導体性高分子コンデンサ聴き比べ
電解コンデンサは、OS-CONに狙いを定めてから、もっぱらOS-CONのSEPCばかり使ってきましたけど
「はたしてSEPCってそんなに音いいの?」
という疑問が湧いてきたので検証してみました。
検証
一昔前は固体電解コンデンサと言えばOS-CONしかなかったのですが、現在では導体性高分子コンデンサを各社が開発・製造しています。ですので、他社製品も検証してみようというのが今回の記事です。
- Panasonic SEPC 2.5V 2700uF / 10mΩ / σ:0.1
- ニチコン PLG 2.5V 2700uF / 8mΩ / σ:0.08
- ニチコン PLG 2.5V 3900uF / 8mΩ / σ:0.08
- 日本ケミコン PSC 2.5V 2700uF / 8mΩ / σ:0.1
いずれもほとんど同サイズ(φ10mm×12-13mm)でほぼ同性能の導体性高分子コンデンサの大容量低ESR品(8-10mΩ)になります。新しいD級ヘッドホンアンプの電源用コンデンサとして使用しました。
SEPC
これまで数多くのアンプで使用してきました。元々SANYO製で、SANYOがなくなったあとはパナソニックが製造を引き継いでいます。
OS-CONは元々有機半導体コンデンサについた名称で、現在の固体コンデンサ(導体性高分子コンデンサ)のパイオニアとなった技術です。
SPECは高分子コンデンサの中では、大容量・低ESR品になります。
https://industrial.panasonic.com/jp/products/capacitors/polymer-capacitors/os-con
PLG
刻印が「LG」なのでニチコンLGと呼ばれることが多いようですが、以前はLGというシリーズ名だったようですが、現在の正式名はPLGです。刻印はLGになります。高分子コンデンサの中では、SEPCと同様に大容量品に位置します。
http://www.nichicon.co.jp/products/solid/solid_daia_f.htm
PSC
刻印「C」で型番がAPSCで始まるためAPSCとも呼ばれることがありますが、正式名はPSCです。高分子コンデンサの中では標準品に位置しますが、他社との比較では「大容量品」に相当します。
https://www.chemi-con.co.jp/download/(pdf)
聴き比べ
ソケットを使わず、めずらしくすべてハンダ付けによる検証をしました。*1
PSC >> PLG 3700uF > PLG 2700uF >> SEPC
という具合でした。SEPC音良く無いじゃん!(笑)
PSCやPLGはエージングが進まないと結構酷い音がするのですが、SEPCはその点少し安定している印象でした。
追加検証
大容量品ではなく、小型品(φ6.3~8)でも検証してみました。検証回路は異なるものを使用しています。
- SEPC 6.3V 560uF / 7mΩ
- SEPC 16V 470uF / 10mΩ
- PSF 16V 470uF / 10mΩ
- PSC 6.3V 560uF / 8mΩ
- PSC 16V 470uF / 10mΩ
- L8 6.3V 1000uF / 9mΩ
- S8 6.3V 680uF / 8mΩ
PSFはPSCの低ESR品です。6.3V品が流通していないため、16V品で代用しました。
L8、R8はFPCAPシーリズの1つです。FPCAPは元々富士通が開発・製造していたコンデンサのシリーズですが、現在はニチコンが買い取りニチコンより販売されています。
聴き比べ
PSF 16V > PSC 16V > PSC 6.3V > S8 > L8 > SEPC 16V ≥ SEPC 6.3V
やはりPSCの音質が優れる結果に。そして比べた時のSEPCの音の悪さ(苦笑)
ついでに、HZやMCZなどの高分子ではない従来の低Zコンデンサと比較してみましたが、SEPCより明らかに劣りました。
追加検証2
KEMETのA750というタイプの高分子コンデンサを購入したので、追試してみました。
- PCM2704 DAC Ver2の電源部
- ヘッドホンアンプの信号部*2
いずれもECPU 0.1uF(フィルムコン)が並列に入っています。*3
- KEMET A750 16V 470uF / 13mΩ / A750KS477M1CAAE013
- SEPC 16V 470uF / 10mΩ
- PSF 16V 470uF / 10mΩ
- PSC 16V 470uF / 10mΩ
PSF 16V > A750 16V > PSC 16V > SEPC 16V
A750とPSFは僅差です。好みでも変わってくるかと思います。音はたしかに違うのですが、帯域によって得意不得意があるような感じです。
- 奥行き感や音の綺麗さが良い: PSF 16V
- 低音が良い(多分): A750 16V
注意として、A750 16V 470uFとPSF 16V 470uFはスペックこそ一緒ですが、A750が直径8mm、PSFが直径10mmとPSFの方が大きく、そしてESR低くなっています。固体コンは、同容量同電圧でも「大きさが大きくなるほどESRが低く性能が良くなる(音が良くなる)」ことが多く、このことからA750が不利な比較とも言えます。
追加検証2-2
同サイズ、同容量、同耐圧と条件を揃えて、A750とPSFを比較しました。
- A750 6.3V 820uF / A750EM827M0JAAE008
- PSF 6.3V 820uF / APSF6R3ELL821MF08S
比較結果。
A750 6.3V 820uF > PSF 6.3V 820uF
サイズを揃えてしまえば、A750に軍配が上がるようです。DigikeyやMouserで買いやすいことを考慮すると、これはなかなか良さそうです。
まとめ
- 導体性高分子コンデンサも、種類によって音が違う
- SPECは音質よくない
- 低ESRはだいたい正義
これからはKEMETとPSFをメインで使っていこうかなと思っています。
補足
SEPCの性能が悪いわけではないのでそれだけは誤解しないでください。これは性能テストではなくて音質テストです。性能テストならば、もっと全く別の評価をする必要があります。
また空間再現能力を最重要視してテストしていますが、音質に関する要素は人それぞれ好みがあり、ましてコンデンサはオーデオ的な音色の差が出やすい素子ですので、その点はご理解願います。