2009/05/29(金)ビデオデッキ HR-X5 の修理

はじめに

現役で活躍中のVictorのビデオデッキHR-X5。このビデオデッキ、ヘッドを破壊して2万円で部品を取り寄せたり結構散々な目にあっているのですが、夏場気温が高くなると画面がまともに映らない不具合がありました。これさえなければ、画質はむちゃくちゃ綺麗でよかったのですが……。

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電解コンデンサを交換してOS-CON大量投入しても直らず、ほとほと困っていました。夏を前に、今年こそ本気で直そうと思い立ちました。

原因を考える

気温があがるとまともに動かないということから、ICの故障だと思っていました。基本的に電解コンデンサは「気温が高くなるほうが性能が良くなる」からです。

しかし、蓋を開けると見る見る直る症状からして、内部が相当に高温(60~80度)なっているのではないかと考えました。よくよく考えると温度特性の悪い積層セラミックコンデンサは温度があがると急激に容量が下がります。特に、この時代(1996年)のチップ積層セラミックは温度特性が良いとは思えません。

問題は蓋を開けてしまうとすぐに症状が直ってしまうことで、原因の特定が非常に難しい。そこで、ドライヤーで熱風を送り、どこの場所の温度が症状と関連しているのか調べたところ、ヘッド後部のプリアンプユニット(変調ユニット?)の中央付近を熱するとこの症状が現れることが分かりました。

hr-x5_01.jpg

修理

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プリアンプユニットを外しドライヤーを当てた場所から電解コンと並列になっている電源ラインを外して考えると、めぼしい積層コンデンサが2つみつかりました。C8/C9です。

外してみたところ22~47pF程度だったようなので、47pFを取り付けました。ドライヤーを当てたみたところ症状が起こりません。どうやら修理成功のようです。

両方同時に外してしまったため確認はできていませんが、その後色々試した範囲ではC9が原因だったようです。再発したので、違う場所みたいです。

失敗談

このユニットを戻すときに、ネジを1つ筐体内に落としてしまいました。これが運の尽き(汗)

振っても何しても出てきません。ネジ紛失ぐらい構わないのですが、ネジでショートすると折角直ったものに致命傷を与えてしまいます。仕方がないので、ばらばらに分解。その結果、

  • フラットケーブル破損
  • テープ走行不良

致命傷に近い状況。その後も1ヶ所直すごとに別のところが壊れて散々でした。

  • 再生途中で止まり電源off → テープ右側の巻き取り下部のロータリーエンコーダーが正しく認識できていないか、そもそも巻き取りができてない。
  • 巻き戻し中で止まり電源off → テープ右側の下部のロータリーエンコーダが正しく検出してない。基板が反っていたため、基板裏側からクッションをつめてエンコーダの高さを調整。
  • Hi-Fi音声を再生できるのに録音できない → ヘッドの汚れ。修理中に相当汚したらしく、クリーニングテープでは直らずアルコール系の洗浄剤*1を使い直接清掃(ヘッドを破壊する可能性があり危険です。面倒でもクリーニングテープをしつこく走行させるべき。)。
  • 画面全体にノイズが出る、いわゆるめだかノイズ。プリアンプユニットのGND線をきちんとアースする。
  • テープの飲み込みがおかしい → 機械部の位相ずれ。ギアを分解し、きちんとゼロ位置を合わせて組み立てる。無理やり一部のみ位置を切り替えるとうまく行かない。
  • ビデオヘッドが回らない → CP401の半導体ヒューズが飛んでいる。ポリスイッチあたりに置き換えると良い。
  • フラットケーブルの故障 → 白いフラットケーブルは抜き差しをよほど慎重にしないとすぐ壊れる。同じ系統のビデオデッキから部品を取るか、ビクターサービスセンターで部品を取り寄せるか、さもなければ半田付けして無理やり直せなくもない(汗)*2

というわけでネジ1個落として修理に○日。おかげで、ビデオデッキの構造と仕組みに強くなりましたが*3、今更使えないって。

*1 : というか適当なのがなくて接点復活剤

*2 : 3~4本ぐらいその状態で、二度と外したくない……

*3 : 途中でテープにFM変調かけてぜんぜん関係ない信号でも記録しようかとか色々考えたけども。にしてもテープローディングの仕組みは、VHS登場当初から変わってないんだろうけどよく出来てるなあ。

Victorの対応について 2019/05/15

2019年5月現在も修理は受け付けているようです。

Victorは昔から顧客対応がとても良く、個人でも修理部品を注文することが可能でした。今はどうかわかりません。

昔は、部品注文の際に間違えが無いようにサービスマニュアル閲覧することもできたのですが、サービスマニュアルだけ見せてほしいとお願いしたら見せてくれなかったという情報をいただきましたので、ここに公開しておきます。

部品を頼むときなら大丈夫なのか、方針が変わったのか、昔見れたのがたまたまただっだのかは不明です。

ボリュームの聴き比べ

はてブ数 2009/05/21電子::オーディオ
volume_sounde-test.jpg

右から、アルプス電気RK09L(4)、RK27(3)、マルツRD925G(2)、R1610G(1)です。聞き比べのリファレンスとしては東京光音2CP601を使用しました。

東京光音2CP601

もはや言わずと知れた高音質なボリューム。CP2500とかに比べるとエントリーモデルのようにも取れますが、抵抗板に導電性プラスティックを使用したボリューム。ハンダ付けで熱をかけすぎてはダメだったり扱いが厄介な面はあるものの、濁りのないクリアな音質。

今回のリファレンス(基準)です。元々以前のコミケで視聴した方に教えていただいたもの。昔は1890円でいくつか買いこみましたが、値上がりして2500円になってからは買ってません。

アルプス電気RK09L

アルプス電気のミニボリューム。日本製品では比較的よく使われるボリュームです。

秋月や千石で100円ぐらいで売られている可変抵抗よりマシな音だと思いますが、結構がやがやして抵抗独特の音質劣化が感じられます。

アルプス電気RK27

アルプス電気の定番なボリューム。通称ミニデテント。800~900円。

比べなければかなり優秀な音ですが、2CP601と比べるとややガヤ付きます。抵抗独特の歪みがあり、比べてしまうと「うーん」。でも優秀なのはたしかで、値段も安価なことから自作派の定番品となっています。

マルツRD925G

マルツオリジナルの2連ボリューム。1個210円。なぜマルツオリジナル(?)かと言うと、Linkmanというメーカーで調べてたどり着く会社がマルツとほぼ一緒のようなので*1

9mm幅でRK09Lとほとんど同じサイズ。どうせ安物……と思ったのですが、聴いてびっくり。2CP601とほぼ同じ音質。ええっ!? と思ってよくよくボリュームの軸を動かして見るとなめらか。カーボン抵抗独特のガリガリが無いのでカーボン抵抗じゃないのかも知れない。

今度余分を購入したら分解してみます。

*1 : しかも、Linkmanに登録するとPDF参照時にマルツの通販サイトに飛ばされるという(笑)

マルツR1610G

秋月や千石で売っている安物ボリュームとほとんど同じ見た目の157円。抵抗板はおそらくRD925Gと同じ素材。

これまたびっくりの音質で2CP601とほぼ同じか、2CP601より若干いいんじゃないかって感じの音がします。これ絶対見た目で損してるなあ。売り方も、音質とか精度とか色々書けばいいのに(笑)

まとめ

音質で並べると、次のような印象です。図中「≒」とは書きましたが、左側の方が若干音質が良いように感じます。

R1610G > RD925G ≒ 2CP601 >> RK27 >>> RK09L

マルツオリジナルの2品に関しては、この値段でこの音質を出されるとショックですね。今後、高い2CP601を買わなくて済みそうなので、嬉しいといえば嬉しいのですが(苦笑)

メモ

  • 「マルツR1610G」と「Bispa R1610G」はほぼ同じ音質です。
  • 「マルツRD925G」と「Bispa RD925G / BSP92FG5(FG付)」はほぼ同じ音質です。

キットではBispa製ボリュームを使用しています。

分解してみた 2009/05/29

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左がR1610G、右が安物ボリューム。外見が同じだけあって、どちらもよく似た構造。試しに抵抗板だけ交換して聞いてみたところ、やっぱり音質の要は抵抗板にある模様です。左の方が綺麗に塗られてはいますが、材質も似たように見えますし、そんなに変わるものかと不思議に思いますね。

2009/05/20(水)低電圧ヘッドホンアンプの問題解決

低電圧ヘッドホンアンプの最大の弱点は、低電圧動作時(±1.25V/エネループ2本駆動)における電圧出力範囲の狭さにありました。

問題の詳細

op-dbuf_p1.png

使用するオペアンプは、Rail to Rail(レイル・ツー・レイル)と呼ばれる電源電圧付近まで出力できるタイプのオペアンプです。

その後段にあるバッファはいわゆるダイアモンドバッファです。バイポーラトランジスタ特有の超低インピーダンス出力が可能な一方、バイポーラトランジスタでは避けて通れないVbe電圧0.6Vが失われ、出力電圧範囲はおよそ±0.6Vになります。

低インピーダンスヘッドホン使用時は±0.6Vで十分であったものが、50Ω~上のヘッドホンなどでは±0.6Vでは音量不足となることがあります*1

*1 : 例えばAKG Kx71などでは、普通聴く音量では十分ですが、大き目の音量でききたいと思うとクリップ歪みを感じてしまいます

出力ミックス

ここでPと書かれた部分を何らかの方法で接続し、Aという出力経路のほかに、Bの出力経路も使用可能にすれば、オペアンプ出力範囲である±1.2Vの出力を得ることができます。

この接続方法が問題です。

  • 0Ω(ジャンパ)では、オペアンプから負荷を駆動する役割が大きく低音のしまりが悪くなります。
  • 1Ωでは、低音のしまりはそこそこ確保できますが切断時ほど明瞭ではありません。また1Ω出力抵抗による音質劣化が少し気になります。
  • 10Ωでは、低音のしまりは問題なく確保できますが、10Ω出力抵抗による音質劣化が大きく気になります。

抵抗を介さずに接続すると明瞭感や音のしまりが悪くなり、抵抗を介して接続すると抵抗による音質劣化が気になります。またあまり抵抗値を大きくすると、1.2Vの駆動範囲がどんどん狭くなります。

低インピーダンスヘッドホンしか使わないのならばPは切断したほうが音がいいし、中~高インピーダンスヘッドホンしか使わないのならばPは接続してしまっても音質的にほとんど変わりません。

しかして人間とは欲深いもので。どちらのヘッドホンでもベストの音質を得たいと思うのは自然なことです。

解決編

そもそも、出力電圧が±0.6Vの範囲ならばBルートで電流が通らないほうがいいので抵抗を使うことがナンセンスです。これが半年以上もジレンマだったのですが、うまい解決策を見つけました。

op-dbuf_p2.png

D1/D2にように互いに逆方向に並列接続したショットキーバリアダイオードを接続するだけ(シリコンダイオード不可)。SBDの順方向電圧があるので±1.2Vとは行きませんが±1.0V程度の出力範囲を得ることができました。これならば、バッファの出力範囲内のときはBルートには電流は流れないので、音質の劣化も心配ありません。

感想とか

低電圧(±1.2V)はもうやり尽した感じです。

正直飽きた(笑)

電圧が限られると回路上の工夫も限られますので、これ以上はもう無理だろうって感想です。次期HPAがあるとすれば低電圧動作で高gmなMOS-FETが登場したときか、D級アンプとかでしょうか。*2

次アンプ作るとしたらスピーカーアンプ作りたいですね。もっとも、ほとんど同じ回路でもスピーカ鳴っちゃうんだけど(笑)

2009/05/18(月)「使えない」で検索すると…

東芝製HDDレコーダーのXDE機能がすばらしく使えないので、きっと同じことを思っている人が居るはずだと「XDE 使えない」で検索してたらGoogleの勧める検索語候補に笑った。

tukaenai.png

…………

お察しします(汗)


でも「ソニー損保 使えない*1ってのがいい味出してるなー。中身読んでみると、この検索語には深い経緯があるようですが、これだけ見るとイメージ悪いよね。

2009/05/13(水)しくじった……

この前基板発注するついでに、SSOP(0.65)→DIP変換を作りました。片面はSSOP、もう片面はSOPになっている両対応な奴です。LME49726とかだんだんとSSOPなオペアンプが増えてきましたから。

そうしたら、

sop2dip.jpg

接続されてないという明らかなミス。もちろん念入りに見直したのでSSOP(0.65)→DIP変換としては問題なく使用できるのですが、なまじ慣れてるのでチェックを油断したSOP(1.27)→DIP変換としては使用できないという。油断大敵とはこのことですね。

プリント基板作成で致命的ミスをしたのは今回が初めてですが、今度から気をつけようと心に誓いました。

さて困ったことに、どういうわけか数はとても書けないぐらい大量あります(笑)*1 今後何かにつけてプレゼント処分されるかも知れません(苦笑)

*1 : SSOP→DIPとしては使用できるから良いんですけどね。

その他

HDDレコーダの記事更新。東芝販売員さんに色々聞いてきました。とってもいい人だった。

2027AMと書かれたこのシングルオペアンプが何なのか分からなくなってしまいました(汗)。どなたか分かりませんか?

2072am.jpg

TLE2027と分かりました。ありがとうございました。