オペアンプの音質比較@Chu-Moy
注意!! ここに書かれている情報は古くなっています。LM6172はあまり音がよくありませんし、OPA627より安価で良い音質のオペアンプがたくさんあります。
Chu-Moyヘッドホンアンプを使ってオペアンプの音質を比較しました。
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回路図
- 電源電圧8~9V
- 安定に+1倍動作させるために、出力抵抗を1Ω付けました。(非磁性エミッタ抵抗のMPC78を使用)
- 負荷インピーダンスの上昇を防ぐため、Rzを付けました。
- 電源はアルカリ9V電池(006P)です。約8~9V。
- ボリューム、10kA/ALPS ミニデテント。
これは自作ヘッドホンアンプとなるべく条件を揃えるための設定です。*1
評価結果
- Aランク
- (A)LM6171(single)/LM6172(dual)*2
- (A-)OP275(dual), OPA627AP(single)
- Bランク
- AD8066, LM4562(=LME49720), NE5532, OPA2604, OPA2134
- Cランク
- NJM4580, NJM2114
Aランク
AランクとBランクの間には明らかに壁があります。
LM6172が一番ストレートな音でした。次点はOP275。この2つは好みかもしれません。意外だったのがバーブラウンのOPA627AP。妙なクセがあり、音のディテールが潰れます(わずかながらこもった感じがします)。
Bランク
Bランクは音響用として普通です。NE5532がよく使われますが他と比べはるかに安価で癖の少ない素直な音です。音の傾向は好みでしょうが、ランクとしては似たり寄ったりです。AD8066 / LM4562 / OPA2604が多少上ですが(能力も値段も)好みの範疇(一長一短)ですね。
OPA2604は、OPA627と同様に独特のクセがあります。音の分離や明瞭感はOPA627の方が上ですが、癖の傾向は同様です。
注意
LM6172, AD8066, LM4562などの高速オペアンプは、出力抵抗なしでは発振します(もしくは位相補償必須)。詳しくは高性能オペアンプの発振防止をご覧ください。
あと、コンデンサに電解+積層セラミックという組み合わせもやめた方が良いです。特に積層セラミック(コメント欄参照)。
【追試】±9V(18V)での試験
電源電圧が低いと本来の性能を発揮しないと言われているので、正負電源で作ってみました。回路が悪いと言われると困るので、SP型のOS-CON×4というアホな作りになってます。
言うまでもありませんがもはやChu-Moyではありません(笑)*3
【追試】評価結果
音質が大きく変わりました。どのオペアンプでも変化あります。9V単電源での試聴と指標を会わせて書いてみます。
- Aランク
- (A+)OPA627AP(single)
- (A)LM6172(LM6171), OPA2604
- (A-)LM4562(=LME49720), AD8066, OP275
- Bランク
- (B+)NJM2114, OPA2134
- (B)NJM4580, NJM5532, NE5532
全体的に音質が向上しており、その中でもAD8066とNJM4580の2つは飛躍的に音質が向上しています。また電源8V(±4V)ぐらいに下がるとまともに動作しないOPA2604も大きく変わりました。OPA627, OPA2604に感じる曇りのような妙な癖が消えたので電圧不足に起因していたようです。
比較的変化が少ないのがLM6172やOP275です。難しいのがLM4562。場合によってLM6172よりもよく聞こえることがあるんですが、うるさい曲を鳴らすと粗が目立ってしまいます(広がり感が弱い)。
OPA627APとLM6172の一騎打ちなのですが、音の明瞭感でわずかにOPA627が上のようです。ただ値段は取らないということですね。
個別の感想
OPA627, OPA2604
9V駆動(±4.5V)で過小評価していたIC。±9Vもかけてあげれば、実にリンとした立派な音がします。ただ割高ですけどね。
中音(中域)にわずかな癖(曇り?濁り?)があります。あまり気になりませんが、無色透明という感じではないです。音楽っぽい鳴り方という見方もありますし、それが人気の秘密なのでしょうか。(たしかに嫌な感じはしません)
LM4562(LME49720)
LME49720とLM4562はまったく同一の製品です。
9Vではあんまりな感じですが、±9Vでは結構きちんと動作します。秋月で250円のため(LME49720は270円)、コストパフォーマンスは良く、それ以前から人気のオペアンプです。バッファとして使う限り解像度感は、LM6172より一枚上。
いわゆる音楽的な鳴り方がします。OPA的な鳴り方と言うべきか、なめらかな感じというきか、その分解像度感がやや劣って感じることがあります(実際に解像度が劣っているわけではないのですが、味の分だけそう感じてしまいます)。
LM6172, LM6171
9V駆動でも±9Vでも、どちらでもきちんと性能を発揮する結構使い勝手の良いICです。それでも±9V駆動の方が音質は優れてますけどね。まったく味付けのないクリアな音です。ですが音の広がりではOPA627に敵わず。
LM6172とLM6171は同じだと思っていましたが、±9Vで聞き比べてみるとLM6171の方がディテールが綺麗に出ます。意味もなくディアルとシングルがあるわけではないのですね。
LM4562と比べてコケにされることが多いLM6172ですが、消費電力が少なく(2.6mA/ch)、解像度が高めで(音の味付け少ない)、ポータブル用途に開発されたようで電圧が低くてもそこそこ性能を発揮します。他の高性能オペアンプほど発振もしないので個人的お勧めです。
【追試】DACのLPF(電源±9V)での試験
自作DACの多重帰還型LPF(R1=R2=R3=10k, C1=330pf(外部側), C2=100pf(外部側))にて音質評価をしました。-1倍のLPFとしての音質評価になります。回路の都合でモノオペアンプのみ。
- OPA604AP …… 普通に良い感じ。OPA系の中域の独特の癖はあるかな。
- LM6171BIN …… 広がり、明瞭感ともにOPA604より明らかに上。
- OPA627AP …… さらに音の広がりが良くなる。中域のディテールはLM6171と比べ潰れる。
- LT1028(LT1028CN8) …… 広がりはOPA627と同等。明瞭さ・細かな再現度でOPA627に優る。
司さんお勧めのLT1028。千石(@店頭)で買った選別品ではない方ですが、これは本当に良い音がします。LT1028と比べると、OPA627はわずかに音が濁ります。LT1028は本当にクリアで解像度も高く濁りもないです。
OPA627より安いしお勧め……と言いたいところですが、+2倍/-1倍以上でないと動作しませんし、出力インピーダンスが80Ωもあり、しかも6MHz付近で位相が妙なカーブをしているためLM6171(14Ω)よりも発振しやすいのが難点。オペアンプヘッドホンで使用する場合はくれぐれも注意してください(回路設計できるぐらいでなければ使わない方かいい)。+1倍動作ならば、LT1128になりますが司さんによるとまた音が違うようです。あとオーディオ用としてはLT1115とかでしょうけど、LT1028とスペックが酷似してるので、おそらく扱いにくいでしょう。
【追試】LM4562 vs LM6172
SE-U55SXをLM49720(=LM4562)に置き換えようかと思って色々確認してたのですが、LM4562の出る味が強烈に出過ぎて困ってしまいました。あといくつか面白いことを発見しました。
- LM4562はOPA的ななめらかにつないだ感じの音が、LM6172はフラットで粒が細かい音がします。やや粒が粗くも感じることがあります。
- LM4562的な味が付いている音ソースに、LM6171/LM6172を組み合わせせると音が酷い音に感じる。
どうやら世間的にLM6172等の評判が悪いのは後者によるみたいです。再生装置からすべてLM6172系で統一してならすと、素直な音がしますよ。
まとめ
個人的には、LM6172(500円ぐらい)/LM6171をメインで使う予定*4)。シングルについてはLT1028もありますが、じゃじゃ馬のようなやつなので*5、使いこなすための周辺回路による音質劣化と、消費電流の多さを考えると悩ましいところ。
なお、聞き比べてほしい石やお勧めの石がありましたら、コメント頂ければ可能な限り対応します。(常識的な値段で、現実的な経路で入手可能ならば^^)
追記
LT系等の高性能オペアンプ/超低ノイズオペアンプは、ヘッドホンアンプとして使うには少々コツが入ります。あとで時間ができたらまとめますね。