フィルムコンの音質 試聴メモ

はてブ数 2009/05/07電子::オーディオ

フィルムコンの試聴をしつつ、昔試聴した資料を探したのですが見つからない。どうやら簡単に書いただけでまとめてなかった模様。自分で不便なので、ここにまとめておきます。

注意:今回は小容量コンデンサを対象としているため、多数存在するメタライズドフィルムコンデンサは敢えて除外してあります。

フィルムコンあれこれ

フィルムコンデンサは、誘電体の材質によって大きくグループ分けすることができます。一番安価なフィルムコンはポリエステル(マイラ)コンデンサですが温度特性などが悪く、音響用回路には一般にPPコンデンサが好まれます。しかしながらPPはそこまで音がよくありません。PPよりもPPSやスチコンの方が音質的に優れています。

ポリエステル(マイラ) < ポリプロピレン(PP) < スチコン, PPS

小容量フィルムコン、音質聞き比べ

100pFのコンデンサを使いLPF(10k+10kの2倍増幅)でとても簡単に(若干手抜きで)確認しました。

filmcon-listen.jpg

およそ音が悪い順にならんでいますが、線で区切られない部分の差は微妙です。

1.ニッセイAMZ / ポリエステル / 千石で10円

自作ではよく使われるフィルムコンデンサ。音質はゆがみ感があります。明らかにPPなどの他のコンデンサに劣ります。

2.WIMA FKP2 / ポリプロピレン / 100円前後

WIMAのポリプロピレンコンデンサ。WIMAは音響マニアに定評がありますが、これについては声のかすれがあり、何より低音のボン付き(もわもわ)が気になります。使えないです。

3.双信電機 DM10C / マイカコンデンサ / 千石で240円

こいつだけ仲間はずれでマイカ(雲母)コンデンサです。かすれ感はありますが、ボン付きがないのでFKP2よりマシです。

4.WIMA MKP / 箔巻ポリプロピレン / 100円前後

WIMAの音響用というとこっちのような気がします。確かに悪くはないのですが、上位と比べると歪み(かすれ)っぽさがあります。

5.Panasonic ECQP / 箔巻ポリプロピレン / 30円前後

大昔からメーカー製音響回路で使用される定番品です。Panasonicはチップに移行したため今はディスコン。歪みの比較的少ない定評のある音質ですが特別よくもありません。WIMA MKPとは大差ありません。

LPFやパスコンで使用すると低音が良く出るので、それが好んで使われることもあります。(ECQPの低音を好まない人も居ます)

6.ニッセイ APS / ポリプロピレン / 千石で30円

ニッセイのポリプロピレンコンデンサ。安い割に歪みの比較的少ない音です。個人的には定番のPanasonic ECQPより良いと思います。それでも7/8よりは劣り、かすれ(歪み)を感じます。

7.アムトランス AMCE / 箔巻ポリプロピレン / 若松で220円

マイナーですが音響用部品を作っているアムトランスのフィルムコンデンサ。アムトランスの音響用抵抗はがっかりでしたが、こちらは結構まともな音質。クリアな音です。次のKP1830より若干劣るかなと思いますが、こちらの方がメリハリがあるので好みによると思います。

※写真のAMCEシリーズは廃番のようです。後継と思われるAMCHの販売はここ

8.ERO KP1830? / ポリプロピレン / 若松で105円

知る人ぞ知るKP1830EVOX RIFA PEFではないかという指摘がありました。若松でKP1830として売られていたものを買っただけなのですが(コメント欄参照)。ある筋から、OEM品で実質同じものではという指摘もありました。

非常にクリアで歪みのほとんどない音です。派手さがなく「なめらかな音」という印象でメリハリ重視の人にはあまり好まれないかもしれませんが、いい音です。PPコンデンサでは一番良いと思っています。

関係ないけど、EROのMKT1826の音も聞いてみたいです。

9.サンリング電子 / 銅箔スチロールコンデンサ / 海神無線で100円

下手をするとハンダ付けの温度にも耐えられないため大昔に製造中止となり今はほとんど流通していない幻になりつつあるコンデンサ。プラスチックの一種のあのスチロール樹脂が原料。

ゆがみ感が全くなくコンデンサでは最強。でも入手性とても悪い。海神ぐらいかも(100pは品切れ)。製造元で数少ない在庫を通販してます

おすすめは ECHU/ECPU

スチコンがいいのですが入手難。音響用部品は音質的に優れたものが次々ディスコンになる不遇の世界です。

でもフィルムコンデンサではいいものがあって、チップコンになりますがPanasonic ECHU(PPSコン)がスチコン以上に歪みのないとても優れたコンデンサです。Digkeyになりますが10個600円ぐらいで手に入ります。大きめの容量ならPanasonic ECPU(プラスチックコン)がおすすめ。スチコンと同じようなプラチック製なので同等ぐらいと思われますが、小型のため多少特性は良さそう。熱に弱いのでハンダ付けに注意してください。

そこまで拘らないなら、ニッセイAPSを使っておくのが値段・入手性・音質の面からオススメです。音質に拘るならECHUという使い分けがいいと思います。

2009/04/20(月)レールスプリット簡易検証

2V~動作可能なレールスプリット回路。よくカレントミラーが使われるけど、ほんとにいいのかと疑問に思って簡単に検証。

rail_split_circuit.png

組むのが面倒だったのでLTSpice。よって正確じゃないけど目安程度にはなるかなと。シミュレーション結果がこれ。

rail_split_sim.png

カレントミラー(赤色)とダイアモンドバッファ(緑色)の比較。一応ダイアモンドバッファの方がいいらしいけど、圧倒的でもない。どっちもアイドル電流を変えると改善します。

カレントミラーは電圧バランス崩れを定電流充電するという感じだと思いますが、電流性出力だからインピーダンスは低くないようで。一方低出力インピーダンスの定番ダイアモンドバッファも、入出力電圧の差が小さいときには出力インピーダンスが大きくなる(バイアス電流による)ので、これまた万能とはいえず。

こう見るとレールスプリットはオペアンプと組み合わせた方が性能が飛躍的にあがりますが、今度はレールスプリット回路安定性が微妙に。LT1498とかだとかなり安定ですけど。

備考

掲載回路のダイアモンドバッファはそのまま使いませんように。電圧をあげていくと熱損失でトランジスタが壊れたり抵抗が発火する危険があります

追記 2009/05/04

Q5~Q8のカレントミラーですが、R6/R7を1kΩにすると12Vが限界でした。15VかけるとQ6/Q7が熱暴走します(普通の電源ならばそのままトランジスタが焼け死にます)。熱結合すれば解消されますが、微妙ですね。

Q6/Q7のコレクタ側に10mA程度のCRDを付けて補償することもできますが、応答性がCRDで頭打ちされるため電源としての性能は明らかに劣化するようです。オシロで音楽再生時に観測すると倍(6dB)ぐらい違います。

2009/03/03(火)紹介

時間が取れないのですが、低電圧ヘッドホンアンプのバッファ部をもっと良くできそうなアイデアを出されている方が居ます。

どっちか試したい、試したいけど暇がない(苦笑)

ループする回路に意味はあるのか?

はてブ数 2009/02/04電子::アンプ

低電圧ヘッドホンアンプ(ダイアモンドバッファ付)の回路に次のようなコメントを頂きました。

回路図を眺めていておもったのですが、P点を接続するとOPアンプからの出力が

ダイヤモンドバッファをスルーしてしまうような気がするのですがどうなんでしょう?

僕の中学理科程度の解釈が正しければ、ショート=0Ωな方に信号は流れていくと思うのですが・・・

ともさんのコメント

明らかに釣りですが、暇だったのでいい勉強になりそうだったので付き合ってみました(笑)

※2009/10/10 本文修正

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2009/01/28(水)超低消費電力なメモ

超低消費電力アプリケーションのためのデバイス選択メモ。

MPU

MSP430F54xx

16bitマイコンながら、恐ろしいまでの低消費電力。今現在、この右に出るデバイスはない。180uA@1MHzで、その他徹底した低消費電力対策がされている。ADC, RTC, SPI等々内臓。内部にレギュレータを内蔵しているようで、供給電圧に関わらずコア電圧は1.8Vで動く模様。

1万円出せば標準デバッガ(JTAGツール)が購入でき、Cの統合開発環境(MSP-CCE430/Eclipsベース)が利用できる。コードサイズ16KBまで無償で利用できるため大抵は間に合ってしまう*1。オンラインでCソースレベルデバッグが可能で、これを知ってしまうとPICでちまちまアセンブラを書くのがあほらしくなってくる。命令コードはC言語に最適化されている。*2

ZigBeeや無線タグなどを強く意識した製品シリーズ。1命令サイクル=1クロック

*1 : 製品版を買っても7万円なので良心的

*2 : アセンブラで利用しても比較的素直な命令セットなのでそんなに不便ではない。

DCDC

LTC1878

降圧型高効率DCDCコンバータ。データシートによれば1mA以下でも80%程度の変換効率を持つ*3

コイル外付け。動作電流10uA。2.65~6Vで動作。

*3 : 一般に高効率DCDCコンバータと呼ばれるICは、1mA以下の低消費電流領域では効率が著しく低下する

電圧レギュレーター

TPS797xxTPS782xx

TIの超低消費電流(<1.2uA)レギュレータ。後者はTI自らMSP430用を謳っている。TPS797xxとTPS782xxを両方使い分けると、1.8V~3.3Vまで一通りの電圧がそろう。

最大入力電圧5.5V。

パワースイッチ

FPF1004-1006

Hiサイドパワースイッチ。MOS-FETとMOS-FETドライバを一体にした電源スイッチ。1.2~5.5Vで動作し、50~250mΩといった低いON抵抗、動作電流/シャットダウン電流共に1uA以下、ターンオン時間10us(0.1uF)といった驚異的なスペック。

スイッチデバイスは低消費電力アプリケーションでどうしても電力を食うもの(MicroSDカードとかDACとか)を動作させる必要があるとき、非使用時に電源を切断する目的で使用します。

加速度センサー

ADXL330

180uA@1.8Vのセンサー。Wiiでも使われている加速度センサー。アナログ出力。ADXL345というデジタル接続のより低消費電力のセンサーもありますが、また入手できません。


1.8V駆動じゃないと消費電流が増えるので注意。


メモ

これらをごにょごにょって組み合わせると、個人レベルでも驚異的な低消費電力アプリケーションが作れます。


もっといいデバイスがあったら教えてください。