Prodigy 192VEのオペアンプを交換
Prodigy 192の廉価版として、デジタル入出力などを省略したサウンドカードProdigy 192VE。実売8千円前後ながらなかなかの高音質であり、気に入って使っていましたが、ヘッドホンアンプ作成後「どうも音が歪む」感じがしてオペアンプの載せ替えに挑戦してみました。
Prodigy 192VEの高音質化
192VEにはオペアンプとしてNJM4580が使われています。
NJM4580*1は決して悪いオペアンプではないのですが、自作ヘッドホンアンプで聞いていると、どうにもオペアンプに起因すると思われるうるささがあります。複数の音が混ざって聞こえてしまいガヤガヤしてしまいます。
オペアンプと言えばバーブラウンの OPA2604(約550円)や OPA2134(約300円)が有名ですが、最近登場でそこそこ評判のいいアナログ・デバイセズの高スルーレートオペアンプAD8066ARZ(約600円)*1に載せ替えてみました。(秋葉原だとサンエレクトロで売ってます。)
改造のポイント
Prodigy 192VEの出力部の回路図は次のようになっています。
- この回路図は出力チャンネル用です。
- 部品番号は、Out1のものを記載しています。
- Out1-2, Out5-6はヘッドホン出力との切り替えリレーを含みますが、回路図上では省略しています。
チャンネル | L-ch | R-ch | オペアンプ |
---|---|---|---|
Out1-2 | C42,C48,C54,Q5 | C43,C49,C55,Q6 | U9 |
Out3-4 | C44,C50,C56,Q7 | C45,C51,C57,Q8 | U10 |
Out5-6 | C46,C52,C58,Q9 | C47,C53,C59,Q10 | U11 |
Line IN | C41,R52,R53 | C39,R46,R47 | U7→U8 |
MIC IN | C36,R37 | -none- | U6 |
ロットにより回路図や部品番号が違うことがありますので、改造時は必ず自らご確認ください。また改造は各自の責任で行ってください。著者は一切の責任を負いかねます。
出力チャンネルであるU9, U10, U11をそれぞれAD8066に載せ替えてみました。また、出力用カップリングコンデンサC48,C49(他チャンネルでは相当品)をジャンパーしてみました。この改造により最大1.5mV程度のオフセットが出力される可能性があります。高出力アンプなどに接続する場合は十分にご注意ください。またC42等はスルー(削除)できません。*2
オペアンプの外し方
無理矢理外してパターンを切り取ってしまわないように十分注意してください。サンハヤトの表面実装取り外しキット*3があれは完璧ですが、40W以上のはんだごてを使って、ハンダを上側下側ともにたっぷりたらして4ピンともブリッジした状態で交互に十分に熱すれば外すことができます。
よく熱した状態で、小さいマイナスドライバーなどを用いて少し力を加えます。このとき無理な力を加えないようにくれぐれも注意してください。
音質評価
一度にかつ正確に評価するために、Out1-2をNJM4580のまま、Out3-4をAD8066に載せ替え、Out5-6をAD8066に載せ替えてかつカップリングコンデンサをバイパス(ジャンパー)した状態で、ドライバのオーディオ出力をクローン設定にして、Out1-2, Out3-4, Out5-6 で全く同じデータを再生。音量もすべてMaxの状態で評価しました。
なお再生ソフトからの出力にはASIOを用いました。
NJM4580
- 決して悪い音ではない。
- AD8066に比べるとガヤガヤとした音。
- J-POPやオーケストラなど多くの楽器が一度に鳴ったときに、複数の楽器の音がまざりうるさく聞こえる。
- 中域の音が若干細く(力感なく)感じられる。
AD8066(カップリングコンあり)
- NJM4580とは違い、ガヤガヤとしない。
- 複数の音が一度に鳴ったとき、それぞれの音をきちんと区別して聞き分けることができる。いわゆる音の解像度が高い。
AD8066+カップリングコンのバイパス
「AD8066+カップリングコンあり」と比較。
- 低域が1段下に伸びている。低音がはっきりと再生される。
- 音の明瞭さ、クリアさが増している。高域の音の歪み感が全くなく超高域までストレートに伸びきっている。高域のかすれ感が全くない。
- 音が広がりが増している。左右だけでなく、前後の定位感がある。
逆に言えば、カップリングコンがあると次のような感じです。
- 若干ながら高域に歪み感を感じ、高域がやや削れている(丸くなっていると言うよりはガリガリっと削れている印象)。高域のかすれ感がある。
- 音の明瞭さがやや悪く、音の広がりが小さい(狭い)。
結果
大満足という結果になりました。特にAD8066+カップリングコン削除で別世界の音という感じです。高域の綺麗な伸び具合や低音の素直さは格別です。自作ヘッドホンアンプ(カップリングコンなしDCアンプ)と組み合わせるとピアノやストリングのリアルさが身震いするほどです。
二~三世代前のプロ用オーディオカードよりいい音してます。
追記
onkyoのSE-U55SXを入手したので聞き比べたところ(SE-U55SX無改造状態)、192VEの歪み感が気になってしまいました。この「歪み」はDAC直後のカップリングコンデンサC42~C47(おそらく音響用ではない)によるもので、これを載せ替えたところ解消しました。
写真のとおりOS-CON(10v47uF)を突っ込みましたが*4、オーディオ用電解コンデンサとかなら何でも構いません。使用可能なのは6.3V/10uF以上のものです。物理的に小さいコンデンサを選んでください。
さらに改造(v2)
ADC/DACチップのアナログ電源まわりのコンデンサを載せ替えて、同時にノイズ対策をしました。出力抵抗の100Ωをニッコームのプレート抵抗に置き換えました。SE-U55SX(改)と同等以上の音質になりました。
※他の記事では、この状態を192VE(改v2)と書きます。
最終改造(v3)
オペアンプ電源のコンデンサをうち1組をUTSJ 16v470uFに交換しました。ほとんど変化ないかと思ったのですが、かなり効果的で音の透明度が増しました。
R56, R62, R68をそれぞれニッコームの抵抗RP-44C、10kΩがなかったのでR62/R68については多摩電気工業のLFに置き換えましまた*5。がやがやとした曇りが非常に透明度の高い音質になっています。
DAC音質比較も参照してください。