もう9年前になる抵抗の音質を正しく評価するの記事以来、まともに抵抗の音質評価をしていなかったので、古い記事のアップデートも兼ねてチップ抵抗を含めた音質の再評価をしてみました。
経験則から以下のことが分かっています。
- 抵抗の構造や素材によって音質が異なる
- 電流雑音係数はほとんど影響がない
- 同シリーズならば、温度係数(ppm)が低いほど音質が良い
同シリーズならば、ワット数(W)が大きいほど音質が良い
- 信号に対して直列に入る要素は影響が大きく、並列に入る要素は影響が小さい(詳細)
そしてよくよく考えてみると、音質が良い抵抗は温度係数も低いことが分かっています(ただし逆は必ずしも成り立たない)。
- 音質の良い金属皮膜抵抗 15~25ppm
- 無誘導巻線抵抗 20~50ppm(ワット数大きめ)
- 金属箔抵抗 0.5~2.5ppm
比較方法として、D級ヘッドホンアンプのNFB抵抗R3の2KΩを変更して聴き比べてみました。空間再現能力を再優先で評価しています。

差し替えた直後は音が安定しないので、すべてしばらく鳴らしこんでから試聴しています。
最近のメインです。bispaのLGMFSAをよく使っていますので、これを目安に評価したいと思います。
LGMFSAより安価ですが、音質は劣ります。とはいっても、普通アンプ回路を作るには安価で十分な音質だと思います。0.25W品のLGMFS25は0.5W品より音質が少し劣ります。
2Kがないので、100Ω(WNA100FET)で比較しました。LGMFSAよりWNAの方が上だと思っていたのですが、空間再現はLGMFSAのほうが明らかに上でした。
同じくOhmite無誘導巻線抵抗のWNC 1K(WNC1K0FET/2W)とも比較してみましたが、同様にLGMFSAのほうが空間再現能力は上でした。ちなみにLGMFSと比べると、Ohmite無誘導巻線のほうが音質は優れています。
ただ、無誘導巻線のほうが音が元気でLGMFSAは良く言えば少しおとなしい感じです。悪く言えばWNAに比べLGMFSAは若干音が曇ります。いわゆる金皮の音といってこれを嫌う人も世の中にはいるようですが、(無誘導巻線と比べて)歪まないからおとなしく感じるだけのような気も。
昔の音質比較で無誘導巻線(NS-2B)は「直結と差が分からない」と書きましたが、現在の再生環境だとWNAに関しては決してそんなことはなく奥行き感が失われます。
よくある普通の金属皮膜抵抗です。そこまで悪くはないのですが、LGMFSAと比べると音が平明的でガヤガヤします。
秋月で購入したどこにでもあるカーボン抵抗です。MF1/4CC以上に音がガヤガヤし平面的な音になります。
大昔にリールをカットしてもらったもので型番はメモってないのですが、おそらくERJ3GEYJ222Vあたりです。リードカーボン抵抗よりもさらに酷く、のっぺりとした平らな音がします。
LGMFSA > Ohmite無誘導巻線 > LGMFS50 >> その他
一口にチップ抵抗といっても色々ありますが、音質にそこそこ定評のあり値段が高すぎない薄膜チップ抵抗をメインに試聴してみました。2012サイズに絞って製品をピックアップしています。なるべく温度係数低いものを中心に選んでいます。
LGMFSAよりもクリアに鳴り奥行きも良いです。±10ppmより±15ppmが高いという不思議な値段設定になってます。
6ARB(10ppm) > 6APB(15ppm) > 6AEB(25ppm) > LGMFSA(15ppm)
音質は「同シリーズなら温度特性が良いほうが音が良い」という法則通りになりました。
無誘導巻線抵抗で有名なDale製の薄膜抵抗です。5ppmなのでいいお値段しますが、それだけあってLGMFSAより明瞭。
TNPUより温度特性は劣りますが、高性能な薄膜抵抗です。しかしながら、音は明瞭さに欠け曇ってしまいます。データシートを読むと素材にセラミックを使用しているようなので、それが原因かも知れません。
0.01%という高精度で温度特性も優れた抵抗です。しかし、音が少し平面的になってしまいます(奥行きが少し悪化する)。
Vishayの薄膜抵抗です。他と違い定格1/4Wになります。値段にびっくりしますが、音質もびっくり。LGMFSAよりも明らかによく(聴き比べてすぐに分かるレベル)、明瞭で奥行きの優れた音になります。
金属箔抵抗より安いとはいえ、値段が高過ぎるのと250Ωからしか値がないのが難点です。
PLTほどではありませんが、LGMFSAよりクリアで明瞭な音です。125℃対応品。
PATとほぼ同じ性能でこちらは通常温度版でちょっとお安い。しかも音質はPATTより上でPLTにかなり近い音です。PLTがちょっとだけ上という感じ。
値段や抵抗値(PLTは最小が250Ω)を考えたらPAT断然買いです。
差し替えてしばらくは「おおっ」という感じの音がするのですが、しばらく鳴らしていると音質が悪化してLGMFSAよりも奥行きのない鳴り方になります。風を当てて冷ますと元に戻るので熱の影響のようです。
値段は安いのに大変クリアで明瞭な音がします。LGMFSAより上です。
LGMFSAより少し明瞭です。慎重に聴き比べないと分からないレベル。
RRは中国製ですが、この2つは日本製。同じ精度のは売ってなかったので、こうなってしまいました。LGMFSAよりクリアに鳴ります。
RG2012N(10ppm) > LGMFSA(15ppm) > RG2012P(25ppm)
RG2012Pは差し替えた瞬間に聴いただけでも平面的な鳴り方でイマイチでした。
ほとんどがLGMFSAより音質が優れるという意外な結果になりました。
- PLT0805 5ppm 508円
- PAT0805 25ppm 116円
- PATT0805 25ppm 164円
- RN73 10ppm 72円
- ERA-6ARB 10ppm 131円
- TNPU0805 5ppm 297円
- ERA-6APB 15ppm 146円
- RG2012N 10ppm 124円
- ERA-6AEB 25ppm 64円
- RR1220P 25ppm 13円(ERA-6AEBとほとんど一緒)
- LGMFSA
- その他の薄膜チップ
圧倒的な音質はPLT0805とPAT0805です。聴き比べてもすぐに分かるレベルなので、この2つは群を抜いてます。その代わり、PLTはお値段も圧倒的ですが、肉薄する音質のPATなら値段もそこそこ抵抗値も多いのでおすすめ。
RN73以下は順位を2つぐらい飛ばさないと明確な差は分かりにくい感じの群雄割拠状態ですが、それでもRN73シリーズのコストパフォーマンスには驚きです。KOAに似た型番の抵抗があるようですが、試聴したのは「TE Connectivity」ですのでご注意ください。
更にコスパを求めるなら、RR1220Pの25ppmでも良いとは思います。
スルーホール抵抗(リード抵抗)では同シリーズならワット数の大きいものが音が良いことが多いのですが、チップ抵抗ではどうなるのか検証してみしまた。
ほぼ同じ音ですが、少しだけ1608サイズの方が上でした。
明らかに1608サイズの方が上でした。
差が微妙なのですが、何度試聴しても何時間かエージングしても2012サイズのほうが音が良い印象でした。
ほとんど差がないけども、RG1608Nのほうがいいのかな?ぐらいでした。
明らかに1608サイズのほうか音質が上でした。
同一品種や同一仕様がなかったので同一メーカー比較です。RP73の音が悪かったです。というかそもそも、LGMFSAより音悪かった(苦笑)。1608唯一の無かったことに。
同一メーカーですが物は全然違います(苦笑)。RNCFの高精度抵抗は音悪かったので、RNCSが上でした。
安いので買ってみたのですが、刺した瞬間「これは格が違いそう」という音がしまして、案の定エージングが進めば進むほどどんどん音質が向上していきました。とても優れた空間再現能力です。
追試。1608サイズを網羅すべく買ってみたのですが、50ppmということもあるのか、LGMFSAより音質が劣りました。
追試。AT0603は自動車向けなので、通常品を買ってみました。他の抵抗は、自動車向けのほうが音質悪いので。この抵抗も、通常品の方が音が良かった。
RT0805の音が悪かったので1608版は買わなかったのですが、最初から買っておけばよかった。こんなに音が違うとは……。
追試。10ppm版です。25ppm版より音いいけど、他の抵抗のppmの差ほど音質差はないイメージです。
追試。Bispaのオリジナル抵抗VMFKです。RG1608Nよりは上ですね。比べると、RG1608はややどんよりした音に聞こえます。
- RT0603 10ppm 76円
- RT0603 25ppm 26円
- AT0603 25ppm 51円
- ERA-3ARB 10ppm 122円
- PAT0603 25ppm 111円
- PATT0603 25ppm 162円
- VKMF1608 25ppm 10円
- RG1608N 10ppm 106円
- RNCS0603 25ppm 60円
- LGMFSA
- その他(RR含む)
上位5つはどれを選んでもかなり良いです。その5つの中でも、追試したRT0603の2種と、その下3つは結構はっきりとした差があります。RT0603は他の抵抗と違い、10ppmと25ppmの音質差が非常に小さく、値段を考えると25ppmで十分だと思います。
2012サイズのERA-6ARBはそこまででもなっかたのですが、ERA-3ARBは圧倒的でした。でもエージングが進んでAT0603がそれを追い越してしまいました(笑)
PATT0603とVKMF1608間にそれなりに差があります。RT0603のコスパを考えると、コスト優先でVKMF1608を選択する以外は、他を選ぶ必要はないかと思います。
- (1608)RT0603 0.1% / 10ppm / 0.1W / 76円 / 5~330KΩ
- (1608)RT0603 0.5% / 25ppm / 0.1W / 26円 / 2~1MΩ
- (2012)PLT0805 0.05% / 5ppm / 0.25W / 508円 / 250~260KΩ
- (1608)ERA-3ARB 0.1% / 10ppm / 0.1W / 122円 / 1K~100KΩ
RT0603は値も在庫も比較的豊富で、仕様上では1Ω~1MΩまで存在します。温度係数による音質差がそこまでではないので、通常は25ppmで十分だと思います。
一部に人気のススムの抵抗ですが、それより安くて音の良い抵抗がたくさんあるので買う理由が全くありません。
- リード品:LGMFSA 0.4% / 15ppm / 0.6W / 42円
値段を考えても大きさを考えても音質面でもLGMFSA以外を選択する理由がほとんどありません。抵抗値が10~1MΩまで揃っているのもありがたいです。
抵抗には同じシリーズでも細かい型番で温度特性(音質)が異なるものが存在します。温度特性をよく確認してから購入してください。
- 薄膜チップ抵抗はだいたい音質が良い。
- 薄膜チップ抵抗も同一シリーズならば温度特性が良いほど音質が良い。
- 抵抗値の精度は音質に影響しない。
- リード抵抗のときに微妙だったススムRGとRRは、予想通り大したことない。
- 薄膜チップ抵抗はサイズが小さいほど音が良くなる傾向がある。
何度も書きますが同シリーズでも温度特性が異なる抵抗は音質が全く別物です。聴き比べる際は特に注意してください。とりあえずRT0603をある程度の値で揃えようと思ってます(笑)
抵抗製造ロットで変化したり、聴き比べが不十分な部分もあるかもしれないので、今後も気づいた範囲で記事はアップデートしておきます。追試や検証報告、1005サイズの検証もお待ちしています。