2014/10/13(月)D級アンプいじり

Twitterでもちょくちょく書いてますが、最近D級アンプをちょくちょくいじってます。

D級ヘッドホンアンプ

もともとD級ヘッドホンアンプを改良したいとずっと思っていました。D級HPAはいつくか分かってる欠点があります。

  • U1の出力が反転するとき、U1入力で電流を大きく吸い込むため振動してしまう(記事のオシロ波形参照)
  • 2MHzとはいえ発振周波数がそれほど速くないので、オペアンプによって高域がやや歪っぽくなってしまうことがある。

U1の手前にオペアンプバッファを入れることも考えたのですが、それだとますます発振周波数が下がってしまうのが困りもので……。

ふと思い立って電源電圧可変式D級ヘッドホンアンプを作った時に使用した高速コンパレーターICを使ってみたところ、発振周波数が向上して、吸込み電流も少なくなって飛躍的に音質が向上しました。

詳しくは記事にまとめてあるので見てみてください。

純積分形D級アンプ

B.Oさんが検討している回路です。(最新はこちら

最初、改良版を作るときに、純積分形に変更したことをすっかり忘れててずっとこの回路で調整してたのですが、U1、U2を(D級HPAの記事に書いたとおり)変更すると問題がないレベルで音質やスイング特性が向上します。

しかし比べてみると、RC積分形(当方記事の回路)のほうがちょっと音質はいいように感じました。あとは、純積分形の回路はボリュームの抵抗値が入力抵抗となってしまうため、実質ゲインが0dB(1倍)より落ちてしまいました。この辺がちょっと難点ですね。

D級PDMアンプ

元々TPA3110等で使われているフィルタレスD級アンプ(BTLスピーカーアンプ)の原理を調べていて、maximのサイトの解説を読んでたのですが、原理がノコギリ波比較の他励式なんですよね。

他励式D級アンプはいかに直線な基準波(三角波やノコギリ波)を作るかというところが勝負になってしまうので、そうではなくD級ヘッドホンアンプのような自励式D級アンプで同じことができないだろうかと試行錯誤していました。

その時に思いついたのがこれ。

pdm-simulation.png

自励式PWM発振回路のPWM変調部をクロックパルスでサンプリングすることでPDMのような*1動作をさせることができます。

クロックパルスでサンプリングすることでタイミングを揃えることができますから、maximのサイトにあるフィルタレス回路の応用で、XNORを使用してフィルタレスD級アンプ(BTLアンプ)を作ることができそうです。

誰か挑戦してみませんか?

*1 : 「のような」と書いているのは厳密にPDMと等価であることを確認したわけではないという意味です。ほとんど同じようなものになってるとは思いますが。

D級スピーカーアンプ

自励式D級ヘッドホンアンプの原理を応用して、D級スピーカーアンプを作れないかと検討しています。というか、試作基板までは起こしました。こちらは、うまく動いたら記事にします。

スピーカーのように電力増幅を考えると

  • 電圧を上げる必要がある
  • 電流をある程度取れる必要がある

というのがネックで、大型MOSを使用すると貫通電流の問題は避けて通れず、デッドタイム回路を作ると複雑になってしまうし音質も低下する。さてどうしたものかというところで、うまく解決できるかどうか(苦笑)

2012/03/21(水)TPA3110D2アンプでTA2020にリベンジしてきた

思い返すこと昨年夏。自作派ではもっとも有名なD級アンプであろうTA2020アンプのあるところへ、まだ回路調整中だったTPA3110アンプ(D級アンプ)を持ち込みました。そのとき、TPA3110D2アンプは高域の歪み音が顕著に目立って惨敗。

その後、フィルターを何度も何度も調整し、自前フルレンジ(8Ω)だけでなく、マルチウェイスピーカー(Victor SX-300/6Ω)でも確認試聴をしてようやくキットの頒布にこぎつけたわけですが、TA2020との比較試聴はできずじまいでしたので、先日ようやくリベンジマッチをしてきました。

比較条件

TA2020

  • カマデンのキットベース
  • 入力コンデンサはフィルムコン 2.2uF
  • 電源はSBD改造済ACアダプタ
  • アナログ電源は別載せの3端子レギュレータに改造済(参考記事

TPA3110D2アンプは回路図どおりで、おまけに出力ノイズが多くて有名な安価で入手できる秋月15V/1.2A SW電源。

再生装置はいつものDAC

音質とか

TA2020はもう古いチップなのですが、やっぱり聞いてみるとかなりいい音でなっています。優秀です。

負けたらやだなあ……と思ってTPA3110D2アンプに取り替えてみたら、とりあえず負けている感じはなし。全体的にTA2020より明瞭さと定位が改善した感じで軽快に鳴らしていました。

負けてない、多分勝った……というかようやく勝てた(苦笑)

TPA3110D2の良いところ

どうだこのブログのアンプすごいだろう! とはならなかったり(苦笑)


さすがにチップが作られた時代の差がありまして、TPA3110D2は駆動方式が従来のD級アンプとは異なります。新方式のD級アンプは放射ノイズ(EMI)が従来のものより格段に低く(詳しくはTiのサイトを見てください)、出力フィルタにコイルを使う必要がありません。

つまり

  • スピーカーインピーダンスによって出力フィルタを調整する必要がない
  • 元々の放射ノイズが少ないので、フィルタを限界まで強くしなくても音に影響のある高域ノイズを除去できる*1

といった特徴があります。だから、TiのTPA3110がすごいだけなのですけど、それにしてもTA2020も(作られた時代を考えたら)優秀だなと改めて感心しました。

TA2020はアルプスのミニデテント(RK27)で、TPA3110D2はRD1610Gだったというハンデはあったので、どこまでがアンプの差かは分からない部分もありますが(汗)

*1 : できるとは言っても、このためのフィルタ設計・回路設計にものすごく苦労したのですが(苦笑)

蛇足

最近某所で名前をみかけたTPA3122D2は、TPA3110D2より以前に作られた旧方式のD級アンプです。なんで今頃そっちの旧方式チップをプッシュしてるのかよくわからないのですが(苦笑)

SX-300の所有者様もTA2020の所有者様も好みの音だったらしく少し欲しがってました。ちなみにSX-300所有者様はTPA1517の時はあまり欲しがられなかったので少し悔しくもあるのですが(^^*2

*2 : 好みの問題だと思う。

Ti製TPA3110D2でLCフィルタレスD級アンプの製作

はてブ数 2011/07/17電子::アンプ

※2012/12/28 回路図Ver1.4を掲載。全面的に修正。

※2012/02/07 サポート情報に内容追加


音がいいらしいと評判の TPA3110D2 を使ってD級アンプを製作してみました。

キット委託中です。

回路図と部品表

ゲイン20dB(10倍)。

tpa3110d2-amp.png

Version 1.00の回路図はこちら

部品番号部品備考
U1NJM780913端子レギュレータ9V
U2NJM781213端子レギュレータ12V
U3TPA3110D21D級アンプIC
FB1,3-6電力用フェライトビーズ5MI1206K601R-10。3216サイズ/1.5A/600Ω
FB2フェライトビーズ1MMZ2012R102A。2012サイズ/500mA
L1パワーコイル 100uH/1.4A112RS104C
L2チップコイル 100uH/40mA1GLCR2012T101M-HC
R1100kΩ1カーボン抵抗、チップ抵抗
R2--未実装
R310kΩ1カーボン抵抗、チップ抵抗
R4--未実装
R9220Ω1ノイズ除去用抵抗(何でも)
C1-C4OS-CON SEPC 16V/470uF4固体コンデンサ
C7,C8OS-CON SEPC 16V/100uF2固体コンデンサ
C9-C12PSチップフィルム 0.22uF4ECP-U1C224MA5
C13-C16PPSチップフィルム 2200pF4ECH-U1C222GX5
C21-C24PSチップフィルム 1uF4ECP-U1C105MA5
C31-C37PSチップフィルム 0.1uF7ECP-U1C104MA5
C41-C47PPSチップフィルム 0.01uF7ECH-U1C103GX5
C51-C57PPSチップフィルム 1000pF7ECH-U1C102GX5
C61,C62積セラ 0.01uF/X8R/50V2チップ積セラ
C63,C64積セラ 0.1uF/X8R/25V2チップ積セラ
C5, C6積セラ 1uF/X7R/25V2チップ積セラ
D1-D16ショットキーバリアダイオード1620V以上、1A程度流せるもの
  • フィルタのフェライトビーズ(FB3-FB6)は代替品ではなく必ずこの部品を使用してください。この部品の使用を前提とした回路設計になっています。
  • SBDによって音が変わります。外したり電流の少ないものをつけると歪んだりします。
  • 現回路のアイドル電流 : 55mA

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TPA1517 スピーカーアンプの製作

はてブ数 2010/01/07電子::アンプ

※2012/02/07 音質改善に内容追加


このアンプの特徴。

  1. 部品点数が少なく製作が簡単。
  2. 部品コストが安い(2000~3500円/使用する電解コンデンサによる)
  3. アンプICがDIPなので扱い易い。
  4. 単電源仕様。
  5. もちろん音がいい。

キット頒布中です。


目次

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2009/07/03(金)SBD使用 低電圧HPAを作った方へ注意

問題の詳細

この記事で5月から掲載している電池2本版の回路ですが、SBDの種類によって音が変わるという報告を受けて色々検証してみたところ、SBDによっては発振することがある問題が見つかりました。

  • 日本インターの11EQS03Lをつけると発振する。
  • トランジスタ(2SA1015/2SC1815)のランクがYよりGRのほうが発振しやすい。
  • オペアンプによって発振しやすくなる。

SBDがオフの時、数百pF程度のコンデンサとして動作するため回路の位相特性が複雑になり発振しやすくなっているようです*1。以前よりSBDの例としてあげていた1S3や1S4は比較的問題がありませんでした。

*1 : 難しく言うと位相マージンが狭くなっている。

改良した回路

op-dbuf2.png

Zobelの抵抗R7/R8を3.3Ωに引き下げました(以前は10Ω)。日本インターのSBDを使う場合は2.2Ωにしてください。

低電圧版(SBDの付いた方回路)を作られた方はSBDの種類に関わらず3.3Ωか2.2Ωに変更することを強く推奨します。この方が安定度が増すのため音質も有利なはずです。

この変更後、SBDによる音の差はあまり分からなくなりました。

耐容量性負荷

LME49721、トランジスタは2SC1815/2SA1015GRランクにてテスト。

SBDZobel 3.3ΩZobel 2.2Ω
11EQS03L○2200pF / ×3300pF○10000pF
11EQS04○4400pF / ×6600pF○10000pF
1S3○10000pF○10000pF
1N5187○10000pF○10000pF
  • 10000pF(103)より大きな容量ではテストしていません。
  • 矩形波応答などは確認していません。