることから人気のオペアンプです。SoundPlusシリーズの中でも最高の「Ultimate」を冠しています。

このICは「100mA以上の電流」を取り出せ、ヘッドホンなどを直接駆動することも可能です。もっぱら「いわゆる載せ替えオペアンプ」として人気のようですが、このICは10pin DFNとして提供されており、通常の方法ではオペアンプとして載せ替え使用することはできません。

またこのオペアンプには±電源ピンの他に、GNDピンがありこのピンの処理方法について多少の議論があるようです。

OPA1622のGND処理と音質比較

GND端子の接続方法は3つ考えられます。

  1. V-(マイナス電源)につなぐ(秋月変換基板ほか)
  2. 変換基板上で仮想GNDにつなぐ(Bispa変換基板)
  3. 8pinオペアンプ互換を諦めGNDに直接接続する(Bispa変換基板では可能)

仮想GNDの回路はこんな感じです。*1

OPA1622_VG.png

比較結果

(3)GND接続 > (1)Vee接続 > (2)仮想GND回路付

ある種、当たり前の結果になりました。

*1 : Bispaの基板では10KΩではなく22KΩが使われているようです。

GNDはどこに接続するべきか?

データシートには次のような記述があります。

OPA1622-GND.png

【赤下線】GNDピンはノイズが最小でインピーダンスが最も低い基準に接続しろ

ノイズが少なくインピーダンスが低い基準点というのは、通常はGNDになりますが*2、GNDに接続できない状況でしたら次点でマイナス電源に接続するのは決して悪いことではありません。*3

上に示した仮想GND回路は、電源ピン(V-)に直接接続するよりインピーダンスが高いので、音が悪くなるのは当たり前です。

*2 : 回路全体が仮想GNDで動作している場合は除く。

*3 : 似たようなものだからとプラス電源に接続すると動作しなくなるのでご注意。

一番良い方法は何?

「なんだ仮想GND基板ク○じゃん」という結論は、実はちょっと焦りすぎです。

OPA1622.jpg

左が仮想GND付き変換基板(R/C裏面実装)で、右がGND-Vee接続変換基板です。GND-Vee接続基板は、上ではCを載せずに評価しました。ここには0.1uFのECPUを電源パスコンとして接続することができます。

仮想GND付基板は、GNDを接続するためのPAD(旧Bispa変換基板ならばホール)があります。仮想GND付き基板はGNDを正しく接続すると基板中のC1/C2が電源パスコンとして作用します

その結果こうなります。

C付き仮想GND基板のGNDを接続 > C付きGND-Vee接続基板 > GND接続 > その他

まとめ

  • 仮想GND付き変換基板をそのまま使うのは愚行。
  • GND-Vee接続のオペアンプ変換基板は、電源パスコン付きのほうが音が良い。
  • 仮想GND付き変換基板は、Cを付けた状態でGND端子を回路中のGNDに接続する。
    • Rはあってもなくてもどちらでも良い。

おまけ

実験に使った基板はBispaで販売されているものです。

2021/07/26(月)D級ヘッドホンアンプと出力フィルタと負帰還

Twitterにも書きましたが、D級ヘッドホンアンプ Ver2 / pwm-hpa2をいじっていました。

出力フィルタの意味と役割

pwm-hpa2_1ch.png

D級である限り、出力フィルタは避けて通れないものです。この出力フィルタ(L5/C5)は、高周波のスイッチノイズを除去するために入れていますが、再生音を良くするためというよりは、余計なノイズ(電波)を巻き散らかさないためという意味合いが大きくあります。

第2世代と呼ばれるD級アンプは、原理的に「LCフィルタを入れなくても十分に放射ノイズ(EMI)が少ない」ことが利点として挙げられています。TPA3110D2なんかもそれです。

ノイズの問題を一旦おいておけば、L5があったほうが良いか、無いほうがよいかは難しい問題ですが、うまく動作させられるならばL5は無いほうが良さそうです。実際、TPA3110D2アンプの音が良いのは、そういう点も影響しています。

出力フィルタの影響をなくしたい!

フィルタを無くすというわけにはいかないものの、フィルタの後ろからフィードバック(負帰還)をかけて出力フィルタの影響を少なくするということは可能です。*1

D級アンプICですと、フィルタ前のフィードバックをやめることはできませんが(ミックスした負帰還になる)、自作回路ならL5の後ろからのみフィードバックすることは可能ですので、試してみました。

まず通常動作時です。(1)がL5の手前で、(2)がL5の後の波形になります。32MHzでスイッチしており、出力ではこのスイッチノイズが減っています。

pwm-hpa2_lpf1.png

次にL5の後ろからフィードバックをかけた波形です。

pwm-hpa2_lpf2.png

発振周波数が下がり、出力に±5Vのsin波が出ていますが(おそらく共振と思われる)、音質はこのほうが良い感じでした。

まとめ

AB級アンプで同じことをすると発振します。(自励式)D級アンプは元々発振させるものですので、どうせ発振させるのならフィルタの後ろから負帰還かけても良いんじゃない? という実験でした。

このまま使うのは躊躇しますが、もうひと工夫すれば pwm-hpa2 を更に進化させる可能性もありそうです。