2009/02/01(日)謎の医薬品 「リキポリンD」
ことの発端
「いやー、こんなの手に入れたんだよー」とみせてもらったことに始まります。
この手の栄養ドリンクはご縁があまりないので、一瞬リポビタンD?かと思ったのですが、よくよく読むと「リキポリンD」。リキポリンD? 発音してみるとえらく突飛な名称です。
リポビタンDの写真はAmazonでご確認ください。
明らかにリポビタンD(医薬部外品)を意識した作りですが、成分はどうなってるのか。
アミノエチルスルホン酸1000mg? 1000mgってどこかで聞いた表現だなーと思って調べてみるとタウリンのことじゃないか(笑) ほかの成分もよくよく見比べてみると似ています。わざと表記名を変えてるのか、別物質なのかは判断できかねますが、ぱっと見では似せているように感じますね。
成分 | リキポリンD | 成分 | リポビタンD |
---|---|---|---|
硝酸チアミン | 10mg | チアミン硝化物 | 5mg |
塩酸ピリドキシン | 10mg | ピリドキシン塩酸塩 | 10mg |
ニコチン酸アミド | 25mg | ニコチン酸アミド | 20mg |
アミノエチルスルホン酸 | 1000mg | タウリン | 1000mg |
無水カフェイン | 50mg | 無水カフェイン | 50mg |
ゴオウチンキ | 2.0mg | - | - |
- | - | リボフラビンリン酸エステルナトリウム | 5mg |
- | - | イノシトール | 50mg |
これは、あれですね。中身はいわゆるジェネリック医薬品みたいなものですね。
リポビタンDの成分配合等に特許があるかどうかは分かりませんが、どちらにしても20年経てば同一成分の商品を作っても問題ないわけで、なるほどこういうものが出てくるのかと思ってしまいました。
それにしてもちょっとあからさますぎるよーと思っていたら、案の定、一悶着あった模様。
リキポリンDが商標登録されている
リキポリンDなんて突飛な名称で商標登録なんてそんなことが通るのか!? 怒られないのか!?
調べてみると、当然のように怒られているようです(笑)
怒られているというのは異議を申し立てられているという意味です。商標結審データベースに申し立てられた異議や、結審の内容がかかれているので、かいつまんで読んでみましょう。
申し立て人の主張
本件商標と引用商標とは、ともに「楕円の円周に突起を設けた図形を青色長方形の中央に白抜きにて表す」という共通した特徴を有するため、その外観において類似し、かつ、指定商品においても同一又は類似する。
商標結審データベース
本件商標ってのはリキポリンD、引用商標ってのはリポビタンD等のことです。以前に登録されている商標と青に白抜きという特徴が似ていると主張しています。
上述の「青色に白抜きの図形」を表したラベルは、申立人の業務に係るドリンク剤にのみ使用されているものであり、このような状況の下で、本件商標がその指定商品である薬剤(特にドリンク剤)に使用されれば、取引者、需要者をして出所の混同を生ずるおそれがあるのは明らかである。
商標結審データベース
ラベルが似ていることを前提として、似たラベルを張ったドリンク剤があれば、リポビタンDと混乱して間違えて買ってしまう人がでるではないかと主張しています。
(画像引用元:商標結審データベース)
争点は間違えて買ってしまうかどうかですね。
判断
どう判断されたのかというと異議は却下されています。2つの商標は違うものであると。
特に違うと判断されたポイントは
- 黒字の1段のリキポリンD
- 上段に黒字で「滋養強壮・栄養補給」、その下に赤字の2段でリポビタンD
のようです。段組の違いと色遣いの違いが異議棄却理由として大きかったようです。
その他、読み方についても判断していて(強調は当方にて付加)
本件商標から生ずる「リキポリンディー」の称呼と、引用商標2から生ずる「リポビタンディー」の称呼とを比較するに、両者は、語頭の「リ」及び語尾における「ンディー」の音を共通にするとしても、第2音ないし第4音の「キ」「ポ」「リ」と「ポ」「ビ」「タ」の音に明らかな差異を有し、両称呼は、十分に聴別し得るものであり、観念においても、比較すべきところがない。
商標結審データベース
音の発音が似てないということを述べています。たしかにリキポリンって突飛すぎる発音ですからね。でも文字として並べたときの形状の類似はいいのか?(笑)
リギポリン リポビタン
よく考えると
これって、異議審判ってことは堅苦しく法律に則って審判したんですよね。審判官の名前が3人あるんですが、3人でリキポリンとリポビタンの図をよく見比べて違いがあるかないか、「キ」「ポ」「リ」と「ポ」「ビ」「タ」の発音がいかに乖離してるか真剣に討議したんですよね。きっと、3人でみんな発音してみたりしたんだろうなあ。
その情景を見てみたい気がするのは自分だけ?(笑)
結局
2006年11月24日登録、3ヶ月後の2007年2月23日に異議申立がされて、それに対する決定が確定したのが約1年後の2008年3月24日。わりと最近の話です。想像でしかありませんが、この戦い、まだまだ続くのではないでしょうか。
難しいことはさておいて、ボトルを2つ並べて見てみると
混同する心配はあまりなさそうに感じます。
そういえば、最初に出した箱ですけど
3段になってますよ! Dが赤字ですよ!!
追加
この会社の商品一覧ページをみてみると、
- ハイミロン21
- せきどめコデン錠A
- 新ゴルデンリポ-30
- アリナビタラインEX
- ……
おぃおぃ(笑)*2
追加情報
リポビタンは中国でも販売されていて、中国の商品名は「力保健」と書くそうです。これをそのまま日本語読みするとリキホケンになるという(笑)*3