2008/08/19(火)低電圧バッファ回路、失敗作

低電圧(単3電池2本)駆動アンプの一番の問題は、出力を大きく取り出せないことです。Rail to Railというオペアンプを使えば、電源ギリギリ付近まで出力することができます。しかしそれは負荷抵抗が大きいとき(負荷か軽いとき)であって、ヘッドホンのように20Ωなどの負荷をつなぐとあっというまにクリップしてしまいます。

これはオペアンプの(NFB含まない)出力インピーダンスが50~100Ωぐらいあるためで、これを改善するためにオペアンプの出力にバッファ回路を付けるということがよく行われます。

失敗した回路

fail-opamp-buf.png

出力インピーダンスが低く駆動力が大きいエミッタフォロア回路を使って、バッファをさせることを企てました。出力インピーダンスを下げて、低インピーダンス負荷を難なく(電圧低下なく)駆動するためです。

しかしながらこの回路、思った通りうまくは動きませんでした。さてどんな問題が起きたのでしょうか?

正解は明日以降に掲載します。

Q1, Q2はダイオードと同じ働きをしています。D1, D2は1mAの定電流ダイオード(CRD)です。

失敗の内容

±1.2V電源使用時。

無負荷32Ωイヤホン
fail-opamp-buf_01.jpg
fail-opamp-buf_02.jpg

オシロの画像を見れば一目瞭然なのですが、32Ω負荷のとき1Vppも出力できませんでした(右の画像でクリップしている部分が最大出力電圧になります)。RtRオペアンプを使えばもうすこし出力できますので、これでは何の意味もありません。

失敗の理由

fail-opamp-buf_02.png

何が起きているかと言いますと、負荷が小さくなればその分Q3, Q4のコレクタ電流が増えます。コレクタ電流が増えると、ベース電流Ibが増えます。ベース電流が増えると、Vbeが増えます。計ってみると、0.6V程度のベース電圧が発生していました。

また、定電流ダイオードがD1/D2が0.2~0.3Vの電圧降下を生みだし、結局

1.2V - 0.6V - 0.2V = 0.4V

が最大出力電圧となっていました。実際には電池が1.3Vぐらい出力できたため11実測波形は少し大きめです。

試しに入力として0V~2Vぐらいの電圧を与え、電源電圧を±2.5V程度にしてみると、入力電圧をあげるとIaが減り、その分Ibが増えますが、ある時点で(出力がクリップする時点で)それ以上電流が増えなくなります。この時点で、定電流ダイオードが飽和しているものと考えられます。またIaが減ることで、Q1による電圧降下は減り、Q2による電圧降下が増え、結果ますますIbは頭打ちとなります。

電流Iaが変わらない方がQ1による電圧降下が一定して都合が良くなります。と考えると、ダイオード(Q1,Q2はダイオードとしての役割*1)よりも、ダイアモンドバッファ構成にした方が優れていていますね。

そんなこんなでダイアモンドバッファに改造しました。電源電圧が上がったとききちんと出力範囲が広くなったのはダイアモンドバッファでした(でもIbによるVbeの大きな電圧降下が避けられないのですが)。今更ながらダイアモンドバッファはよく考えられた回路だということが分かります。

*1 : 昔はトランジスタをダイオード代わりに使っている製品で見かけました。電流の流せる高速なダイオードを探すぐらいなら、トランジスタ付けた方が良いということだったのか、部品共通化によるコストダウンだったのかは不明ですけど

別の方策は?

2SK170/2SJ74のFETバッファを使うという手があるのですが、1組あたり10mAしか出力てきず、出力インピーダンスも高いために同じ問題に当たります*2。とにかく、低電圧をディスクリートで組むことは大変に困難であることがよく分かりました(汗)

ほかの方法としてオペアンプの多段連結などがあります(A47など)。この方法はバッファに使うオペアンプと、入力段に使うオペアンプの合成方法によっては、バッファ段の性能(入力特性)が影響してしまうという問題があります。*3

まだ検討・研究してみますが、パラバッファ型アンプに落ち着きそうな予感です。

*2 : 2SJ74がディスコンという問題もあります。

*3 : 理想的には信号特性は入力段オペアンプが、出力特性はバッファオペアンプが担うのですが、現実にはそうもいかないようです。

2008/08/05(火)USB-DACをケースに入れた

USB-DACをケース(タカチ製、MX2-8-10)に入れてみました。

pcm2702dac_case01.jpg
pcm2702dac_case02.jpg
pcm2702dac_case03.jpg

きちんと収まるか不安でしょうがなかったのですが、なんとか入ったようです。一部設計ミスにより若干の隙間ができてしまいますが(0.3mmぐらい?)これは許容範囲ってことでお願いします(ぉ

単3電池(オキシライド)は大きさ比較用です。回路規模にしては小さくなっています。手のひらサイズ。

ちなみに、さきほどPCM2702を一生懸命ハンダ付けしてましたが、10枚/30分が限界でした。こちらのサイトを参考にハンダ付けしてますが、平たいこて先ってのがミソですね*1。なれると非常に手早くつけることができます。*2

*1 : 水平に充てると表面張力で余計なハンダを吸い取れる

*2 : 無論ハンダメッキなんてしてませんけど(苦笑)

C74デモ

移動しました。

2008/08/01(金)日記

USB-DAC続報

ほとんどの部品が手に入ったので早速実装してみました。

pcm2702dac_pcb01.jpg
pcm2702dac_pcb02.jpg

細かい問題(RCAコネクタのパターンが若干ずれてる*1等)はありましたが、大きな問題もなく、心配したパターンミスもなく、無事音が出ました。ほっと胸をなで下ろしたところです。

まだエージングもなにもしてませんが、結構いい音してます。試作と若干回路が変わっている部分があるため、エージング後に試作の音と比べながら最終調整ですね。抵抗は諸事情により、進のプレート抵抗になってます(キットはタクマンのREYになります)。

試作品との比較

どうにも「わずかに音が濁るなー」と思って、気になっていた箇所を変更したら(試作の回路に戻したら)やっと本来の音が出ました。記事の回路図訂正しました(RS2の追加)。

*1 : 若干ケースの加工が大変になるかもしれませんがご勘弁下さい(汗)

オペアンプと電池2個ヘッドホンアンプ

オペアンプの仕様と音質の謎を2~3日前に更新しました。読むとオペアンプの仕様と音質の推測法がだいたい分かるのではないかと思います。*2

更新したオペアンプのリストの中に入ってますが、低電圧動作(単3×2本)可能なオペアンプの中でLT1498とLMP7732が優秀です。LT1498はたぶん司さんのオススメなのであちらのブログで語ったくださると思いますから、自分のおすすめLMP7732について語ろうと思います。

FETヘッドホンバッファアンプの廃盤が部品入手難からほぼ確実になったため、ひと月ぐらい前から代わりになるICを探していました。低電圧オペアンプをいくつか入手・試聴した中で、唯一「旧ヘッドホンアンプを越えた」と思ったのがLMP7732です。*3

Zobelネットワークと呼ばれるフィルタを付けないと安定しない上、5V以上の電圧をかけるとICが壊れるのでまだ特攻するのはやめた方が良いです。現在諸特性や音質を検証中で、そのうち記事に纏めます。次期ヘッドホンアンプキットはおそらくこのICがベースになると思います。

*2 : これを参考に、ぜひみなさんも音質の良いオペアンプを探してみてくださいね。

*3 : 微妙に越えたのではなく明らかに上です。ここ1週間ぐらい、LMP7732でばかり音楽を聴いてます。上のDACと組み合わせると、それはそれは上質ですね。

画像消失中

ちょっとした手違いで、ブログの画像をすべて消してしまいました。そのうち復旧させる予定ですので、少々お待ち下さい。

追記

古いHDDから8割復旧*4。残りはどうするかって? …………再撮影(汗)

*4 : SCSI RAIDなために勝手が分からず、読み込むのに相当時間かかりました。x64-OSなんで起動もできず…という感じで。

高音質な バスパワーUSB-DAC の製作 (PCM2702)

はてブ数 2008/07/29電子::DAC/ADC

※2010年8月、リファインした新型PCM2702DACを製作しました

※2009年6月、更なる高音質化改良の記事を書きました

※2009年2月、U4の音質へ影響を追加


pcm2702dac_pcb02.jpg

ヘッドホンアンプを公開した際、HPAだけあっても、まともな再生装置がないと良い音質で楽しめないことが残念でした。良い音を求め、SE-U55SXなどの市販のPCオーディオカードを様々改造し続けましたが、元々の回路以上の実力を出すのは困難が伴います。

そこでシンプルで高音質なUSBDACの設計・製作を行いました。利便性を考えバスパワーとしましたが、「バスパワーだからお手軽な構成」ではなく、「バスパワーだから徹底的に凝った電源回路」が特徴です。

  • Ti製PCM2702E使用。
  • DACとしてはめずらしくDC直結です(カップリングコンなし)。
  • 超低ESRコンデンサ10個、OS-CON10個使用。
  • 超低ノイズオペアンプの選別品、LT1028ACN使用(0.1-10Hz雑音、最大75nVpp)。

目次

続きを読む

2008/07/22(火)続USB DAC情報

回路は確定したのですが、いまもってオペアンプと抵抗を悩み中(笑)。フィルムコンはえいやっでPPSです*1

*1 : もちろん十分聞き比べた結果です。もしお気に召さなかったら、KP1830かスチコンを推奨しておきます。

オペアンプ

あれからずいぶん長いことLT1028ACN使い続けました。かなりエージングも進み安定したと思われるところでの感想。

  • ずっと聞いてると音が温くなってくる。基本的に音が温め。
  • LT1115と比較すると空間再現力(奥行き)で劣る。

何と言っても空間再現力が決定打でした。たしかに1つ1つの音の分離ではLT1028ACNには敵わないのですが、LT1028ACNに感じる「一部の音が消えている感覚」の、どうやらその消えた(比較すると音圧が低めになる)帯域が空間再現に大きく寄与するということが分かりました。*2

LT1028ACNの方が良い音だという可能性は捨てきれないのですが、現時点の判断はLT1115に軍配。ただ、音がぬるくなる原因はオペアンプではなく抵抗にあるような気がします。回路構成やまわりの部品をLT1028ACNにあわせて選べば良くなると思いますが、キリがないのであとは購入者のみなさんが頑張ってください(ぉ

変更

LT1115に戻したら、再び音の濁りが気になってしまいました。本当に2転3転してますが、LT1028ACNの方が良さそうです。音のなめらかさと、解像度が1ランク違うんですよね。LT1115の奥行き感→中域が濁ることによる音圧増加、と考えてよさそうです。*3

ひとつだけ心配は、世間的にはLT1115の音の方が好まれそうだと言うことでしょうか(苦笑)。でもこの構成での頂上目指すならLT1028ACNという印象。LT1028ACNで構成したとき、多くのひとは今まで聴いたことのない音を体験できるんじゃないかな(自分がそうでした)。

*2 : 要するに中域の音圧差です。一番濁りやすい帯域ですので、LT1115が濁ってるだけの気も……(濁ると音圧があがる)。

*3 : 人間の耳は数kHz付近の音圧が上がると、定位が非常によく感じます。

抵抗

ニッコームにしようか、タクマンREYにしようかものすごい悩んでます。REYの10kΩ(前後)を所有してないので*4、入力抵抗比較を再びしてるのですが、非常に頭が痛い。

ニッコームを基準としたとき、高域の伸び(綺麗さ)ではタクマンREYが上なのですが、ニッコームよりも中域が濁るような気がする。さて困った……。

ニッコームはどうも低域(200Hz付近の特定周波数)に妙な付帯音がありますね。濁りとどっちを取るか…。

*4 : むしろ売ってないと思われる

その他

あと原価計算してみました……ひょぇ~~~。こんなに先行出資せねばならないのか。誰だ、何も考えずに性能だけで部品選んだやつは(汗)

そんなわけで頒価は1万5000~6000円を予定してます。キットらしからぬ値段ですが、ご勘弁下さい。

オペアンプ

LT1028ACNで発注しました。通常手に入るオペアンプの中では一番良いのではないかと思います。あやうくPCM2902を誤発注*5するところだったのは秘密です(苦笑)

あと購入時の消費税考えてなかったらしい。

*5 : 本来はPCM2702。

予価 2008/07/29

17000円です。