超高音質ヘッドホンアンプの製作 - SakuraAMP White/op-ebuf

はてブ数 2026/07/08電子::HPA

これまでの研究の集大成として、待望の新作ヘッドホンアンプ「SakuraAMP White」を設計・製作しました。

以下、技術的な解説になります。一般向けの紹介や購入はBOOTHのページを見てね。

SakuraAMP-w_30.jpg

開発の経緯

このアンプの雛形は2個目のD級HPAの発表後くらいにはありました。開発コードはop-ebuf。長らくHPA(ヘッドホンアンプ)を発表しない間も、研究自体は続けていた感じです。通常、回路Versionは完成形だなと思った時点で「Ver.1.00」としているのですが、手元にある基板を見ると2022年に「op-ebuf Ver.1.00」の基板が製作されています。*1

それなのに今まで一切発表していませんでした。その理由のひとつがD級ヘッドホンアンプ Ver.2.3のほうが音が良かったからです。D級HPAのノイズ対策や動作安定化に成功したのは去年のことですが、それ以前からD級HPAの音質ポテンシャルは高かったのです。

去年完成したD級HPAですが、ある意味「D級の究極とも言える形」になってしまったので、これ以上を目指すのならD級は無理だと悟りました。それを踏まえて、アナログ(AB級)回帰としてop-ebuf回路の改良に本格着手しました。そうして出来上がったのが、今回のヘッドホンアンプになります。

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2026/05/18(月)電子ボリュームの耐圧問題。低電圧で使用するときの注意点

デジタルポテンショメーターや電子ボリュームの基本から耐圧問題について。外付けのミュート回路がなぜ必要なのかについてまとめました。特に低電圧で使用するときは色々大変です。

プチバズした、違法建築基板で何をやっていたのかの解説にもなっています。

なぜデジタルポテンショメーターを使用するのか

デジタルポテンショメーター(電子ボリュームを含む)は、シリコン抵抗*1で構成されたボリュームであり、原理上は抵抗アッテネーターと同一です。シリコン抵抗は経験上音質が良いので、(オペアンプ非内蔵品を)ちゃんと使えば*2一般的なアナログボリュームよりとても音質が優れています。

アナログボリュームによる音質劣化はその影響の大きさからよく知られていますが、電子ボリュームはその問題を避ける有効な手段です。

他の方法、例えば抵抗分圧によるゲイン切替だけのアンプ等も市販されていますが、「音は良くても使いにくくない?」と個人的には感じてしまいます。

*1 : シリコン抵抗自体の性能は、シリコン薄膜抵抗なら35ppm、ポリシリコン抵抗なら600ppmです。アナデバの解説記事を読む限り、スイッチ抵抗の影響が大きいそうなので、35ppmより大きく300ppmより小さいものは抵抗自体は薄膜みたいですね。

*2 : ちゃんとの定義が難しいですが、電源がDCDC昇圧等をそのまま使ってるときは大部ダメかなという印象です。

電子ボリュームと一般的なデジタルポテンショメーターの比較

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D級ヘッドホンアンプ Ver.2.3 / 超高速28MHz発振

2025/06/15(日)ヘッドホンアンプ用バッファ回路の検証

オペアンプ+バッファのHPA回路にて、全体の仕組みを変えずにバッファ回路だけ変更してどれが一番良いか検証してみよう! という企画です。

バイアス回路はどれがいい?

ebuf-bias-test.png

3つとも同じようなバッファ回路になっていますが、バイアス電流の仕組みが少し異なっています。

  • 左上は、薄膜抵抗によるバイアス回路。
  • 右上は、CRDによる定電流バイアス回路。
  • 左下は、カレントミラー回路による定電流バイアス回路。

さて、この3つを音が良い順に並べるとどうなるでしょうか? 予想するのも楽しいと思うので、X(Twitter)でアンケートをしてみました。

  • 一番良いの投票数:カレントミラー > CRD > 薄膜抵抗
  • 一番悪いの投票数:CRD=薄膜抵抗 > カレントミラー

みんなすごいなー。結論として音が良い順に並べると以下のようになります。

カレントミラー > 薄膜抵抗 >> CRD

ただの主観ですが、結構はっきり違います。

なぜそうなるのか?(考察)

昔はよく使っていたCRDですが、ここ何年かは全く使わなくなっていました。あるとき、実験として抵抗に置き換えてみたらめちゃくちゃ音が良くなったんです。

CRDのほうが回路として安定するし(オプアンプから見た負荷も軽いし)、取り出せる振幅も大きくなるにもかかわらず、音は薄膜抵抗のほうが良かった。抵抗ぐらいシンプルなほうが良いのかなと漠然と思っていたのですが、カレントミラー回路の音が良いことから原因が推測できます。

おそらく上の回路ではCRDの定電流源としての安定性が良くないことが原因です。今回使用したCRDを安定動作させるためには、両端に8~10Vぐらいかけてあげる必要があります。実際10mAのCRDを使って6.2mAしか流れてないわけで、規定の飽和動作をしていません。飽和状態で使用しないと、(オペアンプの)出力電圧によってバイアス電流が非線形に変動してしまいます。*1

そんなわけでここ何年か抵抗を使用してきたのですが、一応カレントミラー回路も検証したほうがよいよね? とも思っていました。放置された理由はカレントミラー回路を組み込むのが面倒なのと「回路的には超安定するけど、多分抵抗より音悪いんだよな……」という予想(苦笑)

検証したら、これまた明らかにカレントミラー回路のほうが音が良かったです。この回路だと(オペアンプから見たとき)理想定電流源に近いんですよね。つまりオペアンプ対して抵抗よりも負荷が軽くなることが大きな要因だと思われます。

勘の良い人なら正解するのは簡単

基本的に「バイアス電流が多いほうが音が良い」のですから、その知識があれば簡単に並べ替えできます。

なぜなら「それ単にバイアス電流が増えただけでしょ?」というツッコミをされないように(実験時にその要因を排除できるように)、回路の電流値を設定してあるからです。

*1 : とはいえ、飽和状態で使ったときに、他の方式と比較して優位かどうかは不明です。

バッファ回路のコンデンサどっちがいい?

ebuf-cap-test.png

左右の回路、どっちが音が良いと思いますか?

アンケートでは、およそ「左が良い:右が良い=2:1」という投票結果でした。

聴き比べた感想は、やや左が良いかな(大きな差はなさそう)。

回路を普通に考えてみる

まず普通に回路を考察してみます。C1に位置するコンデンサですが、これは経験上容量が大きいほど音が良くなることが分かっています。

右回路の中点と出力の接続を一度無視すると、単純に左から右の回路になった場合、C1に相当するコンデンサ容量が半分になっいます(コンデンサの合成容量)。

もうひとつ、X(Twitter)で指摘していた人が居てさすがと思ったのですが、右の回路は高周波特性が悪化します。オペアンプの高周波出力がC2/C3コンデンサを突き抜けて出力(負荷)に接続されているためです。

ebuf-cap-test-spectrum.png

2つとも音が悪くなる要因として考えられます。

経過とか

どちらにもC1の820uFを付けた状態で、C2, C3に100uFを追加したとき追加したとき明らかに良くなったので、それならばってことで上の比較回路を考えてみたのですが、実際作ったら微妙な感じ。

もう少し回路を工夫して検証してみても良いかもだけど、820uF×3(C1-C3)してもC1単独より悪いっぽいからダメかも。

まとめ

  • 思いつきを検証するのは大事。
  • 追試しまくるので時間がかかって大変(コンデンサのエージングも必要ですし……)。
  • 意外と思ったとおりの結果にはならない。

ところで全部正解した人は居ましたか?

2021/08/24(火)OPA1622のGNDの扱いと音質比較

Ti製のSoundPlus高性能オーディオ・オペアンプ「OPA1622」のGNDをどこに接続するか問題について。

OPA1622とは

高性能オーディオ用ICであり、音質も大変優れていることから人気のオペアンプです。SoundPlusシリーズの中でも最高の「Ultimate」を冠しています。

このICは「100mA以上の電流」を取り出せ、ヘッドホンなどを直接駆動することも可能です。もっぱら「いわゆる載せ替えオペアンプ」として人気のようですが、このICは10pin DFNとして提供されており、通常の方法ではオペアンプとして載せ替え使用することはできません。

またこのオペアンプには±電源ピンの他に、GNDピンがありこのピンの処理方法について多少の議論があるようです。

OPA1622のGND処理と音質比較

GND端子の接続方法は3つ考えられます。

  1. V-(マイナス電源)につなぐ(秋月変換基板ほか)
  2. 変換基板上で仮想GNDにつなぐ(Bispa変換基板)
  3. 8pinオペアンプ互換を諦めGNDに直接接続する(Bispa変換基板では可能)

仮想GNDの回路はこんな感じです。*1

OPA1622_VG.png

比較結果

(3)GND接続 > (1)Vee接続 > (2)仮想GND回路付

ある種、当たり前の結果になりました。

*1 : Bispaの基板では10KΩではなく22KΩが使われているようです。

GNDはどこに接続するべきか?

データシートには次のような記述があります。

OPA1622-GND.png

【赤下線】GNDピンはノイズが最小でインピーダンスが最も低い基準に接続しろ

ノイズが少なくインピーダンスが低い基準点というのは、通常はGNDになりますが*2、GNDに接続できない状況でしたら次点でマイナス電源に接続するのは決して悪いことではありません。*3

上に示した仮想GND回路は、電源ピン(V-)に直接接続するよりインピーダンスが高いので、音が悪くなるのは当たり前です。

*2 : 回路全体が仮想GNDで動作している場合は除く。

*3 : 似たようなものだからとプラス電源に接続すると動作しなくなるのでご注意。

一番良い方法は何?

「なんだ仮想GND基板ク○じゃん」という結論は、実はちょっと焦りすぎです。

OPA1622.jpg

左が仮想GND付き変換基板(R/C裏面実装)で、右がGND-Vee接続変換基板です。GND-Vee接続基板は、上ではCを載せずに評価しました。ここには0.1uFのECPUを電源パスコンとして接続することができます。

仮想GND付基板は、GNDを接続するためのPAD(旧Bispa変換基板ならばホール)があります。仮想GND付き基板はGNDを正しく接続すると基板中のC1/C2が電源パスコンとして作用します

その結果こうなります。

C付き仮想GND基板のGNDを接続 > C付きGND-Vee接続基板 > GND接続 > その他

まとめ

  • 仮想GND付き変換基板をそのまま使うのは愚行。
  • GND-Vee接続のオペアンプ変換基板は、電源パスコン付きのほうが音が良い。
  • 仮想GND付き変換基板は、Cを付けた状態でGND端子を回路中のGNDに接続する。
    • Rはあってもなくてもどちらでも良い。

おまけ

実験に使った基板はBispaで販売されているものです。