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2007年12月05日の記事

SE-U55SXの電源と出力ノイズの謎

はてブ数 2007/12/05電子::SE-U55SX

本体内部からノイズ音

基本的には高音質なSE-U55SXですが、いくつか謎があります。

  • 付属ACアダプタで使用時、回路内部から「キーーン」という発振音がする。
  • 直流定電圧源で調べてみると、+5Vをほんの少しでも割り込むと発振音がひどくなる。
  • このとき録音機能はこの発振音に同期したノイズだらけで(付属ACアダプタ使用)、再生でも同期したノイズが入ることがある(直流定電圧源使用)。

これは明らかにDC-DCがおかしい。オペアンプの電源は、各部位ですべてCRフィルタ(47Ω+220uF程度)されているのに、それでもノイズが残っていることも不思議でした。

電源回路に問題あり

調べてみるとアナログの正負電源回路に問題があることが分かりました。

回路写真+9V-9V
analog_power.jpg
p9v.jpg
m9v.jpg

正負電源はDC-DCコンバータで生成しているのですが、2次側(出力側)にまともな平滑コンデンサが付いていません*1。そのせいで、出力側に激しいノイズが表れています。当然です。DC-DCの2次側にコンデンサを付けないなんてアマチュアでもしない失敗です。こんな状態でまともにDC-DCが動くはずがありません。*2

回路をよくよく見てみると、実は1次側(電源側)にも、2次側(生成電圧側)にも電解コンデンサを付けるパターンが切ってあります。

analog_power2.jpg

形状からしてチップタンタルコンデンサを付けるためのものだと思いますが、それが付いていません。考えられる原因は1つコストダウンです。結構コストの高い部品やらを使っていますから、実売2万円以下にするため量産段階になってあれこれ削った可能性があります。

しかし、代わりにチップ積セラの10uF、せめて1uFでも付いていればさして問題はないものを単純に取ってしまうあたり設計者じゃない誰かの仕業に思えます。パターンを追っていくと他にも空きランドやら疑わしい部分があり、まだ何か出てきそうです。

たまたま当たりを引いたという考えも過ぎりましたが、この記事写真にも乗ってませんから意図的なもののようです(ここにもなし)。しかしこれ、リコールしても不思議じゃない欠陥だと思うですが……。*3

*1 : 裏面に0.1uF(?)の積セラが3つだけ付いてますが容量が足りません

*2 : Lを介してニチコンの電源用コンデンサに繋がっていますが、Lの手前にコンデンサがないのでDC-DC回路が安定しません。

*3 : 個体差で今は問題なく動いてたとしても、この状態はDC-DC回路におそろしく負荷かかります。ACアダプタにしても電圧誤差±5%は普通あるものですが-5%ではまともに動作しません。ほんとこれじゃあ回路設計者が可哀想です。

電源問題を解決する

回路上の C973/C974 に電解コンデンサを付けます。タンタルコンデンサが良いですが、秋月で売っている 10V 耐圧は(大丈夫だけども)ちょっと心配です*4

おすすめは低ESRコンデンサ*5で、耐圧16V、容量は10uF程度。スイッチングノイズを取ることが重要なので大容量品は要りません(試したところ大容量品(100uF~)では充電電流が不足し逆にノイズが増えます(特に負電源))。低ESR品がなくても標準品コンデンサでいいから付けておいた方が100倍良いです

C977/C978の一次側も付けた方がよいです。6.3V以上、容量は47uFか100uFぐらいを目安に。なくても一応動作しますが、あった方が動作は安定します。(±9Vラインの他、5Vラインのノイズも低減します)。ここも低ESRコンデンサがよいです。

*4 : 昇圧回路にあまりギリギリの定格は使わない方がいい。しかもタンタルはショートモードで壊れるので

*5 : 導電性高分子コンデンサ等。。PC向け低ESRも可ですが前者の方が性能が良いです。

改善後

+9V+9V9VのAC成分のみ
p9v2.jpg
m9v2.jpg
ap_noise.jpg
LINE OUT(改善前)LINE OUT(改善後)
LINE_OUT_noise.jpg
out_noise.jpg

手持ちに低ESR品がなかったので、なぜかこの基板から取り外したTK 25V 47uFを2次側に付けてみました。電源のノイズが綺麗になっています。AC成分だけみるとまだノイズが残っていますが、DC-DC昇圧式電源なので完全に除くことは難しいです。*6効果は明かで録音ノイズが減り、電源電圧の変動に対しても安定になりました。

注目すべきはLINE OUTは出力開放時のノイズレベルです。可聴域外ノイズとはいえ、もとの状態ではアンプや再生音に悪影響があることは明かです。改善後はかなりまともになっています(DC-DCなので完全にノイズを消すのは困難です)。

コンデンサやオペアンプを載せ替えてる暇があったらまずここを直しましょうね

*6 : あとで低ESR品に取り替えて、1次側にも電解コンも付ける予定。

追記、表面実装へのDIPの載せ方

表面実装パターンへのラジアルリードコンデンサの載せ方です。当たり前ですが、本来ならこういう部品の載せ方はすべきではありません(注意:この画像は他の基板を使っています)。

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dipc_on_smt1.jpg
dipc_on_smt2.jpg
dipc_on_smt3.jpg
dipc_on_smt4.jpg
  1. 載せたい場所です。
  2. まずハンダを盛ります。
  3. コンデンサの足を曲げます。隣のパターンや2本の足が接さないように十分に注意します。
  4. 盛ってあるハンダに手早く付けます。隣のパターンなどと接しないように充分に注意します。

本来ハンダに機械的強度を期待してはいけないのですが、ハンダを十分に盛らなかったり、コンデンサの足がハンダに埋もれるぐらいに付いていないと、機械的強度不足により外れたりして最悪の場合故障の原因となります。しっかり付いていた場合、部品に無理な力がかかるとパターンごと剥がれるなどの故障の原因となります。当方は一切責任は取れません、あしからず。

不安な方は無理をせず、素直にチップタンタルやチップセラミックの10uF程度を付けましょう。

誰か問い合わせたらしい

某所の情報によると

> 一部のインターネット情報に、ご指摘のような誤解をまねく記載があるようですが、

> ご存知のとおりインターネットの情報は一方的な主張に偏りがちな場合があります。

>

> 音質に関する部分は最も重要な企業秘密になりますので詳細は公表できかねますが、

> 弊社といたしましては、正常な仕様であると確信いたしております。

価格.com - ONKYO SE-U55SX(W) のクチコミ掲示板

だそうです。当方購入のU55SXはこれが原因で録音時(LINE-IN)にブチブチノイズが乗って使い物にならなかったのですがそれも正常な仕様なんでしょう。

※それを正常な仕様と言い張る会社の製品を誰が買うのだろうか……。