ボリュームの聴き比べ

はてブ数 2009/05/21電子::オーディオ
volume_sounde-test.jpg

右から、アルプス電気RK09L(4)、RK27(3)、マルツRD925G(2)、R1610G(1)です。聞き比べのリファレンスとしては東京光音2CP601を使用しました。

東京光音2CP601

もはや言わずと知れた高音質なボリューム。CP2500とかに比べるとエントリーモデルのようにも取れますが、抵抗板に導電性プラスティックを使用したボリューム。ハンダ付けで熱をかけすぎてはダメだったり扱いが厄介な面はあるものの、濁りのないクリアな音質。

今回のリファレンス(基準)です。元々以前のコミケで視聴した方に教えていただいたもの。昔は1890円でいくつか買いこみましたが、値上がりして2500円になってからは買ってません。

アルプス電気RK09L

アルプス電気のミニボリューム。日本製品では比較的よく使われるボリュームです。

秋月や千石で100円ぐらいで売られている可変抵抗よりマシな音だと思いますが、結構がやがやして抵抗独特の音質劣化が感じられます。

アルプス電気RK27

アルプス電気の定番なボリューム。通称ミニデテント。800~900円。

比べなければかなり優秀な音ですが、2CP601と比べるとややガヤ付きます。抵抗独特の歪みがあり、比べてしまうと「うーん」。でも優秀なのはたしかで、値段も安価なことから自作派の定番品となっています。

マルツRD925G

マルツオリジナルの2連ボリューム。1個210円。なぜマルツオリジナル(?)かと言うと、Linkmanというメーカーで調べてたどり着く会社がマルツとほぼ一緒のようなので*1

9mm幅でRK09Lとほとんど同じサイズ。どうせ安物……と思ったのですが、聴いてびっくり。2CP601とほぼ同じ音質。ええっ!? と思ってよくよくボリュームの軸を動かして見るとなめらか。カーボン抵抗独特のガリガリが無いのでカーボン抵抗じゃないのかも知れない。

今度余分を購入したら分解してみます。

*1 : しかも、Linkmanに登録するとPDF参照時にマルツの通販サイトに飛ばされるという(笑)

マルツR1610G

秋月や千石で売っている安物ボリュームとほとんど同じ見た目の157円。抵抗板はおそらくRD925Gと同じ素材。

これまたびっくりの音質で2CP601とほぼ同じか、2CP601より若干いいんじゃないかって感じの音がします。これ絶対見た目で損してるなあ。売り方も、音質とか精度とか色々書けばいいのに(笑)

まとめ

音質で並べると、次のような印象です。図中「≒」とは書きましたが、左側の方が若干音質が良いように感じます。

R1610G > RD925G ≒ 2CP601 >> RK27 >>> RK09L

マルツオリジナルの2品に関しては、この値段でこの音質を出されるとショックですね。今後、高い2CP601を買わなくて済みそうなので、嬉しいといえば嬉しいのですが(苦笑)

メモ

  • 「マルツR1610G」と「Bispa R1610G」はほぼ同じ音質です。
  • 「マルツRD925G」と「Bispa RD925G / BSP92FG5(FG付)」はほぼ同じ音質です。

キットではBispa製ボリュームを使用しています。

分解してみた 2009/05/29

vr-dis.jpg

左がR1610G、右が安物ボリューム。外見が同じだけあって、どちらもよく似た構造。試しに抵抗板だけ交換して聞いてみたところ、やっぱり音質の要は抵抗板にある模様です。左の方が綺麗に塗られてはいますが、材質も似たように見えますし、そんなに変わるものかと不思議に思いますね。

2009/05/20(水)低電圧ヘッドホンアンプの問題解決

低電圧ヘッドホンアンプの最大の弱点は、低電圧動作時(±1.25V/エネループ2本駆動)における電圧出力範囲の狭さにありました。

問題の詳細

op-dbuf_p1.png

使用するオペアンプは、Rail to Rail(レイル・ツー・レイル)と呼ばれる電源電圧付近まで出力できるタイプのオペアンプです。

その後段にあるバッファはいわゆるダイアモンドバッファです。バイポーラトランジスタ特有の超低インピーダンス出力が可能な一方、バイポーラトランジスタでは避けて通れないVbe電圧0.6Vが失われ、出力電圧範囲はおよそ±0.6Vになります。

低インピーダンスヘッドホン使用時は±0.6Vで十分であったものが、50Ω~上のヘッドホンなどでは±0.6Vでは音量不足となることがあります*1

*1 : 例えばAKG Kx71などでは、普通聴く音量では十分ですが、大き目の音量でききたいと思うとクリップ歪みを感じてしまいます

出力ミックス

ここでPと書かれた部分を何らかの方法で接続し、Aという出力経路のほかに、Bの出力経路も使用可能にすれば、オペアンプ出力範囲である±1.2Vの出力を得ることができます。

この接続方法が問題です。

  • 0Ω(ジャンパ)では、オペアンプから負荷を駆動する役割が大きく低音のしまりが悪くなります。
  • 1Ωでは、低音のしまりはそこそこ確保できますが切断時ほど明瞭ではありません。また1Ω出力抵抗による音質劣化が少し気になります。
  • 10Ωでは、低音のしまりは問題なく確保できますが、10Ω出力抵抗による音質劣化が大きく気になります。

抵抗を介さずに接続すると明瞭感や音のしまりが悪くなり、抵抗を介して接続すると抵抗による音質劣化が気になります。またあまり抵抗値を大きくすると、1.2Vの駆動範囲がどんどん狭くなります。

低インピーダンスヘッドホンしか使わないのならばPは切断したほうが音がいいし、中~高インピーダンスヘッドホンしか使わないのならばPは接続してしまっても音質的にほとんど変わりません。

しかして人間とは欲深いもので。どちらのヘッドホンでもベストの音質を得たいと思うのは自然なことです。

解決編

そもそも、出力電圧が±0.6Vの範囲ならばBルートで電流が通らないほうがいいので抵抗を使うことがナンセンスです。これが半年以上もジレンマだったのですが、うまい解決策を見つけました。

op-dbuf_p2.png

D1/D2にように互いに逆方向に並列接続したショットキーバリアダイオードを接続するだけ(シリコンダイオード不可)。SBDの順方向電圧があるので±1.2Vとは行きませんが±1.0V程度の出力範囲を得ることができました。これならば、バッファの出力範囲内のときはBルートには電流は流れないので、音質の劣化も心配ありません。

感想とか

低電圧(±1.2V)はもうやり尽した感じです。

正直飽きた(笑)

電圧が限られると回路上の工夫も限られますので、これ以上はもう無理だろうって感想です。次期HPAがあるとすれば低電圧動作で高gmなMOS-FETが登場したときか、D級アンプとかでしょうか。*2

次アンプ作るとしたらスピーカーアンプ作りたいですね。もっとも、ほとんど同じ回路でもスピーカ鳴っちゃうんだけど(笑)

フィルムコンの音質 試聴メモ

はてブ数 2009/05/07電子::オーディオ

フィルムコンの試聴をしつつ、昔試聴した資料を探したのですが見つからない。どうやら簡単に書いただけでまとめてなかった模様。自分で不便なので、ここにまとめておきます。

注意:今回は小容量コンデンサを対象としているため、多数存在するメタライズドフィルムコンデンサは敢えて除外してあります。

フィルムコンあれこれ

フィルムコンデンサは、誘電体の材質によって大きくグループ分けすることができます。一番安価なフィルムコンはポリエステル(マイラ)コンデンサですが温度特性などが悪く、音響用回路には一般にPPコンデンサが好まれます。しかしながらPPはそこまで音がよくありません。PPよりもPPSやスチコンの方が音質的に優れています。

ポリエステル(マイラ) < ポリプロピレン(PP) < スチコン, PPS

小容量フィルムコン、音質聞き比べ

100pFのコンデンサを使いLPF(10k+10kの2倍増幅)でとても簡単に(若干手抜きで)確認しました。

filmcon-listen.jpg

およそ音が悪い順にならんでいますが、線で区切られない部分の差は微妙です。

1.ニッセイAMZ / ポリエステル / 千石で10円

自作ではよく使われるフィルムコンデンサ。音質はゆがみ感があります。明らかにPPなどの他のコンデンサに劣ります。

2.WIMA FKP2 / ポリプロピレン / 100円前後

WIMAのポリプロピレンコンデンサ。WIMAは音響マニアに定評がありますが、これについては声のかすれがあり、何より低音のボン付き(もわもわ)が気になります。使えないです。

3.双信電機 DM10C / マイカコンデンサ / 千石で240円

こいつだけ仲間はずれでマイカ(雲母)コンデンサです。かすれ感はありますが、ボン付きがないのでFKP2よりマシです。

4.WIMA MKP / 箔巻ポリプロピレン / 100円前後

WIMAの音響用というとこっちのような気がします。確かに悪くはないのですが、上位と比べると歪み(かすれ)っぽさがあります。

5.Panasonic ECQP / 箔巻ポリプロピレン / 30円前後

大昔からメーカー製音響回路で使用される定番品です。Panasonicはチップに移行したため今はディスコン。歪みの比較的少ない定評のある音質ですが特別よくもありません。WIMA MKPとは大差ありません。

LPFやパスコンで使用すると低音が良く出るので、それが好んで使われることもあります。(ECQPの低音を好まない人も居ます)

6.ニッセイ APS / ポリプロピレン / 千石で30円

ニッセイのポリプロピレンコンデンサ。安い割に歪みの比較的少ない音です。個人的には定番のPanasonic ECQPより良いと思います。それでも7/8よりは劣り、かすれ(歪み)を感じます。

7.アムトランス AMCE / 箔巻ポリプロピレン / 若松で220円

マイナーですが音響用部品を作っているアムトランスのフィルムコンデンサ。アムトランスの音響用抵抗はがっかりでしたが、こちらは結構まともな音質。クリアな音です。次のKP1830より若干劣るかなと思いますが、こちらの方がメリハリがあるので好みによると思います。

※写真のAMCEシリーズは廃番のようです。後継と思われるAMCHの販売はここ

8.ERO KP1830? / ポリプロピレン / 若松で105円

知る人ぞ知るKP1830EVOX RIFA PEFではないかという指摘がありました。若松でKP1830として売られていたものを買っただけなのですが(コメント欄参照)。ある筋から、OEM品で実質同じものではという指摘もありました。

非常にクリアで歪みのほとんどない音です。派手さがなく「なめらかな音」という印象でメリハリ重視の人にはあまり好まれないかもしれませんが、いい音です。PPコンデンサでは一番良いと思っています。

関係ないけど、EROのMKT1826の音も聞いてみたいです。

9.サンリング電子 / 銅箔スチロールコンデンサ / 海神無線で100円

下手をするとハンダ付けの温度にも耐えられないため大昔に製造中止となり今はほとんど流通していない幻になりつつあるコンデンサ。プラスチックの一種のあのスチロール樹脂が原料。

ゆがみ感が全くなくコンデンサでは最強。でも入手性とても悪い。海神ぐらいかも(100pは品切れ)。製造元で数少ない在庫を通販してます

おすすめは ECHU/ECPU

スチコンがいいのですが入手難。音響用部品は音質的に優れたものが次々ディスコンになる不遇の世界です。

でもフィルムコンデンサではいいものがあって、チップコンになりますがPanasonic ECHU(PPSコン)がスチコン以上に歪みのないとても優れたコンデンサです。Digkeyになりますが10個600円ぐらいで手に入ります。大きめの容量ならPanasonic ECPU(プラスチックコン)がおすすめ。スチコンと同じようなプラチック製なので同等ぐらいと思われますが、小型のため多少特性は良さそう。熱に弱いのでハンダ付けに注意してください。

そこまで拘らないなら、ニッセイAPSを使っておくのが値段・入手性・音質の面からオススメです。音質に拘るならECHUという使い分けがいいと思います。

2009/04/20(月)レールスプリット簡易検証

2V~動作可能なレールスプリット回路。よくカレントミラーが使われるけど、ほんとにいいのかと疑問に思って簡単に検証。

rail_split_circuit.png

組むのが面倒だったのでLTSpice。よって正確じゃないけど目安程度にはなるかなと。シミュレーション結果がこれ。

rail_split_sim.png

カレントミラー(赤色)とダイアモンドバッファ(緑色)の比較。一応ダイアモンドバッファの方がいいらしいけど、圧倒的でもない。どっちもアイドル電流を変えると改善します。

カレントミラーは電圧バランス崩れを定電流充電するという感じだと思いますが、電流性出力だからインピーダンスは低くないようで。一方低出力インピーダンスの定番ダイアモンドバッファも、入出力電圧の差が小さいときには出力インピーダンスが大きくなる(バイアス電流による)ので、これまた万能とはいえず。

こう見るとレールスプリットはオペアンプと組み合わせた方が性能が飛躍的にあがりますが、今度はレールスプリット回路安定性が微妙に。LT1498とかだとかなり安定ですけど。

備考

掲載回路のダイアモンドバッファはそのまま使いませんように。電圧をあげていくと熱損失でトランジスタが壊れたり抵抗が発火する危険があります

追記 2009/05/04

Q5~Q8のカレントミラーですが、R6/R7を1kΩにすると12Vが限界でした。15VかけるとQ6/Q7が熱暴走します(普通の電源ならばそのままトランジスタが焼け死にます)。熱結合すれば解消されますが、微妙ですね。

Q6/Q7のコレクタ側に10mA程度のCRDを付けて補償することもできますが、応答性がCRDで頭打ちされるため電源としての性能は明らかに劣化するようです。オシロで音楽再生時に観測すると倍(6dB)ぐらい違います。

2009/03/03(火)紹介

時間が取れないのですが、低電圧ヘッドホンアンプのバッファ部をもっと良くできそうなアイデアを出されている方が居ます。

どっちか試したい、試したいけど暇がない(苦笑)