TA2020と低音の量感
AC電源(トランス式) vs スイッチング電源
世の中を検索するとTA-2020をスイッチング電源で使用している人があまりに多いので*1、まともな(電源平滑用)コンデンサさえ乗せればまともな音が出るのか、追加検証してみました。入力カップリングコンデンサはフィルムコンの2.2uF、入力段帰還抵抗20kΩ+20kΩ(1倍)です。
- PC用スイッチング電源12V(12A) → MUSE FX 4700uF×2
- 13.5V 1A ACアダプタ(トランス式) → 3端子レギュレータ(LM2940/12V) → MUSE FX 4700uF×2
平滑コンデンサなし(TA-2020直前についているOSコン100uF×2のみ)と比べると、以前の試聴と比べて音の綺麗さは増した感じで健闘しています。低音の力強さは「さすが」と言うべきでしょう。*2
続いてACアダプタ。さすがに低音が軽くなってしまいますが、音の綺麗さとゆったり感や表情など質的な面ではスイッチング電源はACアダプタ電源(トランス式)に及びません。やっぱりトランス電源には勝てないですねぇ……*3。
というわけで、アンプで音質で求めるならAC電源(トランス電源)にしましょう*4。なお整流用にショトキーバリアダイオード(SBD)で音は変わるか?を使用するとなお良いです。
トランス電源では電流量がスイッチング電気ほど大きくとれないため低音が不足しがちですが、低音の不足は下記を参考にしてみてください。
入力コンデンサ対決
この項目には入力コンデンサを変更して音の違いを楽しむという実験結果が書かれていますが、入力カップリングコンの容量を増やすことは大変危険なのでおやめください。ここにかかれていることは、あくまで実験です。
すべて100uFです。電源はACアダプタ(トランス式)。
コンデンサ | 音質 |
---|---|
ELNA TONEREX | 全体的に音が軽く、あえて悪く言えばスカスカした感じ。 |
Nichicon VX | 非オーディオ用コンデンサ。歪んだ音がしました……。 |
一般用コンデンサ | 付けない状態*5よりはマシですが「ただ鳴ってる」という感じです。 |
Nichicon MUSE FG | 低音の量感と中低音の厚み(量感)*6と高音の伸びが良い感じです。 |
OSコン | ハンダ付けせずに使用。キレ(締まり)のある低音があり、音全体が非常にクリア。かなり良い! |
で、元々音がクリアに鳴るこのアンプを一番活かすのはOSコンという結論に(笑) 本来OSコンをカップリングコンデンサに使ってはいけません(とメーカーも言っています)。ここに書かれているのはあくまで実験です。
MUSE FGの量感も好きですが、これが味付けなんだなーと思い知った感じですね。MUSE FGよりMUSE KZがいいのかもしれませんが持っないので試せてません。あとどの程度までコンデンサ容量を下げても不足ない低音が出せるかも不明です。
低音が出ない原因
本来D級アンプならば出力段は単なるスイッチをしているだけですので、スイッチング電源を持ってきても音質は変わらないはずです。同じ理由で低音だけ弱いなんてこともあり得ません。入力カップリングコンにしても元々の2.2uFで十分なはずです。
TA2020のデータシートによると内部にオペアンプを持っています。
このオペアンプの電源は、これまた内部の5Vレギュレーター(30pinから出力)から与えられていて、カマデンのキット等ではこの5Vがそのままアナログオペアンプ電源(7,8pin)となっています。しかもこの5V電源はデジタル部電源(2,3pin)と共通になっています。
よって
- 低音が足りない理由は出力段スイッチによる電源のゆらぎがそのまま5V部に回り込んでいる。
- 音の明瞭さが足りない原因は、デジタル部電源からアナログ部電源へのノイズ回り込み。
と考えられます。
低音の改善法
原因が分かれば対策を取ることは簡単です。
方法1
カマデンのキットではV5A(8pin), AGND2(7pin)の間に1uFの電解コンデンサが付いているのですが、これを100uF程度の低ESRコン(音響用やOSコン等)に変更することで低音のゆらぎに強くなります。
方法2
さらにパターンカットを行い簡単なCRフィルタを組むとよりよいでしょう。RやCの値をあまり大きくすると電源投入時にDC漏れしますので、大きくてもこの程度に。
方法3
より本格的に改善させるなら、7805等の3端子レギュレータを使用して、V5A(8pin)/AGND2(7pin)の電源を独立に生成します。この場合V5Aへの接続パターンをカットしてあげる必要があります。12V入力側に直列に抵抗(1~100Ω程度)を入れて、RCフィルタしてあげるとより良いでしょう。もっと本格的にするなら、Lに100uH、Rに220Ωぐらい、Cに470uF/16V~を持ってくると良いと思います。これぐらいすればスイッチング電源でも結構綺麗に鳴らすことができると思いますが、(RLCフィルタの)実機テストはしてませんのであしからず。
デジタル電源は相変わらずTA2020内部レギュレータを使用します。これはデジタルノイズの回り込みを防ぐためです。
注意
電源部の容量を増やすと電源投入時の瞬間的なポップ音が大きくなり、場合によってスピーカー等を破壊する危険があります。気になる人は遅延ミュートやスピーカー出力スイッチなどを取り付けてください。
……100uFより上は絶対に試しませんように。