レールスプリッタ入門 ~ 仮想グランドのあれこれ

Ti製TPA3110D2でLCフィルタレスD級アンプの製作

はてブ数 2011/07/17電子::アンプ

※2012/12/28 回路図Ver1.4を掲載。全面的に修正。

※2012/02/07 サポート情報に内容追加


音がいいらしいと評判の TPA3110D2 を使ってD級アンプを製作してみました。

キット委託中です。

回路図と部品表

ゲイン20dB(10倍)。

tpa3110d2-amp.png

Version 1.00の回路図はこちら

部品番号部品備考
U1NJM780913端子レギュレータ9V
U2NJM781213端子レギュレータ12V
U3TPA3110D21D級アンプIC
FB1,3-6電力用フェライトビーズ5MI1206K601R-10。3216サイズ/1.5A/600Ω
FB2フェライトビーズ1MMZ2012R102A。2012サイズ/500mA
L1パワーコイル 100uH/1.4A112RS104C
L2チップコイル 100uH/40mA1GLCR2012T101M-HC
R1100kΩ1カーボン抵抗、チップ抵抗
R2--未実装
R310kΩ1カーボン抵抗、チップ抵抗
R4--未実装
R9220Ω1ノイズ除去用抵抗(何でも)
C1-C4OS-CON SEPC 16V/470uF4固体コンデンサ
C7,C8OS-CON SEPC 16V/100uF2固体コンデンサ
C9-C12PSチップフィルム 0.22uF4ECP-U1C224MA5
C13-C16PPSチップフィルム 2200pF4ECH-U1C222GX5
C21-C24PSチップフィルム 1uF4ECP-U1C105MA5
C31-C37PSチップフィルム 0.1uF7ECP-U1C104MA5
C41-C47PPSチップフィルム 0.01uF7ECH-U1C103GX5
C51-C57PPSチップフィルム 1000pF7ECH-U1C102GX5
C61,C62積セラ 0.01uF/X8R/50V2チップ積セラ
C63,C64積セラ 0.1uF/X8R/25V2チップ積セラ
C5, C6積セラ 1uF/X7R/25V2チップ積セラ
D1-D16ショットキーバリアダイオード1620V以上、1A程度流せるもの
  • フィルタのフェライトビーズ(FB3-FB6)は代替品ではなく必ずこの部品を使用してください。この部品の使用を前提とした回路設計になっています。
  • SBDによって音が変わります。外したり電流の少ないものをつけると歪んだりします。
  • 現回路のアイドル電流 : 55mA

続きを読む

2011/04/20(水)LT3582を使った正負電源ミニDCDCボード

LT3582.jpg

LT3582は2.55V~5.5Vの単電源から正負電源を生成できるICで、出力電圧はプログラミングできます。予め12Vに設定されたICを使って±12VのDCDCコンバータを製作しました。

前作ったやつと基本的には同じですが、基板を起こし直しました。PCM2702-v2 DACのDCDC部分を取り出したような感じですが、多少調整しています。

概要

入力電圧2.55~5.5V
出力電圧±12V
出力直流等価抵抗約5Ω
大きさ縦横 約20.5mm / 厚み 約4.3mm
出力電流50mAぐらいまで / 絶対定格130mA(L3,L4の制限)

このボードは出力にLフィルタが付いているため、直流等価抵抗を持ちます。出力電流に応じて電圧降下が発生します。

回路図と部品表

LT3582.png

番号概要型番
U1DCDC ICLT3582-12
C1,C2積セラ 10uF/16V/X5REMK212BJ106KG-T
C3,C4積セラ 10nF/25/X7R-
C5,C8,C9積セラ 1uF/16V/X7REMK107B7105KA-T
C6,C7積セラ 47uF/16V/X5RC1210C476M4PACTU
D1,D2SBD 30V/2A/0.37V@2ACMS06(TE12L,Q,M)
L1,L2パワーコイル 10uHNR6028T100M
L3,L4チップコイル 100uH/4.5ΩGLCR2012T101M-HC
F1,F2フェライトビーズ 1kRMMZ2012R102A

入力に大きめのコンデンサと出力フィルタつけてある以外、ほぼデータシード通りです。*1

*1 : もっとも、DCDCはボードデザインが命なわけですけど。

定数設定とか

元々C6/C7も10uF、L3/L4に10uHや47uHを使っていたのですが、いざアンプにつないで試聴テストをすると音がガヤガヤするので、47uF/100uHに変更。DC安定度は少し悪くなるのですが、簡単にみた感じでは電池とそんなに変わらないかという感じでした。

いつものヘッドホンアンプを熱暴走しないよう定数変更*2して使いましたが、両チャンネルで50mAぐらい消費して、このとき入力は4V前後で400mAぐらいになります。

実際100mA程度までは動作しないこともないのですが、電池(エネループ)では電流不足のとなるため50mAぐらいが限界の模様。また電流を多め(100mA~)に取ったとき、5Vを超えると動作が不安定になることがあります。入力側のコンデンサを増やすことで改善するかもしれませんが未テストです。

*2 : R9~R12を50Ω

その他

追加情報があれば随時掲載します。委託頒布はこちら

2011/02/21(月)ECPU 0.1uFとECHU 0.1uFとカップリングコンデンサ

某DACのオペアンプを載せ替えて色々遊んでいたのですが、DACの音が向上してきたためTPA1517アンプ(加筆済)で音質比較するのが厳しくなってきました。そこでキット版より音が悪いユニバーサル基板回路をあれこれ改修してたのですが、分かったことを少しまとめておきます。

TPA1517アンプの回路図

tpa1517amp.png

  • C1はMuse FGの2200uF/16Vを使用しています。
  • C5/C6はECPU 1uFです。

フィルムコンの解説

いずれもパナソニック製チップフィルムコンデンサ。

  • ECPU 高性能フィルムコンデンサ。素材はプラスチック(PS)。素材が同じではないけど、音は昔あったスチコン(プラスチックコンデンサの1種)の現代版と思って問題ないかも。
    • ECPU 0.1uF/16V : 2012サイズ。50円ぐらい。
    • ECPU 1uF/16V : 3225サイズ。100円ぐらい。
  • ECHU 超高性能フィルムコンデンサ。どうすごいのかはメーカー解説を参照してもらうとして、感覚としてはECPUよりワンランク上。素材はプラスチックの一種でポリフェニレンサルファイド(PPS)と言うらしい。音で言うとずば抜けた低ひずみ。
    • ECHU 100~2700pF/16V : 1608サイズ。LPFに重宝。50円ぐらい。
    • ECHU 0.1uF/16V : 3225サイズ。100円ぐらい。

パスコンで音が変わるか

C3,C4にECPU 0.1uFでパスコンを打ちました。0.1uFのパスコンは昔から非常によくやられますが、それほど効果があるのか疑問でした。結果明らかに音がよくなりました。

3端子レギュレータ1次側にも10uF/1uF/0.1uFの積セラを入れたのですが、この部分だけ単独で試さなかったため効果は未確認。多少は効果あると思います。*1

*1 : 音がキンキンしてしまうので、2次側に積セラは厳禁。

カップリングコンにパラ挿入

個人的にはカップリングコンを全く使わないのであまり知らなかったのですが、電解コンデンサなどのカップリングコンに「ECPU 0.1uF」などをパラ挿入すると音質が大きく改善します。(電解コンはどうしても高域が苦手/固体コン除く)

ECPU 1uFにも同じことができるという話を耳にし、C5,C6のECPU 1uFと並列にECPU 0.1uFを付けたところ、明らかに音質が改善しました。

ECPU 1uFはフィルムコンデンサでもともと(電解と比較して)高周波特性が優れます。そこに0.1uFを付けて変わるものかと半信半疑でしたが、かなり驚きました。0.1uFがちょうどいいかは分かりませんが、0.01uFでは改善効果は弱くダメでした。

ECHU 0.1uFを使ってみる

ECHUの100pF/330pFはDACのLPFで使用して、知っている小容量フィルムコンの中で一番音質が優れていることは実感していました。容量が大きいとどうなるのか興味が湧いてECHU 0.1uFを購入してたものの何ヶ月も放置されていました。

C5,C6につけてあるECPU 0.1uFのうち、C5だけECHU 0.1uFに交換してみました。音声信号ラインとはいえたった1箇所です。差はハッキリと現れました。音がおとなしく丸くなったような感じです。

正直期待はずれかと思いましたが、さらに念入りに比較していると面白いことが分かってきました。

  • ECHU 0.1uFのほうが音のまざりが少ない
  • ECHU 0.1uFのほうが音の空間上の位置がよく分かる(演奏場所の奥行きまで分かる)

LT1037ACNを使ってる時も感じることなのですが、ボーカルなどの張りが消える傾向があります。だから聴きなれた音と比べると若干違和感があったりするのですが、聴き馴染んでくるとこの音の良さが分かってきました。

まとめ

  • 0.1uFのフィルムコンでパスコンを打つと音がよくなる。
  • カップリングコンにも同じことができる。
  • ECHU 0.1uFの性能は恐ろしい(笑)

こんな話をしたら早速「ECHU 0.1uFはちょっとなあ……。ECPU 0.1uFのほうがいい」というツッコミが来ました(苦笑)

何をもって音が良いとするかは人それぞれですが、このブログでは一貫して

複数の音が混ざらないことを最優先する

ので(苦笑)*2*3

ECHU 0.1uFに変更したときもう1つ感じたことがあって、それは「わずかに音が小さくなった」ということでした。経験則として、ボリュームをいじってないのに音が小さく感じたときは大抵複数の音が混ざらない方向に進んでます(ハイ上がり等で帯域バランスが狂ってない限り)。

ECHU 0.1uFよかったらお試しください(苦笑)。でも入手が面倒*4なので何がなんでも試す必要はないし、そこまでするものでもありません。ECPU 0.1uFで通常は十分すぎます(^^;*5

*2 : 結局のところ、ほとんどの音質劣化の原因は複雑な帯域が織り成す混変調じゃないかと思っている。

*3 : 思うにECHUやLT1037ACNといった部品を活かすにはそれなりの回路が必要で、部品の組み合わせや回路によっては別の選択をしてある程度音作りをしたほうが好まれそう。

*4 : 聞いた話では50V品は若松にあるらしい……。大きすぎる気もするけど。

*5 : そういえば、色々とチューニングをしてるとサイトの方向性とは違うけどこれはすごくウケが良さそうだって音に出会うことが多くて(苦笑)。最近はなるべく「こう変更すると好きな人は多いかも」と書くようにしています。

最新情報 2011/07/28

その後、TPA1517アンプTPA3110D2 D級アンプの比較試聴の為に色々やっていたらもっと良くする方法が見つかりました。

  • ECHU 0.1uF + ECHU 0.01uF + ECHU 0.001uF(=1nF=1000pF)
  • ECPU 0.1uF + ECHU 0.01uF + ECHU 0.001uF(=1nF=1000pF)

ECPU 0.1uFとECHU 0.1uFは単体ではECHUの音が良いですが、更に 0.01u + 0.001u をつけるならどちらでもさほど変わりませんでした。「ECHU 0.1uF」は3225サイズと大きくて邪魔なので後者の組み合わせが使いやすいと思います。

試した場所は以下の2パターンです。

  • 入力カップリングコンデンサ(hot側/cold側)
  • 電源のデカップリングコンデンサ(Vcom等の中点含む)

どちらの場合も、「ECHU/ECPU 0.1uF」「ECHU 0.01uF」「ECHU 0.001uF」のいずれか1つだけ付けた場合も、いずれか1つだけ外した場合も、すべてのケースで聞いて分かる差がありました*6


電解コン(OS-CON)だけで何もついてないところに「ECPU 0.1uF + ECHU 0.01uF + ECHU 0.001uF」をつけるのと、回路や主要部品が変わったかのような劇的な変化を生みます。もっともお値段も3つで100~150円ぐらいしますけど(^^;

今後はこの3つのフィルムコンの組み合わせをベースに色々つくろうと思いました。

*6 : ちなみにECHU 100pFも試しました。差は認められるものの0.1uF~0.001uFの3つに比べると大したことはないという感じです。