低電圧ヘッドホンアンプ Ver3 (op-dbuf3)

はてブ数 2012/12/27電子::HPA

多数の方に製作して頂いた低電圧ヘッドホンアンプ(op-dbuf/op-dbuf2)の最新進化系になります。自作HPAにどうですか?

  • 単3電池×2本仕様
  • 消費電流70~80mA
  • 最大振幅:約2Vpp(ニッケル水素使用時)

キット頒布終了。基板のみはありませんが、こういう手も。改良版の回路図が記事の最後にあります。

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2012/03/09(金)D級アンプで電源電圧可変ボリュームに挑戦した

変調と出力とボリュームの話

D-amp-VRV-pcb.jpg

D級アンプって一度PWM等に変調してしまえば、出力段はon/offだけっていう結構面白い動きをするのですが、変調回路と出力回路を切り離して、例えば変調回路を1Vで動かして最後のスイッチ出力を10Vで動かすと利得が10倍(20dB)になったりします。

つまり、D級アンプというのは(フィードバックの要素を除けば)変調回路で基準とした電圧と、出力回路でスイッチする電圧の比で音量が変えられます。通常、ボリュームで音量を変更するほうが楽なのでこんな方法は使わないのですが、これはこれで利点があります。

  1. 出力電源電圧を高効率なDCDC等で可変させれば、D級アンプの効率を(理論上)更にあげることができる。
  2. 音声信号をボリュームに通さないので、ボリュームによる音質劣化の影響をうけない。

2つ目を狙ってヘッドホンアンプ回路を作ってみました。

D級アンプで電圧可変ボリューム

D-amp-VRV.png

電源電圧からVRで分圧し、その電圧をオペアンプで生成するシンプルな回路です。PWM変調信号をVgs=1.5Vで動くP-ch/N-chのコンプリMOS-FET*1でスイッチさせます。*2

D-amp-VRV01.PNG

上がPWM信号、下が出力信号です。MOSスイッチの関係で位相反転していますが、狙い通りうまく動きました。音声信号をボリュームに通さないため、音質もこれより優れてる感じがあるのですが……。

*1 : BSD235Cは、P/Nが1つのパッケージされたMOS-FETアレイの部品名です。

*2 : 電源電圧が±2Vなのはそのためです。±1.2だと、最後の電圧が例えば±0.1Vの時にMOSをonにできない

大きな問題が……

ボリューム(出力基準電圧)を絞ったときの出力波形が以下になります。

D-amp-VRV02.PNG

これは無音時のものですが、PWMのスイッチ波形と同期して振動が見えます。

何が起きているのかと言うと、MOS-FETのゲート・ドレイン間容量およびゲートソース間容量(Ciss/今回は37pF)があるために、PWMのスイッチ信号が出力に漏れ出しているのです。そのため大きな振動が出てしまっています……。

ここで音声入力があると次にようになります。

D-amp-VRV03.PNG

スイッチ入力による振動が漏れて、そのスイッチ振動のタイミングがPWM変調されているため(PWM信号と同期しているため)、たとえ出力用電圧が0Vであってもその音がヘッドホンに漏れ出してしまいます……。


実際何が起こったかというと、低音量時(VRによる電圧が±0.2Vや0V(無音設定))時に、音が駄々漏れし、おまけに振動による雑音が大きく聞こえます。

まとめ

±2V程度の低電圧スイッチ回路、しかもヘッドホンアンプという能率の高い再生機器では、思った以上に無謀な挑戦だったようです……。

改善策としては、

  • pMOS/nMOSの配置を逆にして、ソース接地ではなくドレイン接地に変更する。
  • 出力用基準電圧の生成を、高周波まで安定度の高いものに変える
  • 入力容量の影響を受けない工夫をする

などが考えられますが、いつもどおり回路規模をあまり大きくしたくないので、今のところ打つ手なしの状態です(汗)


世の中に電源電圧可変によるボリュームを実現したD級アンプをみかけないのは、それなりに理由があったんですね……。

自励式PWMによるシンプルなD級ヘッドホンアンプ

はてブ数 2012/02/01電子::HPA

※2016/05/29 更に改良を重ねたVer2の回路を公開

※2014/10/13 改良版へのVersion UPキットが販売されてます

※2014/10/13 改良版を掲載。

※2012/12/12 推奨オペアンプを修正・追加

※2012/06/15 回路変更を追記(箇条書き下のほう)

※2012/05/08 プリント基板頒布しました。

※2012/03/05 長ったらしいので、略称「D級HPA」あたりで。

※2012/02/12 回路図を少し変更。補足を修正。


単3(単4)電池2本で動くD級ヘッドホンアンプです。しかもBTLではないので普通のヘッドホンで使用出来ますし、回路が非常にシンプルで作りやすいのが特徴です。

  • 約2MHzで発振する本格的なD級アンプ
  • オペアンプ2つに少しの外付け部品というシンプルな回路構成
  • ±1.2Vで動く低電圧動作
  • D級オーディオアンプではめずらしいDC直結
  • 10mA以下の動作電流(±1.25V電源時。無音なら正電源6.5mA、負電源6.5mA)
    • 電池が異様に持ちます。単3エネループなら連続1週間ぐらい使える
  • 単3電池か単4電池推奨(電池2本)*1

当ブログでは久しぶりの新型ヘッドホンアンプとなります。

*1 : 4本でも動きます。

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プリント基板頒布中です。

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2012/01/14(土)PWMなD級アンプ組み立て

strvさんのDPA01組み立て

dpa01.jpg

strvさんのフルディスクリートD級アンプDPA01を組み立てました。

出力端子を買ってくるのを忘れたのでケーシングは諦めて(=スピーカーにつなぐのは諦めて)、5.2V駆動させてヘッドホンを鳴らして遊んでいました。ヘッドホンだとD級独特の「ジー」ノイズが聞こえてしまうのはご愛嬌ですが、これが結構ちゃんと鳴るんです。

さすがにジー音がひどいのでパワースイッチと、信号段の間に100Ω+100uH+フェライトビーズのいつものフィルタと16V 680uFの電解×2、16V 100uFのOS-CONを入れました。

D級特有の中域の明瞭感があり、その点だけとればどのアナログアンプよりも優位。ただし、D級のジー音がどうにもこうにも……なので、同じようなものを作ってしまえ!と(苦笑)

補足

フィルタが8Ωの純抵抗負荷用に設計されているので*1、「12V駆動して出力を6Ω+2Ω(=8Ω)で終端し、分圧。これの2Ω側と並列にヘッドホンをつなげると良い感じで鳴る」(作者のstrvさん談)とのことです。

*1 : 実際確認したら、でこぼこの通過帯域特性が8Ω負荷のときには通過域平坦になっていた

PWM式D級ヘッドホンアンプ(実験)

pwm-hpa-test.jpg

いつもどおり電池2本です。バカの一つ覚えここに極めたり(苦笑) ……といいたいところですが、D級ヘッドホンアンプを製作する場合、電源電圧が高いと色々と問題があります。

  • 電源電圧が高くなるとゲインがどうしても高くなってしまう。
  • 出力段スイッチが発生する電源ノイズがどんどん強くなってしまい、結果、何も再生してないのに出力がノイズだらけに……。

この点で電池2本というのは悪くない選択です。

pwm-hpa.png

よくある三角波生成回路を使って、バッファを使わずオペアンプで直接出力してみました(笑) そのせいで上のDPA01よりマシですが「ジー音」との戦いになってます。諦めたらバッファ付けます^^;; 回路原理はDPA01とまったく同じなのでstrvさんの同人誌「HPA&Analog Vol.6」を読んでください(苦笑)

使えるオペアンプですが、確認したところで2つです。

  • ADA4891-2(U2だと音声帯域にもホワイトノイズが……)
  • LTC6253(U2だとオーバーシュートが)

スルーレートの高いオペアンプでないと、高周波の三角波がうまく生成できませんし、最後のH/L出力も立ち上がり波形や立下り波形が鈍ったり、三角波の波形が崩れると、音の明瞭感が損なわれ混ざったり、場合によっては歪んだ音になります。またU2はオーバーシュートが少なく、しかもある程度電流が取れる高速オペアンプが必要になります。*2

発信周波数は「C 470pF」を330pF~2200pFぐらいに変更すると色々変わります。積セラではなくフィルムコンを使ってください^^;; 発振周波数を100~200kHzまで下げればAD8656等の他の(レールtoレール)オペアンプで動作します。

オーバーシュートと波形歪みそれなりにうまく動作中
pwm-hpa-osc1.PNG
pwm-hpa-osc2.PNG

色々述べましたが、この回路はあくまで実験回路です。現状、結構良い感じには鳴っていますが、ジー音との戦いとか色々あります。試したらぜひコメントください。


たまにはみんなで公開実験して回路を改良して行きましょう(笑)

追記

高域ノイズみたいのは対策して消せたのですが、ホワイトノイズが消せない……。

バッファオペアンプ兼コンパレーターが、負帰還をかけないと電源以上にノイズを出してしまうことが分かったので(しかも音声帯域のホワイトノイズ(苦笑) ……出力に直接乗ってるのか、スイッチ動作のゆらぎに混ざってるのかは不明)、諦めてMOS-FETで出力バッファを組む予定。

*2 : どうして市販のD級アンプICのスイッチ周波数がせいぜい200~300kHzか謎だったのですが、周波数を低くするとフィルタで取り除きにくくなり、周波数を高くすると周波数に応じたコンパレーターや出力スイッチの高速動作(素早い立ち上がり、立下り)が要求されるからみたいです。もし、スイッチ周波数に対して十分な立下り・立ち上がり特性を実現しないと矩形波が歪み、結果として再生音が歪みます。搬送波を1MHz程度にして、U2にAD8656等の遅いオペアンプを持ってくるとで実感できました。

ちゃんと鳴った

pwm-hpa-beta.png
*3

ホワイトノイズ発生源を調査していたら、基準となる三角波が原因だったので(ファンクションジェネレーターで三角波を入れたらホワイトノイズが激減した)、カプリングコンデンサC6を入れ、R4とあわせてカットオフ34kHzのHPFを構成し音声帯域のノイズを三角波から消したら見事に解消。*4

C7は「キー音」ノイズ対策で、前から入れたあったけど秘密にしておくのも何なので公開。オペアンプ側から漏れ出すスイッチノイズを逃す役割があります。ボリュームを10KΩ以外にする場合は値を変えてください。*5

動作確認オペアンプは次のとおり。

  • ADA4891-2 220MHz 170V/us(推奨、でもU1には向かないみたい……)
  • LTC6253 400MHz 280V/us
  • LTC6247 120MHz 90V/us
  • LT1807 325MHz 140V/us(U1のみ。U2では音が歪む)

上にあるとおり高速オペアンプ以外では動作しません。電圧は電池2本~オペアンプの耐圧が許せば高くても大丈夫みたいですが*6、せいぜい電池4本ぐらいで。抵抗はカーボン抵抗で充分(笑)

フェライトビーズがなければ省略してください。出力フィルタの47uHのコイルは直列等価抵抗が2.4Ωあるものを使いましたが、パワーコイルを使うと100kHzぐらいの共振が強く出るので、直列に2.2Ωぐらい入れたほうがよいかも知れません。コンデンサは言うまでもなくフィルムコン。

ヘッドホンによるかもしれませんが、あのヘッドホンアンプより音良かった(苦笑) 色々研究して後日記事にまとめますが、速報としておいておきます。

ちなみに、あのヘッドホンアンプの改良型回路も考え中なんだけど、どうしたものか(苦笑)


特殊な部品は何も使ってませんし、オペアンプも国内通販で手に入りますし、誰か作りませんか?*7

*3 : (1/17)回路図修正しました。ご迷惑おかけしました(汗) >ひよひよさん

*4 : 発振周波数は約1MHzなのでカットオフはもっと高めでもいいかもしれない。

*5 : ボリュームを倍にすればコンデンサの値は1/2ですが、10KΩでも20KΩでも100pFぐらいがよさそうです。50KΩ以上のボリュームは非推奨。

*6 : 電圧が増えるとそれに比例して三角波が大きくなるので音量は変わらない

*7 : 昔よりこういうの公開しても作る人減った気がする。半ば感想聞きたくて公開してるんだけど(苦笑) キットが10個頒布されるのもうれしいけど、それより1つの感想が聞けたらもっと嬉しい。

補足と随時追記

あくまで実験中の回路です。不具合等々は覚悟の上で作ってください^^ これをベースに色々いじりたい人向け。

  • オペアンプによって波形が崩れたりヘッドホンで相性でたり、なかなか大変です(苦笑)
  • D級の難点、ヘッドホンによって高域が綺麗にでないことも……。
  • Zobel(スナバ)つけるといいかも。今のところ、0.1uF+1Ω。
  • C5を1000pFぐらいにしたほうが音がガサガサがしなくて(なめらかで)良い感じ。
    • U1=LT6253(書き間違え)LT6247, R2=22k, R3=15k, C5=1000pF, U2=ADA4891-2
    • R2,R3は値が小さいほうが外来ノイズを拾わなくて良いのですが(手を近づけるとU1の3pinが拾いやすいことが分かる)、R2=2.2k, R3=1.5kよりもこの値のほうが音がいいという謎。
    • 振周波数が330kHzぐらいになり、除去しきれないスイッチノイズ漏れが……。
    • 特にHDDレコーダーをつなぐと謎のホワイトノイズが……。レコーダーのDACに330kHz付近の残量ノイズがあると予想するけどまだ不明。
  • (1/28)自励式(別回路)を調整中。こっちの方が楽で良いかもしれない。

自励式の完成回路図(記事)はこちらに。