D級ヘッドホンアンプ Ver.2.2 / pwm-hpa2.2
電池2本という低電圧で高速発振(約40MHz)させたD級ヘッドホンアンプVer.2.0の改良版です。執筆時点での最高音質。
過去記事
原理などは過去記事を参考にしてください。この記事はVer.2.0の改良版になります。
回路図と部品

部品番号 | 部品 | 数 | 備考 |
---|---|---|---|
U1-2 | ADCMP600(LTC6752使用時は本文参照) | 1 | 高速コンパレーター |
U3-10 | NC7WZ16P6X | 1 | 高速ロジックバッファ |
FB1-6 | フェライトビーズ | 6 | MI1206K601R 600Ω@100MHz |
D1-4 | SBD(30V 1A等) | 4 | CRS01(TE85L,Q,M) |
R1-2 | 薄膜チップ抵抗 10KΩ | 2 | RT0603。 |
R3-4 | 薄膜チップ抵抗 1-4.7KΩ | 2 | RT0603。帰還抵抗 |
VR | ボリューム 10KA(or 20KA) | 1 | RD925G等 |
C1-4 | PPSチップフィルム 100pF | 4 | ECH-U1C101GX5 |
C5-6 | PPSチップフィルム 1000pF | 2 | ECH-U1C102GX5 |
C31-38 | 8 | ||
C7-8 | 未接続(or PPSチップフィルム 1000pF) | 2 | ECH-U1C102GX5 |
C21-28 | 導体性高分子コンデンサ | 8 | 低電圧・大容量品を使用 |
回路の説明
- R3-4は小さくするほど発振周波数が高くなりますが歪みやすくなります。歪む場合は、2.2K~10KΩ程度まで増やしてください。
- R1-4の抵抗は音質に大きく関わりますので、RT0603等を推奨します。
- U3-10のバッファは、2パラ~4パラの範囲で選んでください。並列数が多いほうが駆動力は高くなりますが、発振周波数が下がります。
- C31-38は0.1uFとかでも良いと思いますが、1000pF(1nF)のほう良さそうです。
- SBDは適当に手持を使用しました。低順方向電圧、高電流容量のもので適当に選んでください(未検証ですが秋月のCUHS20S30とか良さそう)。
- ファライトビーズはそこまで吟味はしていませんので、他に良いのがあったら教えてください。おそらく低ESRは必須です。
- C21-28のコンデンサ選びは聴き比べ記事を参考に。手元ではただ単に余ってたAPSC 2.5V 2700uFを使用しました。
- ボリュームから出てC1/C2の手前に直列に1KΩの抵抗を入れると、ボリューム最少時に安定するようになります。*1
- C7,C8に100pF〜1000pF程度のフィルムコンデンサを入れると回路が安定しやすくなります。
LTC6752を使用する場合
LTC6752は音質は大変優れます(明らかに違うレベル)が、ADCMP600で製作した場合に比べて難易度が高くなります。以下、LTC6752を使用する場合の注意点を書きます。
- C7/C8に1000pF(1nF)を必ず実装してください。安定性が段違いです。
- 音質は多少劣りますが、470pF~1000pFの積層セラミックコンデンサ(温度特性NP0/C0G)でも構わないので、必ず実装してください。最悪X7R特性でも良いです。
- 音質も付いてるほうが良いです。
- このコンデンサの影響で発振周波数は20MHz程度まで低下します。
- R3-4は大きめ(3.3Kや4.7KΩ)で製作するのほうが無難です。
- 万全に製作しても出力にわずかにホワイトノイズが残ります。
- 静かな部屋で高能率イヤホンを使わないと分からないレベルだとは思いますが、無音時に定常ノイズがあります。
- 出力フィルタをがちがちに強めると消える気もしますが(未検証)、音質が犠牲になります。
ADCMP600で製作したほうが無難ですが、最高音質を求めるならLTC6752に挑戦してみてください。
なおTLV3601は最低±1.05V必要なこともあり、今Versionでは未テストです。
解説
D級アンプは発振周波数が速ければ速いほど音質が格段に良くなるのですが、一般的なMOS-FET素子はそこまで高速に動作できません。市販されているD級アンプは、(2025年の)最新のもので2MHz程度ですので、このアンプがいかに高性能か分かるかと思います。
このヘッドホンアンプは超高速ロジックICをパラレル使用することで、高速性と低出力インピーダンスを実現しています。遅くて大きいMOSを使わずに、速くて小さいMOSを複数使用することで高速性と低インピーダンス化を同時に実現しています。
音質
今のところ、手持ちヘッドホンアンプの中では(未発表を含め)一番良い音で鳴っています。ただ、帰還抵抗を1KΩにするとノイズの問題があるため悩ましいところです。
まとめ
久しぶりのアンプ回路の記事となりました。暇を見つけてはずっと改良していて、特にノイズ対策のためにプリント基板を何度も作り直していたので大変でした(まだ完全ではありませんが……)。
自作する人は居なそうですが、感想や「こうしたら良くなった」とかありましたらコメントください。
試作プリント基板の余り数枚ですが、3月21日から有料頒布を予定しております。