2006/09/06(水)電流駆動アンプの解析

俗に言う山本式電流帰還アンプの作成記事および解析記事です。

※注意。少なくとも電圧駆動の伝達関数が間違っています。よってこの記事の電圧駆動に関する言及は正しくありません。

過渡応答特性

電圧駆動アンプ、電流駆動アンプの回路図をそれぞれ次のようにして解析を行いました。

voltage_amp.gif

電圧駆動(電圧出力)アンプ

G(s)=\frac{V_o(s)}{V_i(s)}=\frac{A}{R_o}\cdot\frac{1}{Ts+1}

T=\frac{L}{R_o}\cdot\frac{R_s(A+1)+R_o+R_f}{Rf+R_s}

current_amp.gif

電流駆動(電流出力)アンプ

G(s)=\frac{I(s)}{V_i(s)}=\frac{AT}{L}\cdot\frac{1}{Ts+1}

T=\frac{L}{R_s(A+1)+R_L+R_o}

ステップ応答

1 - \exp(-\frac{1}{T}t)

電流駆動の場合、スピーカー両端電圧を最終出力としてみれば

R_L(1 - \exp(-\frac{1}{T}t)) + \frac{L}{T} \exp(-\frac{1}{T}t)

となります。

シミュレーション

周波数特性も含め、OpenOffice or Excelでシミュレーションしたものがこのファイルです。ラジカセ用(PCスピーカー用)パワーICなどでありそうな値をパラメーターとして設定したときの周波数特性を見てみると

ftoku.gif

のような感じです。色々パラメーターを設定して確認してみれば分かりますが、だいたい次のような特徴が挙げられます。

  • 電流駆動は立ち上がり特性が大変よい。場合によっては時定数Tが2桁ぐらい違います。*1
  • 電流駆動の方が位相特性が良くなる傾向にある

本家のサイトの記事にもありますが、過渡応答特性=入力波形に対する出力の追従性は電流駆動の方が比較にならないほど優秀です。逆に言えば、電圧出力ではどうしても再生波形が歪んでしまいます。

*1 : 電源電圧を考慮していないシミュレーションなので、実際には特性は多少悪化しますが、電圧駆動よりは断然良いことに間違えありません。

2006/09/05(火)電流出力(電流駆動)アンプ

F通スピーカー改造完了

色々弄りましたがスピーカー無事改造終了しました。

f_speaker_hontai.jpg

これで、わざわざメッセージやメールのお知らせ音のためだけにSansuiアンプの電源を入れるというナンセンスから解放されます。基盤の方はというと、コネクタとメインICと出力のZobel用のフィルムコンデンサを引き継いだだけで、ほとんど新調になりました。

kiban.jpg

オシロスコープでみると音量を上げたときに電源電圧が数mV~10mV程度(出力に応じて)揺らぎますが、まあ良いことにします。OSコンのエージングも済んでないですし変わるかも知れませんから*1。電源に3端子レギュレーターを使っているのですが、コンデンサ容量は1次側と2次側、どちらを大きくすべきなのかわからずじまい。ハンダ付けしてから思い立ったので実験もできず、どっちがよかったのか未だに謎です。

ACアダプタが分解できるなら、中の整流ダイオードをショットキーバリア(SBD)にするんですが、分解は無理そう(^^;;

音について

アンプ単体では若干ラウドネスがかかった感じになっています。かまぼこ型のスピーカー特性と合わせてベストマッチです*2。聞いていて過不足ない感じ。改良版で試しにFE83Eなバックロードホーン(自作)を駆動させてみましたが、小型アンプ+ラジカセ用ICだということを感じさせない、なかなかに良い鳴りっぷりでした。PC向け安物ユニットを駆動させるには勿体ない気もしますが、まぁいいかな。

  • 風笛をゆったりとやさしく鳴らしたり
  • ストリングがやたらきれいに出たり
  • ボーカルものは声もきれいって感じで
  • 定位もしっかりしてます
  • まあ本格的なディスクリードアンプ+スピーカーには負けますけど、少し高いぐらいのPCスピーカーでは絶対楽しめない素直で豊かな音です*3

プラスチック箱なのであとで吸音材入れようと思います。あり得そうなオチとしては、気に入らなくなって小さい箱を造って、そしてユニットも取り替えて、気づいたらアンプ用のケース作って……とかでしょうか(苦笑

回路図や解析などはこちら

*1 : 最低100時間

*2 : 多少かまぼこ=大抵のフルレンジスピーカーで試聴上さほど問題ないように回路を少し変えてあります

*3 : 電源コンデンサ1000uF以上*10とか強烈に強化してあげれば、もっといい勝負するかもしれません

2006/08/22(火)電流出力アンプの解析

この前の続き。広域特性をもちょっとフラット(おだやか)にしようということなのですが*1、いくつか方法を思いつくものの、いかんせん目安がない。というけとで、改造PCスピーカー用の解析をするために、今回の回路図に対して直接立式してみました。

v_o=A(v_i-v_s)
v_o=\frac{1}{c_1}\int_0^t idt  + R_Li+L\frac{di}{dt}+(i+i_f)R_s
v_o=(R_f+R_g)i_f + \frac{1}{c_2} \int_0^t i_fdt + (i+i_f)R_s
v_s=v_o-i_fR_f

を解いて、伝達関数H(s)=\frac{I(s)}{V_i(s)}を求めればいいのですが……。面倒になったので、今日はここまで(笑) これを見ている学生がきっと解いてくれるでしょう(ぉぃ

*1 : 考えようによっては十分フラット=電圧出力では絶対に実現できないフラットなのかもしれないけど

2006/08/18(金)電流帰還アンプ(電流出力アンプ)

電流出力アンプ

すごい昔頂いたけF社製PC用スピーカーを普段使っています。アンプの電源いれてもいいのですが、画面に対して左右においてないのでPCのときはPCスピーカー。

比較的素直な(ラジオ的な)音で嫌いではないし常用しているのですが*1、いかんせんかまぼこ(高域と低域がでない)*2。というわけで、中の基盤を丸々取り替えて電流出力アンプを作ってみました(通称「山本式電流帰還アンプ」)。

なかなか面白いです。PCスピーカーらしかぬ音がします。というわけで、今回は簡易報告メモ。アンプ(パワー)ICはTA8217P

  • 定位もしっかりして、高域もハッキリ出て見違えるようです。(若干出過ぎかも)
  • 試しにFE83EなBHスピーカーにつないでみたら、ラウドネスがかかりすぎたような変な音がして気持ち悪かった。中域の音がすっぽり抜けた感じ。
  • 電流駆動なので、スピーカーのインピーダンスが上昇する低域と高域のレベルがあがる傾向にある。この特性から考えると貧弱なかまぼこスピーカーユニット向きよって、FE83Eのようなまともな(ましてハイ上がりな)ユニットにつけると悲惨。
  • まともなユニットで使いたかったら、インピーダンス調整用に抵抗(8Ω~20Ω?)や抵抗+コンデンサ*3をスピーカーに並列に付けて、その電流も帰還抵抗に入れる必要があると思われるけど、Cut and Tryになることは間違えない上、電流出力アンプの特徴である素早い立ち上がり特性も若干失われそう……。*4

あと電源。ACアダプタから直接2200uFのコンデンサで平滑化してるのですが、オシロでみると20mV程度のリップル(商用電源周波数)が出てる……。10000uF~20000uFを付けるか、簡単でもいいから安定化した方がいいようです。どうもSNが悪いなぁーと思ったら(^^;;

使用中(追記)

ちょっと回路を対策する時間が取れないので、イコライザでハイをだだ下がりに補正して聞いてる(使用してる)のですが、すごいですねこれは。オーケストラが聴けます。音の定位といい、広がりといい、全体の鳴りっぷりといい、こんな安物PC用スピーカーでこれだけの音がでるなんてほんとに恐ろしいことこの上ないです。

ちなみに。ネットを検索していると、DFなる値(限定された条件の下で使える簡易式)を持ち出して、低域が制動されないとか言っている方がいますが、大嘘です。伝達関数を立ててシミュレーションを行えば、電流出力では入力波形に従って強烈にボイスコイル電流が制御されることがすぐに分かります。(←機械的な部分と電気的な部分を混同して記述していました)

さらに追記

電流駆動方式の場合、低域の機械的共振に対して(ほぼ)無力であることを確認しました*5。単純に電圧駆動、電流駆動のどちらが良いかと言われれば一長一短ですが、PC用スピーカーの改造法としては電流出力は十分魅力的だと思われます。細かい考察はこちらの記事

追記

電流駆動アンプの製作という記事を書きました。最新情報になりますご参照ください。とどのつまり、F特をフラットにしてあげれば、凡庸なスピーカーユニットは例え電流駆動しても凡庸な音がします。

*1 : 2wayのPCスピーカーの中には気持ち悪い音がするものが結構あるのです……

*2 : 手持ちアンプ+自作スピーカーと比べる方が悪いという説もあるけど(苦笑) あと、電源スイッチが電源のスイッチでははなく電源ランプスイッチという仕様が嫌になった<電気の無駄

*3 : Zobelネットワーク

*4 : 後日計算してみます

*5 : ただし、コメント欄で揚げられたサイトの考察は、理論的道筋として正しいとは思えませんのでご注意を

2006/07/08(土)というわけでエージング

これまでの経緯

1万オーバーで入手した故障品のサンスイのアンプAU-D907Limited(リミテッドモデル)を修理。何せ30年モノです。

  • とりあえずサポートセンターから回路図を購入する。たしか2000~3000円。
  • プリアンプ部、パワーアンプ部のコンデンサをすべて ニチコンのMuse FG/FX に交換する。計数十個。
  • 消耗しそうなトランジスタも軒並み交換する。
  • これまた消耗している半固定抵抗も軒並み交換。
  • ドライブ段Trの故障と気づき、交換して無事修理。関連して焼けていた抵抗も修理。
  • 修理中のミスにより終段トランジスタを焼いたため、サンケンのLAPT-トランジスタ(アキシャル品)をキャノン型のところにムリヤリつける(下写真)。
  • 電源のダイオードをSBD(ショットキーバリアダイオード)に交換。当時耐圧200VのSBDが小売されてなかったため50本袋買い。*1
  • アイソレーターを外して遊んでいたら、アンプが火を吹いて(一瞬炎が見えた)沈下。終段トランジスタおよび9N-OFC巻線エミッタ抵抗1個が死亡。
  • さらに終段トランジスタを交換。
  • (この記事より後日)NFB抵抗および直列に入っている抵抗をREYに交換。音の混ざりがだいぶ解消される。

コンデンサ、SBD、抵抗交換により初期状態より相当音が良くなっています。

amp_final_tr.jpg
amp_final_tr2.jpg
amp_final_tr4.jpg

振り返れば

修理・改造だけでも結構なお金も手間もかかっている思い入れの強いアンプです。過去の記事を振り返ると恥ずかしくなるくらいやっていることはムチャクチャですが(苦笑)、そのおかげで色々学ばせてもらいました。

この先も当分壊れることはないと思うので、有効に使ってくれる人のところで余生を過ごしてもらおうと思ってます。

*1 : いまだにたくさん残っています。

一応完了したので

AU-D907Limitedを5日間ぐらい電源入れて放置。危険なので、アイソレーターも元に戻しました(汗)。鳴らしてみると音が硬い……。サンスイお得意の中域の厚みがありません。とてつもなく高域が澄んで綺麗なのですが、それだけです(苦笑*2

どうにもおかしいなぁー……、音が硬いなぁー、「つまらない音だなぁ」*3とか思いながら鳴らし込むこと2~3時間。やっとまともに鳴りはじめました。α707にも言えることですが、どうにもサンスイのアンプ(707以上?)はスピーカー負荷などをつけて最低1~2時間ならさないと本来の音がでないようです。これもまた毎日ならしているアンプなら違うのでしょうが、そうでない場合は特に。

というわけで、まだまともに試聴報告できません(笑)

*2 : ちなみにスピーカーに耳を近づけても、ほんとうにかすかなノイズしか聞こえません。SNは高いですけどねー。

*3 : 音としては低域~中域の厚みが足りないのですが、主観的に表現すれば「元気でノリノリの明るい曲」を優等生が音階どおりに歌ってるような感じの「つまらなさ」があります

ヤフオクを眺めていたら

おっ同じD907 Limitedジャンクが……。いやそれ自体はめずらしくないのですが、たしかこれを出品されている方って、ジャンク(故障)アンプを落としまくって修理して再出品してる方*4だったと思うんですけど……*5。さて出品の文章をよく見てると……

数年前に屋外で音楽を聞こうと、片チャンネルにだけスピーカーをつなげて鳴らしていたところ、パワーが出なくなり壊れてしまいました。

……説明文の真偽はともかく、ヤフオク内の修理屋さんが修理を諦めたアンプとはあまりに怖いのは私だけ?(汗

追記

7250円で終了してました。あの修理屋さんが競らなければジャンク品はそれぐらいで落とせたっことですよね……(なんか悔しい

*4 : 評価の履歴を見ればわかりますが……

*5 : ジャンクを落とそうとすると競ることになって、無意味に高くなってしまうからよく覚えている(-v-