ショトキーバリアダイオード(SBD)で音は変わるか?

はてブ数 2006/11/05電子::アンプ

ACアダプタ電源の改造

現在調整中の新たに作ったディスクリート電流帰還(電流駆動)アンプ。電源に10.5V 600mAなんていうしょぼいACアダプタを使ってます*1。他になかったんでたまたまこれを使ってるんですが、ふとみるとアダプタが普通のネジ止めタイプでして分解できる。内部の整流ブリッジをSBD(ショットキーバリアダイオード*2)に変更して、ついでに電解コンも手元に余ってたMUSE FG 1000uFに変更してみました。

このアンプの電源部分は、ACアダプタ電源を10Ω+1000uFのOSコンで平滑して、12V3端子レギュレーター経由でMUSE KZ 1000uFという構成。徹底的に平滑してレギュレーターかましてますから、そんなんダイオード変更したぐらいで大して音なんて変わらないよな……と思ってました。

結論から言うと「何これ!? 無茶苦茶音が綺麗じゃん!」。音のクリアさというかなめらかさというか到底同じアンプとは思えません。音のSNが異様なほど向上したという感じです。コンデンサ交換は経験上あまりSNとは関係ないので、SBDの恩恵のようです。正直ここまで音が変わるとは思ってませんでした。

他の要因もあるかもしれないと、試しにTA2020の電源として使ってみたのですが、これまた音が変化。ただでさえ綺麗(クリア)なTA2020の音がより一層クリアになりました。これはすごい効果です。電源の重要性、分かっていたくせに正直侮ってました。すごすぎます。

注意

通常の整流ダイオード(電圧降下0.7V前後)をSBD(電圧降下0.3V前後)に変更することで、電圧降下が少なくなり約1Vほど電源電圧が上昇します。

参考

*1 : 使用時出力電圧14V前後

*2 : 通常のダイオードに比べ整流時にノイズが少ないと言われている

2006/10/12(木)PCスピーカー(電流出力アンプ)の調整

この前の続き。中音がうるさいきで、中にフェルト吸音材を入れてみました。音がかなりクリアになりました。つまり中音の厚みが減ったので若干ドンシャリ気味。これ以上電圧帰還率を上げられないので、後日、さらに小さい電流帰還抵抗(0.2Ω or 0.22Ω)を買ってきて調整します。

ついでにF特を取ってみました。

ftsu_pc_speaker_curamp_fft.gif

箱が箱だから仕方ないですけど、下が思ったほど出てないですね。聴覚上は上も下もあまり不足なくて出てるんですけど(100Hzから下のベースの音などは別として)、こんなもんでしょう。周波数特性的にはあまり褒められませんけど、音はいいですよ音は。

調整後 2006/10/23

0.20Ωに変更してみました。中域に厚みが出てきまして、かなり良くなりました。しかしこれはもうすごすぎます。なにがすごいかって(作って)音を聴いてくれとしか言いようがないのですが、音の立ち上がりというものがここまで聴覚上の差として現れるとは思いませんでした。音を再生しておいて、あまりに自然な鳴り方にびっくりするんですよ。「えっこれ、本当にスピーカーから鳴ってるの?」って。自然に音が広がってユニットの存在を忘れさせるんです。

部屋にはSunsui D907 Limitedもありますし、(それと比べると)スピーカーボックスの大きさからして100Hz以下の低音だけはどうにも出ませんが*1、ドラムやピアノのアタック音の自然さや高域のなんとも言えない伸びは帯域500kHzを持つサンスイアンプをもってしてもあと一歩敵いません。コンデンサエージングも進んだのか非常にクリアな音で、電源は1アンペアも取れないようなACアダプタなのにも関わらず駆動力に全く不足を感じません。

コンデンサこそ音響用ですが、抵抗やボリュームは音響用でない安物でこの状態ですからね。ディスクリート電流出力アンプ、ますます楽しみです。

*1 : アンプのせいででないのではなく、F通の箱をそのまま使っているから出ないだけ

TA2020と低音の量感

はてブ数 2006/09/15電子::アンプ

AC電源(トランス式) vs スイッチング電源

世の中を検索するとTA-2020をスイッチング電源で使用している人があまりに多いので*1、まともな(電源平滑用)コンデンサさえ乗せればまともな音が出るのか、追加検証してみました。入力カップリングコンデンサはフィルムコンの2.2uF、入力段帰還抵抗20kΩ+20kΩ(1倍)です。

  • PC用スイッチング電源12V(12A) → MUSE FX 4700uF×2
  • 13.5V 1A ACアダプタ(トランス式) → 3端子レギュレータ(LM2940/12V) → MUSE FX 4700uF×2

平滑コンデンサなし(TA-2020直前についているOSコン100uF×2のみ)と比べると、以前の試聴と比べて音の綺麗さは増した感じで健闘しています。低音の力強さは「さすが」と言うべきでしょう。*2

続いてACアダプタ。さすがに低音が軽くなってしまいますが、音の綺麗さとゆったり感や表情など質的な面ではスイッチング電源はACアダプタ電源(トランス式)に及びません。やっぱりトランス電源には勝てないですねぇ……*3

というわけで、アンプで音質で求めるならAC電源(トランス電源)にしましょう*4。なお整流用にショトキーバリアダイオード(SBD)で音は変わるか?を使用するとなお良いです。

トランス電源では電流量がスイッチング電気ほど大きくとれないため低音が不足しがちですが、低音の不足は下記を参考にしてみてください。

*1 : TA-2020SPキット付属の説明書にも、「スイッチング電源を使用することもできますが、なるべく綺麗な電源を……」と書いてあるんですけどね……

*2 : 低音の力強さは、ある程度まで電源の容量=電流容量に比例するようです。

*3 : スイッチング電源で駆動すると「コンポ程度」という感じですが、トランスだと「オーディオ」って感じです。

*4 : ACアダプタでも中身がスイッチングというものが最近は多く出回っています。見分け方ですが、見た目より重く感じ重さの割に電流量が少ないものがトランス式で、見た目より軽く感じ見た目以上に電流量があるものはスイッチング電源です。

入力コンデンサ対決

この項目には入力コンデンサを変更して音の違いを楽しむという実験結果が書かれていますが、入力カップリングコンの容量を増やすことは大変危険なのでおやめください。ここにかかれていることは、あくまで実験です

すべて100uFです。電源はACアダプタ(トランス式)。

コンデンサ音質
ELNA TONEREX全体的に音が軽く、あえて悪く言えばスカスカした感じ。
Nichicon VX非オーディオ用コンデンサ。歪んだ音がしました……。
一般用コンデンサ付けない状態*5よりはマシですが「ただ鳴ってる」という感じです。
Nichicon MUSE FG低音の量感と中低音の厚み(量感)*6と高音の伸びが良い感じです。
OSコンハンダ付けせずに使用。キレ(締まり)のある低音があり、音全体が非常にクリア。かなり良い!

で、元々音がクリアに鳴るこのアンプを一番活かすのはOSコンという結論に(笑) 本来OSコンをカップリングコンデンサに使ってはいけません(とメーカーも言っています)。ここに書かれているのはあくまで実験です。

MUSE FGの量感も好きですが、これが味付けなんだなーと思い知った感じですね。MUSE FGよりMUSE KZがいいのかもしれませんが持っないので試せてません。あとどの程度までコンデンサ容量を下げても不足ない低音が出せるかも不明です。

*5 : オーディオ用フィルムコン2.2uFのみ

*6 : 同じボリュームなのに、音量が上がったように感じました

低音が出ない原因 2006/10/12

本来D級アンプならば出力段は単なるスイッチをしているだけですので、スイッチング電源を持ってきても音質は変わらないはずです。同じ理由で低音だけ弱いなんてこともあり得ません。入力カップリングコンにしても元々の2.2uFで十分なはずです。

TA2020のデータシートによると内部にオペアンプを持っています。

ta2020-block.png

このオペアンプの電源は、これまた内部の5Vレギュレーター(30pinから出力)から与えられていて、カマデンのキット等ではこの5Vがそのままアナログオペアンプ電源(7,8pin)となっています。しかもこの5V電源はデジタル部電源(2,3pin)と共通になっています。

よって

  • 低音が足りない理由は出力段スイッチによる電源のゆらぎがそのまま5V部に回り込んでいる。
  • 音の明瞭さが足りない原因は、デジタル部電源からアナログ部電源へのノイズ回り込み。

と考えられます。

低音の改善法

原因が分かれば対策を取ることは簡単です。

ta2020 A5V.png

方法1

カマデンのキットではV5A(8pin), AGND2(7pin)の間に1uFの電解コンデンサが付いているのですが、これを100uF程度の低ESRコン(音響用やOSコン等)に変更することで低音のゆらぎに強くなります。

方法2

さらにパターンカットを行い簡単なCRフィルタを組むとよりよいでしょう。RやCの値をあまり大きくすると電源投入時にDC漏れしますので、大きくてもこの程度に。

方法3

より本格的に改善させるなら、7805等の3端子レギュレータを使用して、V5A(8pin)/AGND2(7pin)の電源を独立に生成します。この場合V5Aへの接続パターンをカットしてあげる必要があります。12V入力側に直列に抵抗(1~100Ω程度)を入れて、RCフィルタしてあげるとより良いでしょう。もっと本格的にするなら、Lに100uH、Rに220Ωぐらい、Cに470uF/16V~を持ってくると良いと思います。これぐらいすればスイッチング電源でも結構綺麗に鳴らすことができると思いますが、(RLCフィルタの)実機テストはしてませんのであしからず。

デジタル電源は相変わらずTA2020内部レギュレータを使用します。これはデジタルノイズの回り込みを防ぐためです。

注意

電源部の容量を増やすと電源投入時の瞬間的なポップ音が大きくなり、場合によってスピーカー等を破壊する危険があります。気になる人は遅延ミュートやスピーカー出力スイッチなどを取り付けてください。

……100uFより上は絶対に試しませんように。

2006/09/10(日)アンプ試聴ブラインドテスト大会

アンプのブラインドテスト大会

参加エントリーは次の4種類。

  1. TA-2020SPキットによるD級アンプ
  2. Sansui α-707
  3. Sansui D907Limited(修理&コンデンサ置き換え品
  4. 電流出力アンプ

スピーカーは自作のFE83Eバックロードホーン(フルレンジ)です。1と4の写真があるのですが、オーディオマニアーな方に言わせたらナメてるのか? って話ですよね(笑) ティッシュ箱がTA2020で、ワニ口クリップな方が電流出力アンプです。

TA2020SP.jpg
TA2020SP-2.jpg
current_amp.jpg

結果から言いますと、TA-2020SPはきれいなんですが、低音と中域の厚みで惨敗。2、3、4が残りましたが、4は中抜け(中域抜け)がいまいち解消されていないことを見抜かれ負けました*1。最終的な勝者は3のD907。修理費だけで2~3万以上かかってますから、これで電流出力アンプに負けたときには目も当てられないのですが、でも逆に言えばあと若干中抜けを解消すれば勝てる可能性のあった勝負でした。

というわけで不足部品を調達して最終的に修理完了したD907Limitedを今自宅で鳴らしてますが、SNの高さから中域、低域の量感、定位と、こいつはすごいアンプだとあらため実感してます。入手から今日まで約1年かかってますが、苦労してなおした甲斐がありました。

とはいえ電流出力アンプ。部品代約3000円なのに、低域の量感やキレ、中域の厚み、高域の伸び、どれを取ってもあの巨大アンプに負けてません。というわけで、今度はディスクリート電流出力アンプ作ります、確実に作ります。サイズだけが能じゃないということを、これでもかと思い知らせてくれますね。

*1 : 松任谷由実のボーカルの厚みというか高い部分だけあって低い部分がないので声が若干違ってきこえる

TA-2020SPは低音が出ない?

一人惨敗したTA-2020SPですが、その後作者のアニ丸さんと一緒に色々試行錯誤。入力カップリングコンデンサにフィルムコンの2.2uFがついてたのですが、そこへパラに(たまたま余っていた)100uF Muse FGをつけたら音が一変。低域がグっと出るようになりました。あとコンデンサの種類で音が変わるというのもわかりました。なるほどこれが味付けなんですね*2。電源には約4700uF×2のコンデンサ付いてますし、別にTA-2020に限った話ではないですが、電源最重要、続いてカップリングコンデンサという感じなんだとあらためて思い知りました。

時間もなかったので軽く試聴しましたが、これもまたSansuiアンプに全く負けてないですよ。なかなかにすごい。しかしこの状態でブラインドテストできなかったのは非常に残念でした。

さてこんなテストをしていたら、入力カップリングコンの充電電流で、またもFE83Eを焼いてしまいました(涙) はぁ……。ユニットの値段は諦めが付くのですが秋葉原まで買いに行くのが大変なのですよ*3

余談ですが、TA-2020をPCのスイッチング電源で駆動してみたところ、低音は出るようになりましたが音質はお世辞にも褒められるものじゃなくなりました。具体的に言えば、音の表情の豊かさや綺麗さ、ゆったり感が消えて、ちゃんと鳴っているのですが実につまらない音がします。オーディオ用電源としてスイッチング電源使用禁止というのは当たり前の話ですが、実際確認でたので面白かったです(笑)*4

*2 : たしかにMuse FGは高域が伸びて中低音に厚みがありました

*3 : 旅費よりユニットの方が安いわけですから……。あとユニットのエージングが面倒というのもありますが…

*4 : 知らない人は居ないと思いますが一応説明しておきますと、電源がいかに綺麗か(ノイズを含まないか)が重要なオーディオの世界においてスイッチング電源という原理上高周波ノイズをたくさん含む電源を使用することはナンセンスなのです。

NJM2073ヘッドホンアンプ

NJM2073なヘッドホンアンプで事件が起きました。単3電池2本で動く何の変哲もない極ありふれたヘッドホンアンプ。これもanimaru氏の作成物なんですが、自分が「アンプは電源が重要なんだよ」と念仏のように唱えながらゴミの中から膨れてないコンデンサを選別して低インピーダンスコンデンサ大量投入(しかも勝手に(笑))。その量10000uF越え。ついでに、出力コンデンサにも、PC用低インピーダンスコンデンサの1000uFを投入(笑)

みなさんよくご存じのとおりNJM2073というのは1個100円ぐらいのごくありふれた、電子工作入門者向けと言っても過言ではないぐらいチープなICです。お世辞にもオーディオとして良いなんて聞いたことはありませんし、自分も数年前に秋月のキットを作りましたがあまりに使い物にならなくて(音悪い)ゴミと化してます。少なくとも、ケーブルもただのリード線による空中配線ですし、何一つ凝ったことはしてないこの回路、全体で1000円ぐらいでしょうか?

試聴してみるとそこそこいい音がしました。改造前に比べると高域は伸び低域は程よく出てノイズも減りました(でもまだノイズは残っています)。なかなかよさげなので、とりあえず自分も1つ作ることに(笑)

2006/09/06(水)TA8217Pを用いた電流駆動アンプの製作

この記事は古くなってます。できれば次の記事も合わせて参照し情報を補完してください。

電流駆動アンプの基本

通常のアンプは入力波形に対し、できるだけ忠実な電圧を出力しようとします。電流出力アンプでは、入力波形に対してできるだけ忠実な電流を出力しようとします。ネットワークを持つスピーカーは電圧出力を基準に作られているため、実質フルレンジスピーカー専用の方式です。

スピーカーユニットは高域と低域でインピーダンスが上がり、その影響で低音と高音が出にくくなります。電流駆動では、スピーカーインピーダンス上昇に関係なく、波形に応じた電流を流すことができます。電圧出力を中心としてみれば、スピーカー特性に合わせてラウドネスがかかった感じになります*1。スピーカーユニットも電圧駆動に合わせて設計されているということを抑えておく必要があります。

利点

とにもかくにも入力に対して忠実に(ほとんど歪まずに)再生し、音の立ち上がり特性が特段によいことが最大の特徴です。ケーブルや出力系のループにある電気的影響をほとんど無視するとも言えます。特にアンプとして小型(小規模)であっても、その再生能力は電圧出力のそれと比べて大きな差が生まれます。

*1 : メカニカル2wayなどを採用しているスピーカーユニットでは若干高域が強めに出てしまいます。

F通製スピーカーの改造

この前の続きです。山本式電流帰還アンプの改良版みたいな感じです。(10/12回路図更新)

下図には記入し損ねましたが、BOOTSTRAPと呼ばれる端子も接続しました。

current_amp_ta8217p.gif

  • Czは負荷インピーダンス調整用(発振防止用)のフィルムコンデンサです。
  • 帰還量調整用抵抗「Rh」を可変抵抗にすると音質的には不利になりますが*2、原理上、ユニットをつないで動作させるまでほぼ調整不可能ですので可変抵抗にすることをお勧めします(ラウドネスコントールのような働きをします)。
  • 「Rh」の値は、IC内部に組み込まれているフィードバック用抵抗の値によって適切に変更してください(ICの仕様書をみれば書いてあります)。あまり帰還量を増やすと発振します(この手のICでは帰還量20数dB程度が限界です)。
  • Coを大きくするほど低音が出るようになります。低音をさほど望まないのならば、小さく(470uF程度に)しても構いません。
  • Cfの大きさは「Rh」の値によります。低周波でのインピーダンスを計算し、その値がRhより十分に小さくなる値を選びます。*3
  • 電流帰還抵抗「Re」は0.22Ωです。Rhによる帰還量調整と合わせ、電圧帰還と電流帰還の比を決定します。例えば「Rh」をいっぱいに回してもドンシャリ気味である場合は、この電流帰還抵抗を0.2Ωや0.1xΩなどに小さくしてください。
  • Reをバイパス(ショート)すると電圧出力になります
  • 実際には入力ボリュームを付けてあります。入力抵抗、カップリングコンデンサは省略しました。*4
  • パワーIC TA8217Pの仕様書はこちら

みれば分かりますが、電圧出力と電流出力のミックスな感じの回路です。初めRh=0Ωの状態で組み込んだところ、高域と低域ばかり強調されて中域が抜けた(まさに中抜けな)音がしました。定位や音の素直さは抜群でしたが、いかんせんこれでは聴くに耐えません。アンプICを見ると元々電圧帰還ループが中に組み込まれていたので、この部分の帰還量を変更する方式にしました。狙い通りRhを大きくし電圧帰還量を増やしてあげると(相対的に)電流の帰還量を減らすことができました。*5

帰還量を減らすためには電流帰還抵抗を小さくする方法もありますが、0.1Ωにしたところ「電流出力アンプ独特の良さ」が失われたように感じたので0.33Ωに、しかしそれではドンシャリ気味でしたのでさらに変更して0.22Ωにしてあります。試聴した感想などはこちらを参照

FE83Eによる自作バックロードホーンスピーカーを鳴らしてみましたが、ディスクリートアンプに負けず劣らず*6という鳴りっぷりでした。コンデンサーのエージングが済むまでうるさい鳴りをしますが、スピーカー自作派の人には(部品も安いですし)だまされたと思って一度作成してほしいと思います。

*2 : 可変抵抗自体による音質劣化はもとより、高インピーダンスですので引き回すことによりノイズを拾いやすくなります

*3 : 100uFならば50Hzのインピーダンスは約30Ω。Rh>500ぐらいならば問題は起きないでしょう。

*4 : カップリングコンは、出力コンデンサの付いていない再生装置(今時ほとんどない)を所有してないので省略しました

*5 : Rh=0では、スピーカー両端電圧で1kHzを1とすると、10kHz時に2、20kHz時に3の電圧が出ていましたが、Rh=1kΩにすると20kHz時に1.5程度になりました。ユニット単体の高域/低域減衰を考えると十分許容範囲内です

*6 : 下手なディスクリートアンプ=オーディオ用アンプより良い感じでした

電源部の回路図と作成時のポイント

lm2940c_power.gif

7812ライクな3端子レギュレータ、LM2940Cを使用しました。7809でも7815でもLM317でも、トランジスタによる直列安定化電源でもなんでも構いません。お約束ですが、3端子レギュレータ使用時は「Cx」に積層セラミック0.1uFなどを3端子レギュレータと物理的に最短で配置しましょう(発振防止です)。LM2940Cは逆電圧保護回路が入っているため省略しましたが、通常の3端子レギュレータの場合は出力側から入力側へ保護ダイオードを取り付けてください

  • アンプ部および電源で、Co、Cf、C1、C2は Muse FG を、C3にはOSコンを使用しました。電源はもう少しコンデンサ容量を増やしてもいいと思います*7。またコンデンサの種類によって音が変わりますので(特にCo、Cf)、好みで楽しんでください。
  • 回路作成時は1点アースを心がけました。ただ、プリ部の電源はプリ部で1点にまとめてから、パワー部のアースに落としました。*8
  • ACアダプタを使わない場合は、トランス+SBD(ショットキーバリアダイオード)をおすすめします。スイッチング電源は絶対不可*9

ここではパワーアンプICとしてTA8217Pを使用しましたがPCスピーカー用やラジカセ用パワーIC等、基本的に何でも構いません。基本的な流れとしては「その辺のPCスピーカーの分解 → ネットで検索してパワーICのマニュアルを入手」になるのではないかと思います。マニュアルをみながら適当に対応付けすれば、どのICでもこの方式を使えると思います。

例えば秋月で売られているTA7252APデータシート)はTA8217Pとほとんど同じ構成ですので、このICを2つ使って(片チャンネル1個)組むことができます。千石で売られているTA7281Pデータシート)ならば、上記回路の定数を変えず、ほぼそのまま流用可能だと思われます。

*7 : 電源2次側にOSコンを使用したのはなんとなく使ってみたかったからです。特にこだわりでも何もありません。ちなみにコンデンサ代だけで、だいたい2千円ぐらいかかります。

*8 : 意味があったかどうかは分かりません

*9 : 低音はよく出るかもしれませんが、音質という意味ではお話になりません。それ以前に、このアンプでは小容量電源でも十分な低音が再生されます。

電流駆動アンプによる低域共振の問題

あちこちで叫ばれているように、電流駆動アンプは電磁制動(電磁ブレーキ)が効かず低域にあるスピーカーの機械的共振部分で音の収まりが悪い的発言をよく見かけますので実験してみました。電流出力時は上の回路でRh=0Ω、電圧出力時はReをシートして(=0Ω)測定しました。この際、Rhは適当に(おそらく数kΩ程度に)設定しました。

測定周波数20Hz
測定波形インパルス*10、方形波(ステップ応答代わり)
測定部分スピーカー両端電圧

電圧出力

左:インパルス応答、右:方形波応答

vol_imp_res.jpg
vol_step_res.jpg

電流出力

左:インパルス応答、右:方形波応答

cur_imp_res.jpg
cur_step_res.jpg

考察

2つの波形を比較すると分かりますが、電流出力では入力周波数の7倍程度=140Hz程度の揺れがあります。これがスピーカーユニットのfo(低域共振周波数)による揺れで、この部分に対し電磁制動がほとんど効いていないことが分かります。一方、電圧出力の方では、このような揺れが見えないことから電磁制動が効いていると考えられます。

プローブが1本しかないので入力波形が表示出来てませんが、電圧出力の方は出力波形がかなり大きく歪んでいます。出力コンデンサの影響の影響が大きいのか、周波数的にかなり広い部分の低域(100~200Hz程度?)をほとんど再生できないことを示しています。

単純問題として、どちらが良いかということですが、低域共振にしたところで25ms程度で収束していることから電流出力に軍配を上げます*11。波形追従性、つまり忠実に再生するということにおいて(この回路での)電圧出力は遠く及びません。

*10 : 周波数とファンクションジェネレーターの関係で幅のあるインパルスになってます

*11 : Rh=1kΩ程度とほんとに少しですが改善されます

個人的な感想など

女性ボーカル、ストリングや金管楽器を含めた中高域を主成分としてもつ楽器の艶っく豊かな再生、大型アンプに負けない低音の再生能力、実にハッキリとした定位を考えると一度試してみて損はないです。PCスピーカー組み込みではなく、今度機会があればディスクリートアンプとして作ろうと本気で考えています。

追記 2007/12/12

http://nabe.blog.abk.nu/098 より。

立ち上がりの良さは音の臨場感に多いに影響しますが、普通のアンプで電流出力を採用すると(スピーカーが電流駆動用に設計されていないために)、音のメインである中音がきこえなくなり、ハイが強く聞こえてしまいます。

もともとアンプIC自体がハイあがりなのか(ブートストラップのせいか、スピーカー&ボックスのせい)、シャリ付いて仕方なかったため、今日電圧出力に戻しました(帰還抵抗=0Ω)。

電流出力を使用するときは、回路からスピーカーまで含めた構成を本格的に考察する必要があります。とはいえ、簡単に0.1Ω程度(以下)の電流帰還抵抗を使って、高域特性と立ち上がり特性を改善するのは手段として有効です(フラットなF特をめざすとかなりシビアになりますが、それはそれ)。

さらに追記。0Ωだとややしょんぼりな音なので0.05Ωにしました。曲によって少しだけシャリ付きますが、曲自体がシャリ付いているもあるのでしょう。