2019/02/18(月)RaSCSIと同人ハードウェアの話、個人的メモ

GIMONSさんが開発されている、Raspberry Pi上でSCSIデバイス(SASIデバイス)をエミュレーションする RaSCSI という画期的なプロダクトに関する個人的メモ

背景

RaSCSI はRaspberry Pi上でSCSI/SASIデバイスをエミュレーションするソフトシェアです。

SCSIはHDDなどを接続するための規格で、日本製の古いコンピューターであるX68000やPC-98、FM-TOWNS等で使用されていますが、SCSI規格自体は現在のPCでは使われなくなりました。

RaSCSIを使うことで、HDDイメージをラズパイのSDカード上に用意して、実際のオールドPCから直接HDDイメージを操作(マウント)することが可能になります。

RaSCSI基板

SCSI接続を行うためにはSCSIコネクタを持った基板(ラズパイのGPIOに接続するたの)が必要になります。

この回路図は、製作者のGIMONSさんが公開されており、当初回路図そのままの基板の有償頒布に制限がありませんでした。GIMONSさんは基板を頒布していなかったので、いわゆる同人ハードウェア作家の方が、回路図ほぼそのままの基板を作成して有償頒布しておりました。

だいたい1万円超え。

結果として、あっという間に複数の基板製作者が現れ、大量に頒布されていることを考えると、結構魅力あるお値段設定なのではという気もしますが……。

その結果としてどうなったか

独自の変換基板を有償で頒布する方へ

下記の条件に従う限り作者への許諾は必要ありません。

従いかねる場合は有償頒布をご遠慮いただけますようお願いします。

1.頒布価格

基板製作費 + パーツ費用 + 運送費 +(社会通念上一般的な)手数料。

2.回路図の公開

基板と同時もしくは別途ホームページ等から基板の回路図を提供すること。

3.X68000実機での検証結果の公開

RaSCSI公式ページより

雨降って

RaSCSIという画期的なプロダクトを作成したGIMONSさんは、残念ながらハードウェア(基板製作)にはそれほど詳しくなかったし、有償で基板を頒布して儲けようという気も全くなかった。

RaSCSI基板へのニーズは高く、結果RaSCSI基板を作成して有償頒布される方がたくさん現れ、結果としてそれはRaSCSIの普及に役立った。

しかしながら、たくさんある基板の数だけ動作検証を行おうとすると、GIMONSさんの負担になってしまったというところでしょうか?(妄想)

結果、基板頒布者で協力して動作検証結果をまとめていこうという方向でまとまったみたいですので、雨降って地固まるでしょうか。

蛇足

回路図の著作権が認められるのかという非常に難しい問題がありまして……。仮に回路図に著作権が存在しないとなると、GIMONSさんの同人ハードウェアに対する制限事項の法的有効性は結構難しい議論になります。*1

道義的には、GIMONSさんの意向に従うべきだと思います。

というかその前に値段がですね……。*2

GIMONSさん自身が公式基板を製作中のようで、事情は変わりつつあるようです。それに、基板製作ノウハウを持つ人の参入も時間の問題でしょうし……と思っていたのですが、今回の一件が参入障害にもなりそうなので難しいかも。

*1 : RaSCSIというソフトウェアプロダクトのライセンスとしては効力を持ちますが、そのソフトウェアの使用者が基板頒布者でなく基板購入者であることから、ライセンス違反は基板購入者であり法的賠償義務を負うのは基板購入者になってしまう……かもしれない。

*2 : GIMONSさんはライセンス料はいらないからその分安く頒布してくださいという立場みたいです。