- キット各種完売。
- msBerryDAC改造情報
2012/10/28(日)トランジスタ式簡易レギュレーター
3端子レギュレーターで除去しきれない商用電源ノイズ(50Hz/60Hz)を除去するため、トランジスタで簡易レギュレーター回路を製作しました。
ことの発端
以前から書いてるとおり箱まで作りこんでるため、TPA3110D2アンプに少し負けるけどTPA1517 スピーカーアンプの製作を愛着を持って使い込んでいますが、このアンプちょっと気になることがあります。
- 電源はトランス式ACアダプタ(SBD改造済)
- 消費電力がそれなりにあること(100~200mA)
という状況なのですが、電源をonにすると商用電源ノイズ特有のジー音がスピーカーから漏れてしまいます。音を再生してないときにこれが結構気になってしょうがない。
このとき3端子レギュレーター手前をオシロスコープで見てみるとこんな感じです。
10mVppぐらいの100Hzのノイズです。これが原因であることは明らか。*1
トランジスタ式レギュレーター回路
3端子レギュレーターをもう1つ追加すれば良いのですが、電源電圧は固定されていない状況ですし、あまり中途半端に電圧を下げて3端子レギュレーターがドロップ電圧不足で性能を発揮しきれなくなったら元も子もありません。
ですので、100Hz程度のノイズ除去を目的として、電源から一定電圧をドロップさせるレギュレーター回路を作りました。
入力電圧のピークを平滑してC3に充電します。C3の電圧は入力電圧より0.2Vぐらい低い電圧になります。トランジスタQ1はC3の電圧を基準として、そこからVbe(0.7V)低い電圧を出力します。回路全体としては、入力から約1V低い電圧を安定化して出力するようになります。
100mA~最大1Aぐらいの出力を想定した回路です。電流が変わる場合はトランジスタの容量やhFEの選択、R1の値を変更する必要があります。
メモ
LTspiceでシミュレーションした感じでは、大きなコンデンサを載せるスペースがないとき、C1の容量を削るのが一番影響が少なそうです。
部品の選択と製作
最大入力電圧16Vを想定した部品選定です。電圧によってコンデンサの耐圧などを変更してください。
部品番号 | 部品 | 使用部品 | 補足 |
---|---|---|---|
Q1 | 電力用NPNトランジスタ | 2SC4793 | 1A以上流せてPoが高め |
D1 | ショットキーバリアダイオード | - | 100mAぐらい流せれば十分 |
R1 | カーボン抵抗。220Ω | 220Ω 1/4W | 値は適当に。 |
C1,C2 | OS-CON SEPC 16V/470uF | 16SEPC470M | 適当に。 |
C3 | OS-CON SEPC 16V/100uF | 16SEPC100MW | OS-CON等推奨 |
以下、回路図からは省略 | |||
FB1 | 電力用フェライトビーズ | MI1206K601R-10 | 3216サイズ/1.5A |
FB2 | フェライトビーズ | MMZ2012R102A | 2012サイズ/500mA |
L1 | チップコイル 100uH/40mA/4.5Ω | GLCR2012T101M-HC | 2012サイズ |
Cx | PSチップフィルム 0.1uF | ECP-U1C104MA5 | 2012サイズ |
Cy | PPSチップフィルム 0.01uF | ECH-U1C103GX5 | 2012サイズ |
- Q1はコレクタ電流よりも、許容コレクタ損失に注意してください。
- Q1は高周波まで伸びていると高周波までのノイズ除去が期待できます。hFEも高いほうがのぞましいです。
- D1は100mA程度流せれば逆耐圧も、電流量も必要ありません。漏れ電流が少ないものを選択することが望ましいです。
- コンデンサは適当で大丈夫です。ただトランジスタの安定動作のため、1次側(入力側)にはそれなりの高周波性能があるものを使ってください。
回路への部品追加
ついでに高周波ノイズも少し減衰できるよう回路を変更しています。
- FB1は入力直後(C1手前)に入れました。
- FB2、L1はR1と直列に入れました。
- Cx,CyはC1,C3と並列に、トランジスタになるべく近づけて入れました。
結果
製作物は写真のようになりました。厳密にはこれはR1なくてC3と並列に抵抗入ってたりすると途中バージョンですが(苦笑)
電流をたくさん流すときは、Q1のコレクタ損失に注意して必要に応じて放熱板を付けてください。
完成した回路を組み込んで出力電圧を測ったところ以下のようになりました。
商用電源ノイズがまだ少し残っていますが、完全に除去することが目的ではないので今回はこれでokです。
問題のジー音は?
無事、電源onしたときにジー音がしなくなりました。
そして、それどころかアンプ全体の明瞭感が明らかに向上しました。わかってたことですけど、アナログ回路は電源重要ですね。
まとめ
ほとんどCRフィルタの効果なのでSBD(D1)はなくてもいいような気がしますが、気になる人は検証してください。ちなみにD1は入力側電源が負荷によって変動して下がった場合の影響を少なくしたり、商用電源変動のピークホールド的な狙いがあります。*2
結構応用範囲の広い回路なので、レギュレーターまでは用意したくないけど簡単に安定化したいとき等に使ってみると良いかと思います。小信号ならば2SC1815(と小容量コンデンサ)で十分ですし、負電源でもPNPで全く同じようにできます。除去ターゲットとする周波数が高めならばR1の代わりにコイルのみにするとか色々考えられます。
2011/04/20(水)LT3582を使った正負電源ミニDCDCボード
LT3582は2.55V~5.5Vの単電源から正負電源を生成できるICで、出力電圧はプログラミングできます。予め12Vに設定されたICを使って±12VのDCDCコンバータを製作しました。
前作ったやつと基本的には同じですが、基板を起こし直しました。PCM2702-v2 DACのDCDC部分を取り出したような感じですが、多少調整しています。
概要
入力電圧 | 2.55~5.5V |
---|---|
出力電圧 | ±12V |
出力直流等価抵抗 | 約5Ω |
大きさ | 縦横 約20.5mm / 厚み 約4.3mm |
出力電流 | 50mAぐらいまで / 絶対定格130mA(L3,L4の制限) |
このボードは出力にLフィルタが付いているため、直流等価抵抗を持ちます。出力電流に応じて電圧降下が発生します。
回路図と部品表
番号 | 概要 | 型番 |
---|---|---|
U1 | DCDC IC | LT3582-12 |
C1,C2 | 積セラ 10uF/16V/X5R | EMK212BJ106KG-T |
C3,C4 | 積セラ 10nF/25/X7R | - |
C5,C8,C9 | 積セラ 1uF/16V/X7R | EMK107B7105KA-T |
C6,C7 | 積セラ 47uF/16V/X5R | C1210C476M4PACTU |
D1,D2 | SBD 30V/2A/0.37V@2A | CMS06(TE12L,Q,M) |
L1,L2 | パワーコイル 10uH | NR6028T100M |
L3,L4 | チップコイル 100uH/4.5Ω | GLCR2012T101M-HC |
F1,F2 | フェライトビーズ 1kR | MMZ2012R102A |
入力に大きめのコンデンサと出力フィルタつけてある以外、ほぼデータシード通りです。*1
定数設定とか
元々C6/C7も10uF、L3/L4に10uHや47uHを使っていたのですが、いざアンプにつないで試聴テストをすると音がガヤガヤするので、47uF/100uHに変更。DC安定度は少し悪くなるのですが、簡単にみた感じでは電池とそんなに変わらないかという感じでした。
いつものヘッドホンアンプを熱暴走しないよう定数変更*2して使いましたが、両チャンネルで50mAぐらい消費して、このとき入力は4V前後で400mAぐらいになります。
実際100mA程度までは動作しないこともないのですが、電池(エネループ)では電流不足のとなるため50mAぐらいが限界の模様。また電流を多め(100mA~)に取ったとき、5Vを超えると動作が不安定になることがあります。入力側のコンデンサを増やすことで改善するかもしれませんが未テストです。
その他
追加情報があれば随時掲載します。委託頒布はこちら。
2010/06/29(火)LT1308 DCDC昇圧ミニミニボード
LT1308昇圧回路の基板を起こしました。
DIP4×DIP12(10.16mm×30.48mm)のサイズに納めました。写真でわかるとおりかなり小型です。
回路図はデータシートと一緒です。
オーディオ用途に使用する場合は出力にLCフィルタを付けることお推奨します。電流を多めにとるときLCフィルタはDCDCの動作を不安定にします。多めに取らなければフィルタした方が音は良いかも(安定するか含め各自でご判断ください)。
部品表
番号 | サイズ | 概要 | 型番 |
---|---|---|---|
U1 | SOP8 | SW内蔵昇圧DCDC | LT1308BCS8 |
C1,C2 | 3216 | 積セラ 100uF/6.3V/X5R | C1206C107M9PACTU or JMK316BJ107ML-T |
C3 | 1608 | 積セラ 470pF/X7R | - |
L1 | 6×6mm | 10uH/3A/61.1mΩ | NR6045T100M |
D1 | 2.4×4.7mm | SBD 30V/2A/0.37V@2A | CMS06(TE12L,Q,M) |
R1-R3 | 1608 | チップ抵抗 1/16W or 1/10W | - |
出力電圧が16V以上のときのC2は次のどちらか | |||
C2 | 3216 | 積セラ 10uF/16V/X5R | GRM21BR61C106KE15L |
C2 | 3225 | 積セラ 47uF/16V/X5R | C1210C476M4PACTU |
※入力電圧5.5V(絶対定格6.3V)まで(C1による制限)
不安定動作DCDC
当初R3/C3の値をデータシートどおり47k/100pFにしたら1Aぐらい取り出すと部品泣きはするは、出力電圧が安定しないで困りました。
どうもMLCC(積セラ)が低ESRすぎるのか発振気味の動作をしているようです。33uFの標準電解コンデンサをパラに付けると治ったりして、なるほどタンタルってこういうところに使うのかと勉強になった次第。
データシートをよく読むとR3/C3で位相補償しているようなので、値を大きくして時定数を増やたところ安定しました。DCDCはなかなか奥が深い……。
安定化のために
上のように電流を大量に取り出す場合、出力にLCフィルタをつけて取り出す場合、入力電圧が低い場合のそれぞれまたは複合でDCDCの動作が不安定になることがあります。
改善策としては次が考えられます。
- 出力コンデンサ(電解で100uFぐらい)を増やす。積セラがついてるので超低ESR(固体コン)でない低ESR電解が良いかも?
- LCフィルタの場合、効率を犠牲にしLC手前で負荷と並列にRを起き一定量の電流を食わせる。
- C3/R3の時定数を変更する。
LCフィルタをしなくても十分低ノイズですので、ノイズが気になる用途でも1~数Ω程度のRCフィルタで十分な気もします(このモジュールからアンプまでの間に2.2Ω程度の抵抗を直列に入れるだけ)。
実用例
左右にどうして4ピンの穴があるかというと、USBのように電圧が安定しないものを安定化させる狙いがありました。例えばUSB-HDDとかを使うと、瞬間的に1Aぐらい出力するので、USBの給電が少ないマザーボードだと安定しなくなります。
ところが、I/Oの160GB HDD(HDPG-SU160)をつないだらそもそも認識しませんでした。甘くはなかった。USBメモリなら普通に認識するんだけども、USBコントローラー側の渦電流保護にひかかってるのかなあ。
もう一つの狙い。常時5V1Aぐらい出力しないと使用できないとあるポータブルデバイスの充電用。本来はエネループ4本で電圧も電流も十分供給できるのですが、1A吸いとる瞬間に電圧降下が起こるのでうまく動作してくれない。USBポートでも同じく瞬間的に電圧降下するので結構きびしい。
これをDCDCで安定化してやろうという狙いです。こちらはうまく行きました。初期放電が終わると電池が大電流に耐えかねて電圧降下するためあきらめました……。*1
外だと邪魔なので、基板端をニッパで切り取って中に収納しました。
頒布
欲しい人いますか?
5Vか12Vで設定して委託でだそうと思うんですが、興味ある人どれくらいいますか。それによって製造数(家内制手工業(苦笑))を考えようかなと。
ビスパさんに委託しました >5V版(廃版), 12V版, 任意電圧版
原価考えずに性能と大きさ(小ささ)だけで部品選んだので高めですが(汗)
在庫以上*2に必要な場合はビスパさんかこちらにメールで連絡ください。質問があればコメント欄へ。
2010/05/01(土)2.4V→12V LT1308 ヘッドホンアンプ用昇圧回路
単3電池2本(特にニッケル水素)から12Vの電圧を得たいと要望があったので、色々無理はあるのですがLT1308でDCDCを作りました。
回路図
2010/07/09回路図、解説を更新
出力電圧 = 1.22V + R1/R2*1.22V
部品表
部品番号 | 部品 | 解説 |
---|---|---|
U1 | LT1308B | 昇圧DCDCコンバータ。 |
L1 | パワーコイル。10uH | 2Aぐらい流せるもの。 |
L2 | パワーコイル。47uH | 2Aぐらい流せるもの。 |
D1 | SBD。耐圧20V以上。 | SBDならなんでも。 |
C1,C3,C5 | 16V以上100uF電解コンデンサ | 低ESR推奨。 |
C2,C4 | 積セラ10uF | ICになるべく近づけて実装 |
C6 | 積セラ1uF | フィルムコンでも可 |
C6 | フィルムコンデンサ1uF | 省略しても良い。積セラ不可。 |
C7 | 積セラ100pF | - |
R1,R2 | 適時 | - |
R3 | 100kΩ | - |
解説
- 出力電圧は13.2V程度に設定されています。
- コイルはパワーコイルを使用し、直列抵抗値の低いものを選んでください。よくわからなければ1~2A流せるものを選べば良いと思います。
- L2は47~220uH程度で適当で構いません。あまり低いとノイズが除去しきれません。
- C2,C4はなるべくICに近づけて実装。特にC2。
入力側パスコンがとても重要です。できれば、C2に100uF/6.3V/X5Rなどのチップ積セラ(MLCC)を使用してください(100uFを付けるならC1は要らないでしょう)。もしくはC1にOS-CONを使用してICに近づける等。
この辺の配線処理が甘いと出力電圧が安定しませんし出力ノイズも増えます。SOP→DIP変換とか使うべきじゃないし、ICソケットなんてもっての他です。
LT1308とLT1308B
LT1308Bを入手できたので、比較してみました。
DCDC2次側のスイッチングノイズ。
LT1308 | LT1308B |
---|---|
連続スイッチ(バーストモード動作)をするBは綺麗な繰り返し波形になっていますが、LT1308/LT1308Aは電圧の様子をみながらスイッチするためノイズ波形が複雑になっています。上記回路図のとおりきちんとLCフィルタしてるにもかかわらず、聴覚上はっきりとLT1308Bの方がよくなりました。
オーディオ用途にはバーストモードにすべしということが聴覚上確認できてました。予想どおりの結果です。