抵抗の場所と音質の謎
抵抗によって音質が変わることを体験している人も多いと思うのですが、どういうとき(回路上でどのような箇所に使われたとき)に音質に影響が大きいのか、経験上分かっていることをまとめておきます。
直列要素と並列要素
これが基本の回路です。R1が音信号に対して直列に入る要素、R2が並列に入る要素です。この場合、R1は音質に大きく関係しますが、R2はあまり影響がありません(R1に比べれば少ない)。そこでR1にだけ音質の優れた音響用抵抗を使用するほう方があります。
知識としてあまり普及していませんが、この現象は昔から知られているようです。次の2つの図をみてください。
左が一般的なボリュームの接続法です。左の図は、書き直すと上の図と同じことになります。つまりVR1の品質によって音質が劣化します。
右図はボリュームの一部を抵抗に置き換えたものです。擬似L型アッテネータ(ないしは擬似T型アッテネータ)という回路になります*1。直列要素を固定抵抗にすることで、VRによる音質劣化を避ける方法です。これは一部の人たちには昔から知られた方法のようです。
ボリューム(音量調整)のカーブが綺麗にならなかったり、ボリューム全体で流れる電流がアンバランスになったりとあまり褒められる構成ではないのですが*2、直列要素がR3のみに固定されるため、R3に音響用抵抗を使用することで安価なボリューム(もしくは小型ボリューム)でも簡単に高音質が得られるため自作アンプなどで時折使用されます。
なおその後の調査により、より優れたボリュームを擬似Tで使用する方が、安物ボリュームを擬似L型にするよりも音が良くなることが確認されいます。*3
オペアンプ回路では?
よく見られる帰還のかかった非反転増幅回路です。増幅率は「1+R4/R5」です。ここでは出力からフィードバックされる信号に着目します。オペアンプ-側は入力端子であるので、R4が直列要素、R5が並列要素になります。R4が大きく音質に影響する一方、R5の音質への影響は小さくなります。
また、オペアンプの強力な負帰還による制御機能は、中間回路の音質劣化を抑制する機能があります。
この図では、音質(劣化)はほぼオペアンプU2で決まります。回路Aの影響は、U2による負帰還でかなり低減されます。完全に無視できるかどうかは、オペアンプの性能と回路Aの相互作用になるため言い切ることはできませんが、回路Aの影響は比較的小さくなるようです。
補足
上の解説で、R2やR5は音質に全く影響しないわけではありません。しかしながら、R1やR4の影響に比べると小さいということは言えます。
どれくらい影響が小さいか試聴してみましたが、最後の図で「回路A」と書かれたオペアンプループ内に使用した抵抗(直列要素)の音質と同じ程度か、それよりもわずかに大きい程度の影響がありました。
もちろん回路のすべてで高級な音響用抵抗を使用するほうが良いに決まっているのですが、コストパフォーマンスを考えたとき直列要素に限って使用するのが良いと思います。また、特に音の味付けを変えたいときは、ここで書かれた影響の大きい部分を変更するのが良いと思います。