2008/07/15(火)USB DAC基板、製作中

妙に忙しくなってきたので、暇を捻出して毎日少しずつプリントパターンを引いてます。


問題のLPFオペアンプ。先に注意しますが、以下は外部抵抗10kの多重帰還型LPFでの話です。


LT1037ですが、本領発揮までさらに時間かかったものの(全部で100時間ぐらい?)LT1115にはやや及ばずな感じ。あっさりしすぎなのかなぁ……とか思ってたのですが、経験上「音は歪まなければ歪まないほどあっさりする」ので悩みに悩んだものの、現時点の印象ではさすがに何か音が足りない。

それでLT1115に戻してみたいですが、今度は音がごちゃごちゃに混ざったように感じる。聞き慣れた感じに近いのですが、劣ってないかなこれ……。

これは困ったということでLT1128とLT1028。LT1128も何か音が足りない感じがする。とりあえずLT1028にしてみました。LT1037に似た傾向で、音の不足感(中~高域)が少ないものの、これも何か音が消えているようにも感じるものの、LT1115と比較して1つ1つの音が綺麗に分離します。

悩みます。差は中域(2~4kHz付近)の聴覚上の音圧。

  1. LT1115の音が正解で、LT1028の音は何かが消えている。
  2. LT1028の音が正解で、LT1115は余計な音がしている。
  3. この中に正解はない。

こういうとき人間は、普段聴き慣れている音を良いと思う傾向があるため、本気で比較しようと思ったらあえて普段聴き慣れない方をメインでしばらく使ってみるしかありません(ついでにエージングも兼ねて)。そんなこんなで、詰めの部品選定が一向に進まない(苦笑)*1。LT1115は中高域のエコーみかかった、かすれっぽさみたいのが気持ちいいんですけど、これもしかして付帯音なんじゃないかと。

ひとつだけ残念なのはLT1028(LT1028ACN)は異様に高いということでしょうか(苦笑)*2

ちなみにバ○のひとつ覚え(苦笑)で、DC直結DACという恐ろしいことになっています*3。ここにDC直結アンプをもってくると、カップリングコンデンサ排除な再生システム完成。

*1 : どっちにしてもほとんどの人は満足すると思うのですが、そういう妥協はあまりしたくない。その時点でのベストを提供するのが宿命です(笑)

*2 : それでも1000円ちょっとですが。USB DACの全体原価10k越えないことを祈る(笑)

*3 : 電池駆動と違って制約がゆるいので、この辺は結構どうにかなったりします。

おまけ

普段使い&試聴用のFETヘッドホンアンプをBL×4からVランク×4*4に変更しました。電池食い過ぎなので、本当はBL×4のままにしたかったのですが、今後V×4を越えるHPA(または同等のもの)を作らなきゃしょうがないので基準にするため半ば仕方なく改造。

副作用としてDACの音質差が大変かりやすくなりました。

*4 : 正確には少しケチってVランク×3+BL×1。比べたことはないけど、ほぼ変わらない。

忘れてた

strvさんのカレントミラーヘッドホンアンプを紹介しておきます。単3電池2本、カレントミラーでバッファアンプという、面白い発想のアンプになっています。

ちなみにまだ試してないです。回路規模が中規模なんで、配線の気力が…(汗)*5

*5 : キットがほしいって人の気持ちが分かりますね。なにかの2日目での展示を期待してみる(笑)

2008/07/13(日)ヘッドホンアンプ回路に悩む

2SJ74の廃盤の話がなければ、FETヘッドホンアンプを再販するつもりだったのですが、ここに来て悩んでいます。

FETヘッドホンバッファアンプ

  • 利点
    • 低電圧(2V)から高電圧(10~20V)まで問題なく動作する。
    • 回路がとても安定である。
    • 電源電圧効率が高い(電源電圧-0.2Vぐらいまで出力できる)。
    • 製作が簡単
  • 欠点
    • アイドル電流が多い。
    • パラレルにすることで出力インピーダンスを無理矢理下げている感じがある。
    • 低インピーダンスイヤホン(10Ωや16Ω)の駆動が難しい。
    • 低域のしまりがやや弱い(BL4パラ構成時)

代替案

このオペアンプ1発型の電源を単3電池にしてLT1677で駆動すると大変に優秀な音が鳴ります。駆動電流も5mAぐらいで*1電池も長持ち。低域のしまりも優秀です。しかし中高域の綺麗さがやや弱い。*2

ケーブルによる音質差よりも小さいレベルなので気付かなかったことにしようかとも思ったのですが、それも釈然としない。

追記。LT1498がおすすめされてる

*1 : 出力している電流除く

*2 : 興味ある人は組んでみるといいかも。違う感想ならぜひ教えてください。LT1677(1回路オペアンプ)はマルツにあります。Vランク×4には負けると思います。BL×4との比較は一長一短です。

3V(2.4V)駆動ヘッドホンアンプ

Vgsがたった0.2Vでも動作する、2SJ74にはじまる高利得のJFETのP-ch型が製造されていないことが悩みの種。代替を求めて低電圧でまともに動作するオペアンプを探してますが、音質を考えると「そのまま使うだけ」ってのは難しそう。

さてどうしようか(いくつかアイデア検討中)。

2008/07/06(日)FET素子の増幅度(ランク)と音質

発端はKANさんのLM4880ヘッドホンアンプへのコメント

LM4880の前段にバッファをかませてみました(2SK170・2SJ74それぞれ1ケのプッシュプルエミッタフォロワ)。(中略)、全体的にベールを一枚剥いだ感じの音質に仕上がりました。

反転アンプにバッファ付けて音質改善? なんて思ったもののためしてみるとこれが大きく変わる。しかも、Idss電流の小さいGRランクではほとんど改善効果がなく、Idssの大きいBLランクだと改善効果がある不思議。その不思議を追求して、Idssの一番大きいVランクを入手。「ええっ、こんなに変わるの?」っていう豹変っぷり。FETヘッドホンアンプを明らかに越える音質にびっくり(勘違い)。

不思議

FETのランクというのは、Idssと呼ばれるゲートソース間電圧0V時の電流値を選別したものです。Idssが増えるとgm(増幅度)が増えて出力インピーダンスが減る傾向にはあります。

これで大きく音質が変わることは、Idss以外に何かしら理由があるはずです。

  • 素子雑音がIdssに比例する?
  • 増幅率が良い素子ほど、なんらかの特性が向上する?

まだ分かりませんが、FETほど簡単な素子でこれほどの差が出るというのは非常に興味深い結果です。このFETの音の差は、オペアンプの選別品や広帯域品の音が良い理由に関連するように感じます。

続報

このFETヘッドホンアンプをVランクにすると音が変わるのか。

音は違います(LM4880前段に使ったときほど差はないと思いますが)。音の奥行き感や低音の力強さでVランクの方が上のようです。何気なく聞いていると結構違うような、注意深く聞いてるとまるで違わないような変な感じです。再生装置や環境によっては差が分からないかもしれませんが、環境によってはこちらよりもハッキリ違いが分かるかもしれません。*1


※詳しい情報はこちら

*1 : ちなみに昨晩聞き比べたときは、ランクの差よりもケーブルによる音質劣化を聞いてしまっていました(汗)。昔はケーブルの差なんて全く分からなかったのですが、知らない間に随分と遠いところへ来てしまったようです。LM4880アンプは素子を取り替えて聞き比べたので、その他要因ではありません。

オペアンプの仕様と音質の謎

はてブ数 2008/06/29電子::オーディオ

※この記事は多少古くなっています。書かれている情報はおよそ正しいのですが、一部アップデートが必要な箇所があります。また一覧表に含まれない音質の優れたオペアンプもたくさんあります。


およそオーディオ用と思われるオペアンプを一覧に纏めてみました。

一覧表

20080730_opamp_list.gif

  • 色々なメーカーを横断的に調べました。ほかに追加情報あればよろしくお願いします。

音質三大要素

  • 入力換算雑音が低いこと
  • 駆動できる電流が大きいこと
  • 発振しにくいこと

入力換算雑音

音質と最も深く関するのは入力換算雑音です。入力換算残音は低域ほど増大する傾向があり、着目すべきは公称値よりも0.1~10Hzの雑音電圧(nVpp)です。音の明瞭さに対して大きく影響します。

また面白いことに入力換算電流雑音はそこまで大きく問題になりません(まったくではないので注意する。例えば、AD797は入力換算電圧雑音の割にあまり音は良くない)。

  • 1/fコーナーと言われる低域雑音が増大するポイントが、低ければ低いほど良いです。
  • 低雑音を謳いながら、高周波(1MHz以上)でしか入力換算雑音が小さくないオペアンプも結構あります。この傾向はビデオ信号用オペアンプで多く見られます。
  • 0.1~10Hzが乗ってなかったとしても、入力換算電圧雑音 対 周波数のグラフを見ることです。例えば1Hzの値を読めば、そのまま電圧値として換算できます。

入力換算雑音は通常定常状態で測定されます(信号が一定の状態)。音楽などでは、信号は常に変動しているため(非定常状態)、この信号と定常入力換算雑音に比例した、もっと大きな雑音(非線形な雑音→歪み)が発生していると予想されます。

追記

0.1-10Hzの換算雑音が低いということは「音声帯域における雑音が少ない」ということだろうと推測しています。

また入力電流雑音という値があり、入力インピーダンス(オペアンプを入力と見た時の入力側出力インピーダンス)×電流雑音=入力換算電圧雑音と等価となりますので、回路構成をみながら両方考慮する必要があります。

駆動能力

入力換算雑音が入力側の性能を表すパラメーターだとすれば、出力側の性能を表すパラメーターが駆動力です。オペアンプ駆動型ヘッドホンアンプ(Chu-Moy等)で特定の周波数に対する癖などは、この駆動能力によるものと推測されます。

オペアンプはNFBをかけることで強烈に負荷を駆動(制御)しますが、これが理想的に働くためには大きな駆動力が必要です。駆動力に制約があるとき、いくらみかけの出力インピーダンスが0.1Ω以下であっても((歪み率でも同じ))、実際にその能力を発揮することはできません

駆動力は次から分かります。

  • 駆動電流(出力インピーダンス)
  • 出力可能電圧範囲

駆動電流は、そのままどれだけの電流を一気に放出できるかという能力を表します。

見落としがちなのが駆動電圧です。コイルとコンデンサが合わさったような厄介な負荷(ヘッドホン等)を厳密に制御するためには、出力電圧が無限まで出せる必要があります。しかし通常のオペアンプは電源電圧はおろか、電源電圧よりずっと小さい電圧しか出力することができません。

レールツーレールと呼ばれるオペアンプは、おおよそ電源一杯まで出力することができ、電源電圧効率の点では有利になります。

例えば、1Vppの矩形波を出力する実験をしたとします。Aのオペアンプは1.2Vppまで出力できるもの、Bのオペアンプは10Vppまで出力できるものです。負荷が1kΩぐらいの抵抗ならば、どちらも綺麗に矩形波を出力します。しかしヘッドホンのようなコイルとコンデンサがあわさった、しかも低インピーダンスの負荷を持ってきた場合、Aのオペアンプでは駆動力不足になり波形が崩れてしまいます。

電源電圧を高くしなければ性能を発揮しないオペアンプ等は、このような原理によるものです。最近は低電圧で高性能なオペアンプが活発に開発されており、これらをうまく利用することで、低電圧・高性能なオペアンプ型ヘッドホンアンプも製作できます。*1

*1 : 実際作成しています。回路図等はいずれお知らせします。

音質改善の指針

オペアンプ型ヘッドホンアンプで音質を改善するためには2つの要素があることが分かります。

  1. 入力換算雑音の小さいオペアンプ使用による、音の明瞭感の確保(濁らせない)。
  2. 駆動力確保による、出力の癖の除去。

入力換算雑音が小さく、駆動力の大きいオペアンプがあれば良いのですが、なかなかそのようなものはありません。オペアンプヘッドホンアンプの出力段にダイアモンドバッファを付ける人が多いのは、ドライブ能力を大きくする意味があります。

同じように、LME49600やBUF634、LT1010などのバッファICを使うことで大きな駆動力を確保し、安定した動作をさせることもできます。LM6172のように出力抵抗が小さく電流の大きいICをバッファ代わりに使うこともできます(参考記事:LT1010とBUF634を改めて比較 by 司さん)。

つまり、A47式のような構成をする場合ならば、1段目に入力換算雑音が小さいオペアンプを、2段目にとにかくドライブ能力が高く安定した(負荷容量に対して安定な)オペアンプを用意することで、より良い音質を確保出来ます。

オペアンプの音に変な癖がない、入力換算雑音の少ない好みのICを初段として用いると良いでしょう。

その他パラメータ解説

帯域(GB積)

Gain Bandwidthというものですが、増幅可能な周波数帯域です。測り方で数倍以上変わってくるためあまり参考にはならないのですが、同じメーカー内なら参考にはなります。

同じ仕様ならば、GB積の高い物の方が音質がよくなる傾向があるようです。しかし、GB積が高くなると発振しやすくなる諸刃の剣です。

安定ゲイン

表に安定ゲインとして書いてありますが、メーカーが「閉ループで何倍動作を保証しているか」という部分の抜粋です。これも表記がまちまちで、同じ「unity gain stable」でも位相補償を付けないと安定じゃない等あります。詳しくは仕様書を見るしかありません。

PSRR, 消費電流

オペアンプは電源ノイズがあるとき、それをそのまま出力に出してしまう傾向があります。電源ノイズに対してどれだけ耐性があるか、電源ノイズを無視してどれだけ出力を安定させることができるかというパラメーターがPSRR(電源電圧変動除去比)です。大きいほど良くなります。*2

消費電流はアンプ1chあたりの消費電流です(出力電流を含まない)。オペアンプはそれ自身の動作で消費電流が変動し、自分自身で電源ノイズを生み出します。ですから、消費電流が小さくPSRRが大きい方が良い……と一般には思われていますが、音質との関係は微妙なところみたいです(関係ありそうなんですけどねぇ……)。

またPSRRは特定の周波数でのみ測定されていることが多く、一般に周波数が高くなればなるほど影響を受けやすい傾向があります*3。これも(あれば)対周波数のグラフを見た方が確実です。

裸ゲイン, 出力抵抗

裸ゲインが大きい方がオペアンプとしての性能は良いことになりますが、これまた測り方で何十倍も異なる上、周波数と共に減少するので目安程度にしかなりません。

出力抵抗はオペアンプ自体の持つ出力抵抗です。発振のしやすさに関係してきます。書かれていないことが多いパラメーターです。*4

「GB積・裸ゲイン・出力抵抗」が小さい方が発振しにくくなります。逆に「GB積・裸ゲイン・出力抵抗」が大きなると発振しやすくなります。

スルーレート

信号の立ち上がりの良さを示します。そのせいか、スルーレートと音の立ち上がり(スピード感?)を関連づける論調がよく見られますが、無関係と言ってよいと思います。

例えば、簡単な位相補償(LPF)をつければスルーレートは激減しますが、これで音が大きく変わることは*5ほとんどありません。一時期、この立ち上がりに拘って音質を聞き比べてみたことがあります。しかし本当に何も関係ありませんでした。

*2 : ほかにCMRRというものがありますが、CMRRとPSRRはほぼ比例する傾向があるので記載は省略しました。

*3 : 120dBのPSRRがあっても1kHzではたった60dBなんてことなあります。

*4 : 書かれていなくても、負荷抵抗値によるフルスイング値があれば計算することはできます。

*5 : 抵抗やコンデンサによる音質劣化を除く

発振注意

リストに示した高性能オペアンプは発振しやすい傾向があります。単純な回路置き換えやChuMoy型で単純に使用すると容易に発振するので、載せ替えなどは安易に行わないようにしてください。発振すれすれで使用すると音質が悪化することは、確認済です。

特に、最近は電流帰還型と呼ばれる通常の電圧帰還型とは使い方の異なるオペアンプが存在します。かなり勝手が違いますので、扱いには注意してください(載せ替えは無理と思ったほうか良いです)。

参考リンク