低電圧(単3電池2本)駆動アンプの一番の問題は、出力を大きく取り出せないことです。Rail to Railというオペアンプを使えば、電源ギリギリ付近まで出力することができます。しかしそれは負荷抵抗が大きいとき(負荷か軽いとき)であって、ヘッドホンのように20Ωなどの負荷をつなぐとあっというまにクリップしてしまいます。
これはオペアンプの(NFB含まない )出力インピーダンスが50~100Ωぐらいあるためで、これを改善するためにオペアンプの出力にバッファ回路を付けるということがよく行われます。
出力インピーダンスが低く駆動力が大きいエミッタフォロア回路を使って、バッファをさせることを企てました。出力インピーダンスを下げて、低インピーダンス負荷を難なく(電圧低下なく)駆動するためです。
しかしながらこの回路、思った通りうまくは動きませんでした。さてどんな問題が起きたのでしょうか?
正解は明日以降に掲載します。
Q1, Q2はダイオードと同じ働きをしています。D1, D2は1mAの定電流ダイオード(CRD)です。
±1.2V電源使用時。
無負荷 32Ωイヤホン
オシロの画像を見れば一目瞭然なのですが、32Ω負荷のとき1Vppも出力できませんでした(右の画像でクリップしている部分が最大出力電圧になります)。RtRオペアンプを使えばもうすこし出力できますので、これでは何の意味もありません。
何が起きているかと言いますと、負荷が小さくなればその分Q3, Q4のコレクタ電流が増えます。コレクタ電流が増えると、ベース電流Ibが増えます。ベース電流が増えると、Vbeが増えます 。計ってみると、0.6V程度のベース電圧が発生していました。
また、定電流ダイオードがD1/D2が0.2~0.3Vの電圧降下を生みだし、結局
1.2V - 0.6V - 0.2V = 0.4V
が最大出力電圧となっていました。実際には電池が1.3Vぐらい出力できたため11実測波形は少し大きめです。
試しに入力として0V~2Vぐらいの電圧を与え、電源電圧を±2.5V程度にしてみると、入力電圧をあげるとIaが減り、その分Ibが増えますが、ある時点で(出力がクリップする時点で)それ以上電流が増えなくなります。この時点で、定電流ダイオードが飽和しているものと考えられます。またIaが減ることで、Q1による電圧降下は減り、Q2による電圧降下が増え、結果ますますIbは頭打ちとなります。
電流Iaが変わらない方がQ1による電圧降下が一定して都合が良くなります。と考えると、ダイオード(Q1,Q2はダイオードとしての役割)よりも、ダイアモンドバッファ構成にした方が優れていていますね。
そんなこんなでダイアモンドバッファに改造しました。電源電圧が上がったとききちんと出力範囲が広くなったのはダイアモンドバッファでした(でもIbによるVbeの大きな電圧降下が避けられないのですが)。今更ながらダイアモンドバッファはよく考えられた回路だということが分かります。
2SK170/2SJ74のFETバッファを使うという手があるのですが、1組あたり10mAしか出力てきず、出力インピーダンスも高いために同じ問題に当たります。とにかく、低電圧をディスクリートで組むことは大変に困難であることがよく分かりました(汗)
ほかの方法としてオペアンプの多段連結などがあります(A47など)。この方法はバッファに使うオペアンプと、入力段に使うオペアンプの合成方法によっては、バッファ段の性能(入力特性)が影響してしまうという問題があります。
まだ検討・研究してみますが、パラバッファ型アンプに落ち着きそうな予感です。