TPA6211スピーカーアンプの製作(TPA1517アンプ進化版)
久しぶりにスピーカーアンプを製作しました。キット頒布中ですが、自作向けの解説もあります。
概要
- Ti製TPA6211を使用した、高音質なBTL出力スピーカーアンプ。
- 単電源動作で利便性が高く、音質的に有利なDC直結アンプ。
- 【キット】電子ボリューム内蔵で、ボリュームによる音質劣化が小さい。
- 【キット】赤外線リモコンに対応し、遠隔で音量のUp/Down/Mute操作が可能。
- もちろん普通のアナログボリュームでの操作も可能。

久しぶりにスピーカーアンプを製作しました。キット頒布中ですが、自作向けの解説もあります。

オペアンプ+バッファのHPA回路にて、全体の仕組みを変えずにバッファ回路だけ変更してどれが一番良いか検証してみよう! という企画です。

3つとも同じようなバッファ回路になっていますが、バイアス電流の仕組みが少し異なっています。
さて、この3つを音が良い順に並べるとどうなるでしょうか? 予想するのも楽しいと思うので、X(Twitter)でアンケートをしてみました。
みんなすごいなー。結論として音が良い順に並べると以下のようになります。
カレントミラー > 薄膜抵抗 >> CRD
ただの主観ですが、結構はっきり違います。
昔はよく使っていたCRDですが、ここ何年かは全く使わなくなっていました。あるとき、実験として抵抗に置き換えてみたらめちゃくちゃ音が良くなったんです。
CRDのほうが回路として安定するし(オプアンプから見た負荷も軽いし)、取り出せる振幅も大きくなるにもかかわらず、音は薄膜抵抗のほうが良かった。抵抗ぐらいシンプルなほうが良いのかなと漠然と思っていたのですが、カレントミラー回路の音が良いことから原因が推測できます。
おそらく上の回路ではCRDの定電流源としての安定性が良くないことが原因です。今回使用したCRDを安定動作させるためには、両端に8~10Vぐらいかけてあげる必要があります。実際10mAのCRDを使って6.2mAしか流れてないわけで、規定の飽和動作をしていません。飽和状態で使用しないと、(オペアンプの)出力電圧によってバイアス電流が非線形に変動してしまいます。*1
そんなわけでここ何年か抵抗を使用してきたのですが、一応カレントミラー回路も検証したほうがよいよね? とも思っていました。放置された理由はカレントミラー回路を組み込むのが面倒なのと「回路的には超安定するけど、多分抵抗より音悪いんだよな……」という予想(苦笑)
検証したら、これまた明らかにカレントミラー回路のほうが音が良かったです。この回路だと(オペアンプから見たとき)理想定電流源に近いんですよね。つまりオペアンプ対して抵抗よりも負荷が軽くなることが大きな要因だと思われます。
基本的に「バイアス電流が多いほうが音が良い」のですから、その知識があれば簡単に並べ替えできます。
なぜなら「それ単にバイアス電流が増えただけでしょ?」というツッコミをされないように(実験時にその要因を排除できるように)、回路の電流値を設定してあるからです。

左右の回路、どっちが音が良いと思いますか?
アンケートでは、およそ「左が良い:右が良い=2:1」という投票結果でした。
聴き比べた感想は、やや左が良いかな(大きな差はなさそう)。
まず普通に回路を考察してみます。C1に位置するコンデンサですが、これは経験上容量が大きいほど音が良くなることが分かっています。
右回路の中点と出力の接続を一度無視すると、単純に左から右の回路になった場合、C1に相当するコンデンサ容量が半分になっいます(コンデンサの合成容量)。
もうひとつ、X(Twitter)で指摘していた人が居てさすがと思ったのですが、右の回路は高周波特性が悪化します。オペアンプの高周波出力がC2/C3コンデンサを突き抜けて出力(負荷)に接続されているためです。

2つとも音が悪くなる要因として考えられます。
どちらにもC1の820uFを付けた状態で、C2, C3に100uFを追加したとき追加したとき明らかに良くなったので、それならばってことで上の比較回路を考えてみたのですが、実際作ったら微妙な感じ。
もう少し回路を工夫して検証してみても良いかもだけど、820uF×3(C1-C3)してもC1単独より悪いっぽいからダメかも。
ところで全部正解した人は居ましたか?
Ti製のSoundPlus高性能オーディオ・オペアンプ「OPA1622」のGNDをどこに接続するか問題について。
高性能オーディオ用ICであり、音質も大変優れていることから人気のオペアンプです。SoundPlusシリーズの中でも最高の「Ultimate」を冠しています。
このICは「100mA以上の電流」を取り出せ、ヘッドホンなどを直接駆動することも可能です。もっぱら「いわゆる載せ替えオペアンプ」として人気のようですが、このICは10pin DFNとして提供されており、通常の方法ではオペアンプとして載せ替え使用することはできません。
またこのオペアンプには±電源ピンの他に、GNDピンがありこのピンの処理方法について多少の議論があるようです。
GND端子の接続方法は3つ考えられます。
仮想GNDの回路はこんな感じです。*1

(3)GND接続 > (1)Vee接続 > (2)仮想GND回路付
ある種、当たり前の結果になりました。
データシートには次のような記述があります。

【赤下線】GNDピンはノイズが最小でインピーダンスが最も低い基準に接続しろ
ノイズが少なくインピーダンスが低い基準点というのは、通常はGNDになりますが*2、GNDに接続できない状況でしたら次点でマイナス電源に接続するのは決して悪いことではありません。*3
上に示した仮想GND回路は、電源ピン(V-)に直接接続するよりインピーダンスが高いので、音が悪くなるのは当たり前です。
「なんだ仮想GND基板ク○じゃん」という結論は、実はちょっと焦りすぎです。

左が仮想GND付き変換基板(R/C裏面実装)で、右がGND-Vee接続変換基板です。GND-Vee接続基板は、上ではCを載せずに評価しました。ここには0.1uFのECPUを電源パスコンとして接続することができます。
仮想GND付基板は、GNDを接続するためのPAD(旧Bispa変換基板ならばホール)があります。仮想GND付き基板はGNDを正しく接続すると基板中のC1/C2が電源パスコンとして作用します。
その結果こうなります。
C付き仮想GND基板のGNDを接続 > C付きGND-Vee接続基板 > GND接続 > その他
実験に使った基板はBispaで販売されているものです。
抵抗の場所と音質の謎で述べたとおり、抵抗には「音質への影響が大きい要素」と「音質への影響が比較的小さい要素」があります。
ボリュームは、可変抵抗という物理的制約上音質が良いものを利用しても固定抵抗に比べたら大きく劣ります。擬似Lアッテネーターはこの特性を利用して、ボリュームの音質を改善する方法です。

今回の実験回路です。VRは10KΩに固定して話を進めます。
R1とVRは擬似L型アッテネーターを構成しています。R1は2K~4.7KΩぐらいの抵抗を利用します(入力の大きさによる)。
R2は入力抵抗です。直列要素ですので抵抗があればあるだけ音質が劣化するはずでした。実際、今まで製作してきたアンプでは、R2は接続せず、常に0Ωにしています。
しかしこれだけでは理解できない現象に出くわしました。この回路では、R2を接続したほうが音が良かったのです。
最初は2KΩぐらいで試したのですが、抵抗値をあげるとより音が良くなります。具体的には、R2として10KΩぐらいを接続すると一番音質が良くなりました。22KΩでは、オペアンプ入力端子のインピーダンスが上昇しすぎるのか、音質が低下し始めました。
つまり擬似Lアッテネータよりも、擬似Tアッテネーターのほうが音が良かったのです。
これまでの状況では、単に「オペアンプにとって入力インピーダンスがほどほどにあると音質が良くなる」という可能性を否定できませんので、きちんとしたT型アッテネーター回路を製作して検証しました。
R1=2K(LGMFSA)、R3=1K(秋月カーボン抵抗)として、R2(LGMFS)を0Ωと10KΩで比較してみました。明らかにR2(LGMFS)を付けた方が音質が良くなります。
今度は逆にR3をLGMFSの1Kに変更した上で、R2を秋月カーボン抵抗の0Ωと10KΩで比較してみました。さすがに微妙なところですが、この場合もR2を付けた方が音質が良くなりました。
試しにR3をが切断してみると、R2の種類によらず存在しない(0Ωの)ほうが音質が良くなりました。よってこの現象は「R2とR3の何らかの相互作用によるもの」と考えられます。
また「R2の抵抗の種類によらず音質改善効果があり」、音質の良い抵抗のほうが効果が高い言えます。
昔、抵抗の音質をチェックしたときは、FETバッファアンプを使用しました。このとき、R2に相当する抵抗は入れない状態が一番良かったのですが、本当にそうなのか再度確認してみました。
結論から言うと、R3にボリューム(2CP601)を付けた状態で、手持ち抵抗でもっとも音質が優れるRT0603をR2につけても音質が劣化しました。
つまり、この現象は「オペアンプの非反転入力に接続したときに改善効果があるが、FETバッファアンプのような構成では効果がない」ということが分かりました。
さらに検証してみると、R2による音質改善はオペアンプによって大きく異ることが分かりました。改善が大きかった順に並べます。
| オペアンプ | 電圧ノイズ | 電流ノイズ | 入力バイアス | 種類 |
|---|---|---|---|---|
| LME49721 | 4nV(1K) | 4fA(10K) | 40fA | bipolar |
| LMP7716 | 5.8nV(1K) | 10fA(1K) | 50fA | CMOS |
| LT1677 | 3.2nV(1K) | 300fA(1K) | 2nA | bipolar |
| LMP7732 | 3.0nV(1K) | 1.1pA(1K) | 1.5nA | bipolar |
| LT1807 | 3.5nV(10K) | 1.5pA(10K) | 1uA | bipolar |
| LT6203 | 2.9nV(10K) | 0.75pA(10K) | 1.3uA | bipolar |
| OPA2365 | 4.5nV(100K) | 4fA(10K) | 0.2pA | CMOS |
データシートより抜粋。値はTypicalです。各オペアンプの測定条件は同一ではありませんので、相互比較としては誤差を含む値と思ってください。
他にも検証したことを含めまとめておきます。
経路Aは入力信号の通り道です。入力信号は「R1とR3の分圧で減衰され、R1とR2を直列要素、R3を並列要素」としてオペアンプに入力されます。ですので、入力信号から見たらR2の抵抗が無いほうが良いことになります。
そしてオペアンプには入力換算電圧雑音というものが存在します。入力換算電圧雑音は、オペアンプの音質に深く関わってくるものですが、それは実際にオペアンプ入力端に発生するわけではありません。ただしアンプ回路を計測してきた実感として、オペアンプはオーディオ信号などを入力して動作させるときに、アンプの動作状況によって入力端子に雑音を発生させることがあります。*3
経路Bの電圧はR2とR3に印加されます。R3には「入力信号」と「オペアンプからの雑音」の2つの信号がかかることになります。雑音信号が入力信号に対して影響を与えることで、入力信号を歪ませます。
ところがR2があると、「オペアンプからの雑音」がそのままR3に印加されることはなくなり、雑音がR2/(R2+R3)されます。つまりR2が大きければ大きいほど雑音が減ります。
一方で、経路Bには「オペアンプの入力換算電流雑音」も生じます。この雑音は、信号源のインピーダンス(R2+R3)が大きくなればなるほど大きくなります。
この推察は、R2が大きすぎてもいけないなどの観測現象をよく説明できます。音質改善効果が大きいオペアンプは、入力換算電流雑音が小さいので(一部例外)、R2よる音質劣化が少なく改善効果が大きいと考えられます。
仮説を検証するため、T型アッテネーターに細工をし次のようにしてみました。検証はR1=2K, R2=1K, R3=3K, U1=LME49721です。
もし仮説が正しい(オペアンプ由来の雑音が音を歪める)のならば、U2を接続したとき音質が劣化し、またその劣化の仕方はオペアンプによって異なるはずです。
まずR9=0Ω(ジャンパ)として検証しました。U2に使用した時、狙い通り音質が劣化しました。劣化が小さかった順にオペアンプを並べます。
こうして見ると、電流ノイズなどのパラメーターと相関はないことが分かります。
続いてU2を最も影響が大きかった「LT6203」に固定し、R9に抵抗を入れて検証しました。
その他、信号源インピーダンス(究極的にはR3の値)によって、音質が最適になるオペアンプが異なるということも分かりました。
擬似L型(擬似T型)アッテネーターは音量調整がしにくいのですが、R1を付けずに通常のボリューム接続にR2として抵抗を接続するだけでも音質が劇的に改善することがあります。
実際に試してみたご報告や追試、考察へのご意見、感想、ツッコミなどありましたらコメントいただければ幸いです。*5
最近テストしている回路(疑似Lおよび電子ボリューム)では、総じて「R2に相当する抵抗は付けない」ほうが音質がよくなります。
当時より全体的に試聴環境が向上したいるため、差がわかりやすくなったのも一員ですが、オペアンプの種類や動作条件などにもよるのかもしれません。
電解コンデンサは、OS-CONに狙いを定めてから、もっぱらOS-CONのSEPCばかり使ってきましたけど
「はたしてSEPCってそんなに音いいの?」
という疑問が湧いてきたので検証してみました。
一昔前は固体電解コンデンサと言えばOS-CONしかなかったのですが、現在では導体性高分子コンデンサを各社が開発・製造しています。ですので、他社製品も検証してみようというのが今回の記事です。
いずれもほとんど同サイズ(φ10mm×12-13mm)でほぼ同性能の導体性高分子コンデンサの大容量低ESR品(8-10mΩ)になります。新しいD級ヘッドホンアンプの電源用コンデンサとして使用しました。
これまで数多くのアンプで使用してきました。元々SANYO製で、SANYOがなくなったあとはパナソニックが製造を引き継いでいます。
OS-CONは元々有機半導体コンデンサについた名称で、現在の固体コンデンサ(導体性高分子コンデンサ)のパイオニアとなった技術です。
SPECは高分子コンデンサの中では、大容量・低ESR品になります。
https://industrial.panasonic.com/jp/products/capacitors/polymer-capacitors/os-con
刻印が「LG」なのでニチコンLGと呼ばれることが多いようですが、以前はLGというシリーズ名だったようですが、現在の正式名はPLGです。刻印はLGになります。高分子コンデンサの中では、SEPCと同様に大容量品に位置します。
http://www.nichicon.co.jp/products/solid/solid_daia_f.htm
刻印「C」で型番がAPSCで始まるためAPSCとも呼ばれることがありますが、正式名はPSCです。高分子コンデンサの中では標準品に位置しますが、他社との比較では「大容量品」に相当します。
https://www.chemi-con.co.jp/download/(pdf)
ソケットを使わず、めずらしくすべてハンダ付けによる検証をしました。*1
PSC >> PLG 3700uF > PLG 2700uF >> SEPC
という具合でした。SEPC音良く無いじゃん!(笑)
PSCやPLGはエージングが進まないと結構酷い音がするのですが、SEPCはその点少し安定している印象でした。
大容量品ではなく、小型品(φ6.3~8)でも検証してみました。検証回路は異なるものを使用しています。
PSFはPSCの低ESR品です。6.3V品が流通していないため、16V品で代用しました。
L8、R8はFPCAPシーリズの1つです。FPCAPは元々富士通が開発・製造していたコンデンサのシリーズですが、現在はニチコンが買い取りニチコンより販売されています。
PSF 16V > PSC 16V > PSC 6.3V > S8 > L8 > SEPC 16V ≥ SEPC 6.3V
やはりPSCの音質が優れる結果に。そして比べた時のSEPCの音の悪さ(苦笑)
ついでに、HZやMCZなどの高分子ではない従来の低Zコンデンサと比較してみましたが、SEPCより明らかに劣りました。
KEMETのA750というタイプの高分子コンデンサを購入したので、追試してみました。
いずれもECPU 0.1uF(フィルムコン)が並列に入っています。*3
PSF 16V > A750 16V > PSC 16V > SEPC 16V
A750とPSFは僅差です。好みでも変わってくるかと思います。音はたしかに違うのですが、帯域によって得意不得意があるような感じです。
注意として、A750 16V 470uFとPSF 16V 470uFはスペックこそ一緒ですが、A750が直径8mm、PSFが直径10mmとPSFの方が大きく、そしてESR低くなっています。固体コンは、同容量同電圧でも「大きさが大きくなるほどESRが低く性能が良くなる(音が良くなる)」ことが多く、このことからA750が不利な比較とも言えます。
同サイズ、同容量、同耐圧と条件を揃えて、A750とPSFを比較しました。
比較結果。
A750 6.3V 820uF > PSF 6.3V 820uF
サイズを揃えてしまえば、A750に軍配が上がるようです。DigikeyやMouserで買いやすいことを考慮すると、これはなかなか良さそうです。
これからはKEMETとPSFをメインで使っていこうかなと思っています。
SEPCの性能が悪いわけではないのでそれだけは誤解しないでください。これは性能テストではなくて音質テストです。性能テストならば、もっと全く別の評価をする必要があります。
また空間再現能力を最重要視してテストしていますが、音質に関する要素は人それぞれ好みがあり、ましてコンデンサはオーデオ的な音色の差が出やすい素子ですので、その点はご理解願います。
最近、TPA6211アンプでSEPC 6.3V 1500uFを使ったら結構音良かったです。
再評価すべきかもしれませんが、OS-CONのリード品はディスコンが近いため、A750が鉄板なのは変わらなそう。