2010/07/06(火)LT3080(SOT-223/TO-220)の出力ノイズ検証

LT3080EST(SOT-223面実装品)を使用して小型レギュレータボードを作りました。

回路と外見

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LT3080-mini.png
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部品番号概要型番
U1LT3080 3端子RegLT3080EST(SOT-223)
C110uF 16V X5R/2012GRM21BR61C106KE15L
C21uF 16V X5X/1608EMK107BJ105KA
C31uF 16V Filmcon/3225ECP-U1C105MA5
R1/R2任意DIP穴。1608チップorDIP抵抗
  • 出力電圧は「(R1+R2)/100k」になります。330kΩなら3.3V出力で、1MΩなら10V出力のレギュレータになる計算です。
  • C2に1uFが付いているため、電圧が安定するまで数秒程度かかります。
  • C3にPanasonicのECPU(フィルムコンデンサ)1uFを使用しています。このまま音響機器に繋ぐ場合への配慮です。*1

ただデータシートの要求値は2.2uFであるのでリード線などで延長せず、このままジャンパ等で実装して電解コンデンサなどへ供給してあげる必要があります。*2

このボードから3本のジャンパを出せばそのまま(固定電圧)3端子レギュレータ代わりに使用することも可能です。

*1 : 積セラ/MLCCを使うと音がキンキンしてしまうので。

*2 : 手元で実験する限りはリード線供給でも安定していますが(苦笑)

LT3080の特徴と性能

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  • 100mAのロードで80dBを超える驚異のリップル除去率(出力コンデンサ2.2uF時)を誇るリニアレギュレータで、100kHzにおいても50dBを超えます。
  • VCONTROLから供給される定電流源を使用し、抵抗で出力転圧を設定します。
  • 出力電圧よりも1.2V以上高い電圧をVCONTROLに供給する必要があります。(単電源使用では)低ドロップではありません*3

*3 : うっかり秋月の商品説明だけみて誤解している人が居そうで怖い。単電源の場合0.3V(300mV)は無理です。1.2V以上の電圧を与えないと正しい電圧が出ません。

C2の重要性

データシートみるとコンデンサC2として最大1uFのコンデンサを付けることができると書かれています。実際このコンデンサがどのような役割をしているか、実験してみました。

  • 入力電圧8V(直流安定化電源/トランス式)
  • 出力電圧5V
  • 出力電流約100mA(47Ω抵抗を接続)
C2なしC2=100pFC2=1000pF
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C2=0.01uFC2=0.1uFC2=1uF
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C2がないとき発振しているのは出力容量が1uFと既定値より少ないからです。出力コンを足してあげると改善します。

100pFから順に見ていくと徐々に出力ノイズが減っているのがよくわかります。しかし0.01uF程度までは、高周波ノイズが消えるものの商用電源ノイズ(50Hz)が大きく残っています。このノイズがほとんど見えなくなるのは1uFのコンデンサを付けたときだけです。このことからLT3080は外来ノイズをとても拾いやすいということがわかります。

SETピンは電流源であり、理想電流源のインピーダンスは無限大なので、結果的にそこに繋がる抵抗値のインピーダンスだけを持つことになります。抵抗値は5V=500k、12V=1.2Mとなりますから当然のように外来ノイズを拾いやすくなります。C2に1000pF以下をつけた状態で手を近づけると盛大にノイズを拾いますし、SETピン電圧をオシロで観測すると面白いように商用電源ノイズを拾う様子が観察できます。

ガードパターン等でもある程度対策はできるとは思いますが、ICを覆うようなシールドをしない限り根本的な解決にはなりそうもありません。シールドなしにトランスと一緒の筐体に収めるのは問題のようにすら感じるのですが……。

別にLT3080に限った話ではありませんが、ハイインピーダンスラインのノイズの拾いやすさと、ケースアースの重要性を感じさせる結果となりました。

TO-220品(LT3080ET)での追試

秋月に置いているTO-220パッケージで同じことを検証しました。

条件を同じにするため背面に全く同じチップコンデンサを実装し、C2については1000pFのときのみ確認しました。

  • 入力電圧8V(直流安定化電源/トランス式)
  • 出力電圧5V
  • 出力電流約100mA(47Ω抵抗を接続)
  • C2=1000pF
ベストな位置最悪な位置簡易シールド製作した基板
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SOT-223よりも明らかに悪いという完全に予想通りの結果になりました*4。向きによってノイズの拾い方が盛大に変わります。最悪のときは30mVppを超えるノイズが発生します。同じ時に同じ条件でSOT-223基板でも確認しましたがこのような向きによる変化は起きませんし、ノイズレベルも以前の測定と同じでした。

通常電源として使用するもっと多くの出力コンデンサが付いた状態なら問題がないか確かめるため、KZE 6.3V 1000uFを追加してみてもノイズレベルは変わらず。*5

簡易的なシールド(MX2-8-10で上下から蓋)をしてようやく写真3枚目のレベル。これを見る限りトランスと一緒のケースに(シールドせずに)入れることなど考えられないでしょう。

*4 : DIPな基板に実装したり、IC自体のリードが長いことで、ハイインピーダンスライン(SETピン)の長さが増えノイズを拾いやすいと想像できるから。

*5 : IC自体がノイズを出しているのだから当たり前。入力に電解コン1000uFを入れても同じでした。

音質比較

NJM7805(入出力にOS-CON 100uF)と聞き比べてみました。LT3080が優れてるという結果があればよかったのですが、直流安定化電源から給電したことと、リード線で配線したことが災いしてかどうか、聴覚上もオシロで見る出力波形もほとんんど差がないという結果に(苦笑)

結論

LT3080はCset(C2)なしで使用することなど考えられません*6。ましてTO-220を使用するのは自殺行為に近いと言えるでしょう。

LT3080は音が良いとか言ってる人たちはCsetちゃんと付けてるのかな……。トランスと一緒の箱に入れてる人たちはシールドしてるのかな……。


LT3080の定電流源機能は無視して、SETピンに基準電圧を外部から与えてあげるのが正しい使い方のような気がします……。

*6 : 商用電源ノイズのみにならず、高周波ノイズも盛大に拾ってしまう。電波暗室で使うなら構わないでしょうが……。

頒布

ビスパさんに委託しています。LT3080ETが秋月で250円だし、性能は記事に書いたとおりだしで、果たして買いたい人がいるのかは謎だけど*7、基板つくちゃったので(汗)

*7 : それだって、どこぞのLT3080電源キットよりよっぽど(以下略)