高音質ラズパイ用DACの設計と製作
概要
ラズパイ用の高音質DAC(msBerryDAC)を開発しました。対応機種は次のとおりです。
- Raspberry Piシリーズ
- Raspberry Pi Zeroでの動作報告もあります。
購入は取扱店からお願いします。
ラズパイ用の高音質DAC(msBerryDAC)を開発しました。対応機種は次のとおりです。
購入は取扱店からお願いします。
Twitterで以下のように発言をしたら、案の定、あまり理解されなかったので頑張って説明してみます。
サンプリング定理は「信号の最大周波数」の2倍より早い速度でサンプリングすれば元信号の情報は完全に再現できる(一意に決まる)、とは言ってるけども、サンプリングしたデータをそのまま再生したとき元波形が再現できるとは一言も言ってない。
https://twitter.com/nabe_abk/status/777874934424940544
なおこの記事では、フーリエ変換が存在する連続信号(関数)のみを考えることにします。
プリント基板の製作に、普段P板を使っていてFusion PCBに移行しつつあったのですが、色々と問題があってElecrow(紹介リンク)を使ってみることにしました。
ついでにその他格安基板屋さんについてもまとめています。
Fusion PCBと同じ機械なのか非常によく似ています。
項目 | P板 | Fusion PCB | Elecrow | PCBWay |
---|---|---|---|---|
最小パターン幅 | 0.127mm | 0.1524mm | 0.15mm | 0.15mm/0.1mm*2 |
最小パターン間隔 | 0.127mm | 0.1524mm | 0.15mm | 0.15mm/0.1mm*2 |
最小パッド間隔 | 0.127mm | 0.1524mm | 0.15mm | 0.15mm/0.1mm*2 |
最小シルク高さ | 1.0mm | 1.0mm | 0.8mm | 0.8mm |
最小シルク線幅 | 0.127mm | 0.1524mm | 0.15mm | 0.15mm |
最小ホール経 | 0.3mm | 0.3mm | 0.3mm | 0.3mm/0.2mm*3 |
最小ランド経(PTH) | 0.6mm | Hole+0.3048mm | Hole+0.1524mm | Hole+0.15mm |
外形線との間隔 | 0.3mm*4 | - | 0.7mm*5 | - |
銅箔厚 | 18um/35um | 35um/70um*6 | 35um/70um | 35um/70um/105um |
Readme before ordering PCB online.PDFより抜粋。
How to Reduce Cost with Panelizing Serviceに説明がありますが、試した限り「外形線でV-cutラインを入れて、枠外の外形線レイヤーに『V-cut』の注釈を入れて」おけば処理してくれます。
Fusion PCB/Elecrow/PCBWayの3つは一緒です。
ステンシル(メタルマスク)製造時。
送料$20だったので、OCS/ANA Expressで注文しました。
注文から6日後に到着してしまいました。早い。2週間かかるFusionはもとより、P板頼むより早いんですけど(苦笑)
国内の輸入申請で4日止まるという珍事。「Prototyping Board」の意味がわからなかったらしいんだけども、OCS/ANAさんはもうちょっとしつこく電話してくるか、そのままPrototyping Boardでググるなりしてほしい。
3コールぐらいで切れる電話なんて出られないよ。
UPSとかFedexとかなら、そんな凡ミスはしない気がしてきた。
上がElecrowで、下がFusion PCBです。高解像度の画像置いておきましたので、クリックすると拡大します。
シルクが断然綺麗ですね。シルク位置は若干ずれてますが、個人的には許容範囲です。そしてP板でハズレ工場引いたときよりも綺麗です(笑)
シルクがずれてパッドの上に完全に乗ってる。そして前回よりもシルクの印刷が汚くなってる。どうしよ……。
→サポートに問い合わせたら再製造してくれました。
200枚ほど製造してみました。
その他、ホール潰れ(ハンダ埋まり)が1つ、細かいキズや汚れは数えられないぐらいありました。+10%ぐらい余分に製造して検品しないとダメな感じです。
この記事を書いてから数年経ちましたが、ほぼほぼElecrowしか使用しなくなりました。
※Elecrow紹介リンク(利用者側500point/紹介者側1000point付。紹介リンクの詳細)
抵抗の場所と音質の謎で述べたとおり、抵抗には「音質への影響が大きい要素」と「音質への影響が比較的小さい要素」があります。
ボリュームは、可変抵抗という物理的制約上音質が良いものを利用しても固定抵抗に比べたら大きく劣ります。擬似Lアッテネーターはこの特性を利用して、ボリュームの音質を改善する方法です。
今回の実験回路です。VRは10KΩに固定して話を進めます。
R1とVRは擬似L型アッテネーターを構成しています。R1は2K~4.7KΩぐらいの抵抗を利用します(入力の大きさによる)。
R2は入力抵抗です。直列要素ですので抵抗があればあるだけ音質が劣化するはずでした。実際、今まで製作してきたアンプでは、R2は接続せず、常に0Ωにしています。
しかしこれだけでは理解できない現象に出くわしました。この回路では、R2を接続したほうが音が良かったのです。
最初は2KΩぐらいで試したのですが、抵抗値をあげるとより音が良くなります。具体的には、R2として10KΩぐらいを接続すると一番音質が良くなりました。22KΩでは、オペアンプ入力端子のインピーダンスが上昇しすぎるのか、音質が低下し始めました。
つまり擬似Lアッテネータよりも、擬似Tアッテネーターのほうが音が良かったのです。
これまでの状況では、単に「オペアンプにとって入力インピーダンスがほどほどにあると音質が良くなる」という可能性を否定できませんので、きちんとしたT型アッテネーター回路を製作して検証しました。
R1=2K(LGMFSA)、R3=1K(秋月カーボン抵抗)として、R2(LGMFS)を0Ωと10KΩで比較してみました。明らかにR2(LGMFS)を付けた方が音質が良くなります。
今度は逆にR3をLGMFSの1Kに変更した上で、R2を秋月カーボン抵抗の0Ωと10KΩで比較してみました。さすがに微妙なところですが、この場合もR2を付けた方が音質が良くなりました。
試しにR3をが切断してみると、R2の種類によらず存在しない(0Ωの)ほうが音質が良くなりました。よってこの現象は「R2とR3の何らかの相互作用によるもの」と考えられます。
また「R2の抵抗の種類によらず音質改善効果があり」、音質の良い抵抗のほうが効果が高い言えます。
昔、抵抗の音質をチェックしたときは、FETバッファアンプを使用しました。このとき、R2に相当する抵抗は入れない状態が一番良かったのですが、本当にそうなのか再度確認してみました。
結論から言うと、R3にボリューム(2CP601)を付けた状態で、手持ち抵抗でもっとも音質が優れるRT0603をR2につけても音質が劣化しました。
つまり、この現象は「オペアンプの非反転入力に接続したときに改善効果があるが、FETバッファアンプのような構成では効果がない」ということが分かりました。
さらに検証してみると、R2による音質改善はオペアンプによって大きく異ることが分かりました。改善が大きかった順に並べます。
オペアンプ | 電圧ノイズ | 電流ノイズ | 入力バイアス | 種類 |
---|---|---|---|---|
LME49721 | 4nV(1K) | 4fA(10K) | 40fA | bipolar |
LMP7716 | 5.8nV(1K) | 10fA(1K) | 50fA | CMOS |
LT1677 | 3.2nV(1K) | 300fA(1K) | 2nA | bipolar |
LMP7732 | 3.0nV(1K) | 1.1pA(1K) | 1.5nA | bipolar |
LT1807 | 3.5nV(10K) | 1.5pA(10K) | 1uA | bipolar |
LT6203 | 2.9nV(10K) | 0.75pA(10K) | 1.3uA | bipolar |
OPA2365 | 4.5nV(100K) | 4fA(10K) | 0.2pA | CMOS |
データシートより抜粋。値はTypicalです。各オペアンプの測定条件は同一ではありませんので、相互比較としては誤差を含む値と思ってください。
他にも検証したことを含めまとめておきます。
経路Aは入力信号の通り道です。入力信号は「R1とR3の分圧で減衰され、R1とR2を直列要素、R3を並列要素」としてオペアンプに入力されます。ですので、入力信号から見たらR2の抵抗が無いほうが良いことになります。
そしてオペアンプには入力換算電圧雑音というものが存在します。入力換算電圧雑音は、オペアンプの音質に深く関わってくるものですが、それは実際にオペアンプ入力端に発生するわけではありません。ただしアンプ回路を計測してきた実感として、オペアンプはオーディオ信号などを入力して動作させるときに、アンプの動作状況によって入力端子に雑音を発生させることがあります。*3
経路Bの電圧はR2とR3に印加されます。R3には「入力信号」と「オペアンプからの雑音」の2つの信号がかかることになります。雑音信号が入力信号に対して影響を与えることで、入力信号を歪ませます。
ところがR2があると、「オペアンプからの雑音」がそのままR3に印加されることはなくなり、雑音がR2/(R2+R3)されます。つまりR2が大きければ大きいほど雑音が減ります。
一方で、経路Bには「オペアンプの入力換算電流雑音」も生じます。この雑音は、信号源のインピーダンス(R2+R3)が大きくなればなるほど大きくなります。
この推察は、R2が大きすぎてもいけないなどの観測現象をよく説明できます。音質改善効果が大きいオペアンプは、入力換算電流雑音が小さいので(一部例外)、R2よる音質劣化が少なく改善効果が大きいと考えられます。
仮説を検証するため、T型アッテネーターに細工をし次のようにしてみました。検証はR1=2K, R2=1K, R3=3K, U1=LME49721です。
もし仮説が正しい(オペアンプ由来の雑音が音を歪める)のならば、U2を接続したとき音質が劣化し、またその劣化の仕方はオペアンプによって異なるはずです。
まずR9=0Ω(ジャンパ)として検証しました。U2に使用した時、狙い通り音質が劣化しました。劣化が小さかった順にオペアンプを並べます。
こうして見ると、電流ノイズなどのパラメーターと相関はないことが分かります。
続いてU2を最も影響が大きかった「LT6203」に固定し、R9に抵抗を入れて検証しました。
その他、信号源インピーダンス(究極的にはR3の値)によって、音質が最適になるオペアンプが異なるということも分かりました。
擬似L型(擬似T型)アッテネーターは音量調整がしにくいのですが、R1を付けずに通常のボリューム接続にR2として抵抗を接続するだけでも音質が劇的に改善することがあります。
実際に試してみたご報告や追試、考察へのご意見、感想、ツッコミなどありましたらコメントいただければ幸いです。*5
最近テストしている回路(疑似Lおよび電子ボリューム)では、総じて「R2に相当する抵抗は付けない」ほうが音質がよくなります。
当時より全体的に試聴環境が向上したいるため、差がわかりやすくなったのも一員ですが、オペアンプの種類や動作条件などにもよるのかもしれません。
D級ヘッドホンアンプを、専用ICを使わずに、超高速(35MHz)に発振させ、電池2本という低電圧で動作させた、画期的かつ高音質のアンプです。
D級ヘッドホンアンプの回路を公開して早4年。ようやくキットにしても良いかなという音質になったので、Ver2として公開します。
過去、D級ヘッドホンアンプを実用化した例はほとんどなく、あったとしてもスピーカー用のD級アンプに抵抗を繋いでヘッドホンを鳴らしていた程度でした。
4年前、専用ICを使わないD級ヘッドホンアンプの回路公開して以来、たいへん多くの方に作って頂きましたが、D級の欠点である「高域の再現性」がやや劣る問題がありました。
それから2年後に、VerUpとして高速コンパレーターとロジックICを使った高速発振回路により、高域の問題を解決。それにより本格的なヘッドホンアンプへと進化しました。
本回路はそれを更に改良したものになります。
D級アンプは発振周波数が速ければ速いほど音も性能も格段に良くなるのですが、一般的なMOS-FET素子はそこまでの高速動作に追従できません。例えば、かの有名な「TA2020」の発振周波数は300KHz程度(本アンプの100分の1)しかありませんし、市販されているほとんどのD級アンプ素子は1MHz以下の発振周波数です。*1
このヘッドホンアンプは超高速ロジックIC(中身はMOS-FET)をパラレル使用することで、高速性と低出力インピーダンスを実現しています。ちょうど、バイポーラトランジスタのLAPT素子と同じ思想で、遅くて大きいMOSを使わずに、速くて小さいMOSを複数使用することで高速性と低インピーダンス化を同時に実現しています。
また発振周波数が速くできても、周波数が速くなればなるほど左右チャンネルが互いに干渉して音が歪むという現象も発生します。この問題を解決するため、左右のコンパレーター電源を分離するなど回路上の工夫をし、プリント基板のレイアウトも色々と工夫しています。
おそらく言われなければ誰もD級アンプだと気づかないと思います(苦笑)
手元の環境では、低電圧ヘッドホンアンプVer3(op-dbuf3)の回路と、双璧のような感じになっていまして、音質的に抜きつ抜かれつデットヒートを繰り返しています。
op-dbuf3と比べると、好みもあると思いますが、こちらのほうが音は良いかと思います*2。更に改造したい人は、配線が大変ですけどもチップ抵抗に載せ替えてみても良いかもしれません。
低電圧HPA(op-dbuf3)と同じTB-56ケースに入るようにレイアウトしてキット化しました。高速ロジックICの、NC7WZ16がとても小さいのでハンダ付け難易度は高めです。
また入出力端子には4極ジャック(GND分離対応)を使用しました。3極でもそのまま使用できますし、4極仕様のヘッドホンをお持ちの方は、一味違った音質を楽しめます。*3
関連の頒布物もリンクしておきます。
販売元(メーカー)がBispaになっている商品については、品切れの際はBispa様にお問い合わせください。
感想・作例、心待ちにしています。