D級ヘッドホンアンプ Ver.2.2 / pwm-hpa2.2

はてブ数 2025/02/07電子::HPA

電池2本という低電圧で高速発振(約40MHz)させたD級ヘッドホンアンプVer.2.0の改良版です。執筆時点での最高音質(LTC6752使用時)。

過去記事

原理などは過去記事を参考にしてください。この記事はVer.2.0の改良版になります。

回路図と部品(Ver.2.21)

pwm-hpa2.21.png

部品番号部品備考
U1-2ADCMP600(or LTC6752→本文参照)1高速コンパレーター
U3-10NC7WZ16P6X1高速ロジックバッファ
FB1-6フェライトビーズ6MI1206K601R 600Ω@100MHz
D1-4SBD(30V 1A等)4CRS01(TE85L,Q,M)
R1-2薄膜チップ抵抗 10KΩ2RT0603。
R3-4薄膜チップ抵抗 1-4.7KΩ2RT0603。帰還抵抗
VRボリューム 10KA(or 20KA)1RD925G等
C1-4PPSチップフィルム 100pF4ECH-U1C101GX5
C5-6PPSチップフィルム 1000pF2ECH-U1C102GX5
C31-388
C7-8未接続(or PPSチップフィルム 1000pF)2ECH-U1C102GX5
C21-28導体性高分子コンデンサ8低電圧・大容量品を使用

回路の説明

  • R3-4は小さくするほど発振周波数が高くなりますが歪みやすくなります。歪む場合は、2.2K~10KΩ程度まで増やしてください。
  • R1-4の抵抗は音質に大きく関わりますので、RT0603等を推奨します。
  • U3-10のバッファは、2パラ~4パラの範囲で選んでください。並列数が多いほうが駆動力は高くなりますが、発振周波数が下がります。
  • C31-38は0.1uFとかでも良いと思いますが、1000pF(1nF)のほう良さそうです。
  • SBDは手持ちを使用しました。低順方向電圧、高電流容量のものを選んでください。順方向電圧が高いと音質面で不利です。秋月のCUHS20S30おすすめ。
  • フェライトビーズはそこまで吟味はしていませんので、他に良いのがあったら教えてください。おそらく低ESRは必須です。
  • C21-28のコンデンサ選びは聴き比べ記事を参考に。手元ではただ単に余ってたAPSC 2.5V 2700uFを使用しました。
  • ボリュームから出てC1/C2の手前に直列に1KΩの抵抗を入れると、ボリューム最少時に安定するようになります。*1
  • C7,C8に100pF〜1000pF程度のフィルムコンデンサを入れると回路が安定しやすくなります。

LTC6752を使用する場合

LTC6752は音質は大変優れます(明らかに違うレベル)が、ADCMP600で製作した場合に比べて難易度が高くなります。以下、LTC6752を使用する場合の注意点を書きます。

  • C7/C8に1000pF(1nF)を必ず実装してください。安定性が段違いです。
    • 音質は多少劣りますが、470pF~1000pFの積層セラミックコンデンサ(温度特性NP0/C0G)でも構わないので、必ず実装してください。最悪X7R特性でも良いです。
    • 音質も付いてるほうが良いです。
    • このコンデンサの影響で発振周波数は20MHz程度まで低下します。
  • R3-4は大きめ(3.3Kや4.7KΩ)で製作するのほうが無難です。
  • 万全に製作しても出力にわずかにホワイトノイズが残ります。
    • 静かな部屋で高能率イヤホンを使わないと分からないレベルだとは思いますが、無音時に定常ノイズがあります。
    • 出力フィルタをがちがちに強めると消える気もしますが(未検証)、音質が犠牲になります。

ADCMP600で製作したほうが無難ですが、最高音質を求めるならLTC6752に挑戦してみてください。

なおTLV3601は最低±1.05V必要なこともあり、今Versionでは未テストです。また、LTC6752、C7/C8=1nF時の全消費電流約130mAです。

*1 : 通常ボリューム構成や、R1/R2を10kΩ以上で組み立てた場合、あまり必要はないとか思います。

解説

D級アンプは発振周波数が速ければ速いほど音質が格段に良くなるのですが、一般的なMOS-FET素子はそこまで高速に動作できません。市販されているD級アンプは、(2025年の)最新のもので2MHz程度ですので、このアンプがいかに高性能か分かるかと思います。

このヘッドホンアンプは超高速ロジックICをパラレル使用することで、高速性と低出力インピーダンスを実現しています。遅くて大きいMOSを使わずに、速くて小さいMOSを複数使用することで高速性と低インピーダンス化を同時に実現しています。

音質

LTC6752で試作していますが、今のところ手持ちヘッドホンアンプの中では(未発表を含め)一番良い音で鳴っています。

まとめ

久しぶりのアンプ回路の記事となりました。暇を見つけてはずっと改良していて、特にノイズ対策のためにパターンを変えてはプリント基板を何度も作り直していたので大変でした。

自作する人は居なそうですが、感想や「こうしたら良くなった」とかありましたらコメントください。


試作基板の余りをBispaさんに委託しました。完売しました。購入ありがとうございます。

作例リンク

2024/10/17(木)Logicool F310の不具合を分解して修理する

Logicool(海外だとLogitech)のゲームパッドF310(リンクはF310r)を分解しました。

不具合の詳細

  • USBポートにつなぎっぱなしにする。
  • PCの電源を完全にオフにしてから、PCを起動するとゲームパッドとして認識するものの、一切の入力を受け付けない
    • BIOS等で電源断時のUSB給電が on になっているとこの不具合は発生しない。
  • 起動中にUSBに指したり、指し直したりすれば問題ない。

電源やマザーボードとの相性、差し込むポートの影響が大きそうです。

分解と修理

f310_01.jpg
f310_02.jpg

普通のネジなので簡単に分解できます。メインプロセッサはCY7C64315(or CY7C64316)のようです。

f310_03.jpg

  • 電源コンデンサの容量を増やす →効果なし
  • 遅延リセット用コンデンサの追加 →やや効果あり
  • 電源ラインの0ΩをSBDに置き換え →効果大

これでもごく稀に認識しないことがあるので、電源コンデンサを増量してあげました。

  • (ダイオード後の)コンデンサを2.2uF→10uF

コントローラーは難しい

以前書いた通りPlayStation 2のコントローラーが手に馴染んで好きなのですが、もう安価に手に入らない*1のと、Xinput非対応だと何かと不便なので置き換えてみました。

*1 : この前ハードオフで1100円だった。昔は300円だったのに……。

2024/01/22(月)Acer H223HQの分解・修理?

H223HQという古いTN液晶モニターの調子が悪いので分解したメモ。

症状

  • 電源ケーブル切断後、数秒~30秒ぐらいして電源を投入すると、電源ボタンが一切反応しなくなる(電源が入らなくなる)。
  • 電源ケーブルを抜いて、2~3分ぐらい放置して再度電源を接続すると、今度は電源が入り使える。

電解コンデンサの劣化かと思ったのですが、よくよく思い返してみると購入間もない頃も同じ症状に見舞われたおぼろげな記憶があるため、仕様のような気もします……。

注意

情報提供のための記事です。分解等は必ず自己責任でお願いします。

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2022/09/14(水)PS2 DUALSHOCK2のアナログ感圧ボタン修理

PlayStation2 のボタンが反応しなくなったので、デジタル化して修理したときのメモ。PS3コントローラーでもおそらく有効。

(Abstruct) Notes on repairing PlayStation2/DUALSHOCK2 analog pressure sensitive buttons by digitizing them.

※PS2実機での動作は未確認。

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2021/08/24(火)OPA1622のGNDの扱いと音質比較

Ti製のSoundPlus高性能オーディオ・オペアンプ「OPA1622」のGNDをどこに接続するか問題について。

OPA1622とは

高性能オーディオ用ICであり、音質も大変優れていることから人気のオペアンプです。SoundPlusシリーズの中でも最高の「Ultimate」を冠しています。

このICは「100mA以上の電流」を取り出せ、ヘッドホンなどを直接駆動することも可能です。もっぱら「いわゆる載せ替えオペアンプ」として人気のようですが、このICは10pin DFNとして提供されており、通常の方法ではオペアンプとして載せ替え使用することはできません。

またこのオペアンプには±電源ピンの他に、GNDピンがありこのピンの処理方法について多少の議論があるようです。

OPA1622のGND処理と音質比較

GND端子の接続方法は3つ考えられます。

  1. V-(マイナス電源)につなぐ(秋月変換基板ほか)
  2. 変換基板上で仮想GNDにつなぐ(Bispa変換基板)
  3. 8pinオペアンプ互換を諦めGNDに直接接続する(Bispa変換基板では可能)

仮想GNDの回路はこんな感じです。*1

OPA1622_VG.png

比較結果

(3)GND接続 > (1)Vee接続 > (2)仮想GND回路付

ある種、当たり前の結果になりました。

*1 : Bispaの基板では10KΩではなく22KΩが使われているようです。

GNDはどこに接続するべきか?

データシートには次のような記述があります。

OPA1622-GND.png

【赤下線】GNDピンはノイズが最小でインピーダンスが最も低い基準に接続しろ

ノイズが少なくインピーダンスが低い基準点というのは、通常はGNDになりますが*2、GNDに接続できない状況でしたら次点でマイナス電源に接続するのは決して悪いことではありません。*3

上に示した仮想GND回路は、電源ピン(V-)に直接接続するよりインピーダンスが高いので、音が悪くなるのは当たり前です。

*2 : 回路全体が仮想GNDで動作している場合は除く。

*3 : 似たようなものだからとプラス電源に接続すると動作しなくなるのでご注意。

一番良い方法は何?

「なんだ仮想GND基板ク○じゃん」という結論は、実はちょっと焦りすぎです。

OPA1622.jpg

左が仮想GND付き変換基板(R/C裏面実装)で、右がGND-Vee接続変換基板です。GND-Vee接続基板は、上ではCを載せずに評価しました。ここには0.1uFのECPUを電源パスコンとして接続することができます。

仮想GND付基板は、GNDを接続するためのPAD(旧Bispa変換基板ならばホール)があります。仮想GND付き基板はGNDを正しく接続すると基板中のC1/C2が電源パスコンとして作用します

その結果こうなります。

C付き仮想GND基板のGNDを接続 > C付きGND-Vee接続基板 > GND接続 > その他

まとめ

  • 仮想GND付き変換基板をそのまま使うのは愚行。
  • GND-Vee接続のオペアンプ変換基板は、電源パスコン付きのほうが音が良い。
  • 仮想GND付き変換基板は、Cを付けた状態でGND端子を回路中のGNDに接続する。
    • Rはあってもなくてもどちらでも良い。

おまけ

実験に使った基板はBispaで販売されているものです。