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2007年12月12日の記事

SE-U55SXの回路

はてブ数 2007/12/12電子::SE-U55SX

改造のために信号ラインの回路図を解説します。"*"付きの部品番号は「基板裏面に付いています」。回路は間違っている可能性があります。ご了承ください。

ADCまわり

SE-U55SX_ADC.gif

ボリュームより手前は省略しています。LPFと、反転・非反転増幅によるシンプルな回路です。LINE IN入力部にはさらにLPFがあります。反転増幅を使ったバイアス回路というのは初めてみました。

オペアンプはLとRで共有しています。

DACまわり

右チャンネル(基板上では上部に該当)を示します。

IV変換VLSC回路
SE-U55SX_DAC_IV.gif
SE-U55SX_DAC_VLSC.gif

IV変換回路は基本に忠実でシンプルです。VLSC回路は要するにLPFの一種です。イメージが完全に掴めないまま追跡したので回路も間違ってるかもしれません。

VLSC回路について

特許文献をみてみた(特許3616878)解釈。正確ではない部分もあるかと思いますが、DAC出力信号を入力とみなして、オペアンプを使った積分回路(LPF)の出力とDAC出力信号をオペアンプで比較し、等しくなるまでフィードバックをかける(積分回路に電流を流す)仕組みのようです。最終出力が積分回路(電流駆動されるコンデンサ充電電圧)であるため、高出力抵抗*1によるCRフィルタが構成されパルスノイズがでないという理屈です。

音声信号だけうまい具合に入力に最終出力が追従する訳はなく、オペアンプの性能次第でパルスに反応して積分回路が動くはずです。このVLSC回路というのは、オペアンプの非理想的な特性*2である動作速度の限界(スルーレート/帯域の制限)を積極的に利用したものと言えるでしょう。

*1 : 理想電流源の出力インピーダンスは無限大

*2 : 高速ピークホールドを作るのが難しい理由と一緒

DACのDC直結改造

IV変換抵抗であるR426とR428の抵抗値をうまく合わせると出力オフセット電圧を0mVにできます。こうすると出力コンデンサを外してDC直結にできます。実際試したところ、Rチャンネルはきっちり同じ抵抗値で揃いましたが、LチャンネルはそもそもDACチップの出力電流にオフセットがあるらしく、あえて抵抗値の違うものを付ける必要がありました。

デジタルテスタを駆使し、Q404(LならQ403)の2つの出力電圧(mVまで)とIV変換の抵抗値(mΩまで)を調べて出力電流値を計算し、それに合わせて正確に抵抗値を合わせれば出力コンデンサを外して直結できます*3。その他オペアンプの入力オフセットもここで吸収する必要があるため、Q404の出力電圧差と実際の出力電圧オフセットとの差(=オペアンプによるオフセット)も調整の際の計算に入れた方がよいです(こっちはほとんどないハズですが)。コンデンサ手前のオフセット値で数mV以下なら許容範囲内でしょう。

0mVと4mVに調整出来たため出力カップリングコンデンサをバイパスしましたが、やはりDC直結の音質は捨てがたいです。(注:書いてあることの意味がわからない人は、安易にDC直結改造してはいけません

*3 : オフセットをゼロ調整するにはテスターでオフセット電圧を正確に計ります。そのオフセット打ち消すようにR425~R428を、適切に設定します(抵抗の5%誤差レベルで値を設定・調整します)。R426をR428に対して大きくすればオフセットはプラスにずれるし、R428をR426に対して大きくすればオフセットはマイナスへずれます。

SE-U55SXの音質

はてブ数 2007/12/12電子::SE-U55SX

音質を主観的に述べてみます。おもな比較対照はProdigy 192VE改(カップリングコン置換済)です。ヘッドホンアンプは自作のものを使いました。

よく見られる方法で並べると

オンボード <<<<< 192VE <<<<< SE-U55SX < 192VE改 < SE-U55SX改

です。最近のオンボードはかなり良いですけど、やっぱり専用カードには負けます。192VEはノーマル状態だと主にNJM4850に起因する歪みがひどいのです。

SE-U55SX(購入時のまま/ノーマル状態)では大変歪みの少ない綺麗な音がしますが、音の立ち上がりがやや悪く、高域が丸く感じます。192VE改の方が、高速オペアンプAD8066のおかげもあり綺麗ではっきりとした音がします。比較するとややドンシャリですが、それを抜きにしてもやはり通常状態のSE-U55SXは高域が丸いです。あとSNRが(単体オーディオにしては)余り良くありません(注:測定値ではなく主観)。

この丸さとSNRはSE-U55SXのオペアンプ電源のコンデンサを変えてあげることで改善します(関連記事)。その他多くのコンデンサ交換を行い、もともと少なかった歪み感がある時を境にまったくなくなりました。これは192VE改の音を越えますが、でもまだ少し高域が丸く音の躍動感(?)がやや悪いです。これは出力カップリングコンデンサによるもので、DC直結に改造することで改善しました(関連記事)。

ここまで来ると192VE改の1ランク上の音になります(好みと言えば好みですが、歪みや明瞭感で若干上です)。音が徹底的に歪まないらしく(但し単純なTHDでは計れない)、不思議なことに音量が下がったように聞こえます。それでいてボリュームを上げなくても満足感を得られます。アンプとかでもそうですが、優秀なアンプでは歪んで余計な音がしないため、同じ信号(p-p)でもボリュームが下がったように聞こえます。*1

*1 : これはとても重要な発見でした。回路とかを作る際・アンプの音質などを見分ける際の大変便利な指針ですので、覚えておくとよいです。

「SE-U55SX改」の恩恵

アンプの聞き比べが非常にやりやすくなりました。前はどこが違うのかよく分からなかったのですが、コイツを使うとはっきりと違いが分かります。安物……かどうかは分からないけど、もらいもののイヤホンで十分ヘッドホンアンプの聞き比べができます。

次にしたいことは

オペアンプの載せ替えですけど、DIPだから載せ替えにくいですね。SOPの方がよっぽど載せ替えやすい(=取り外しやすい)です。NE5532Aは大変優秀なアンプなので載せ替える気はほとんどなかったのですが、CMoy型アンプで色々試聴してて格の違うオペアンプを見つけたもので*2、遊びがてららIV変換ぐらい変えてみてもいいかなと(苦笑)。そうそう、VLSCは下手に高速オペアンプに変えると理屈上悪化しそうな気もします(発振の可能性も十分にあります)。

OPA627は高すぎるのでイヤです。そしてたまに見かけるOPA2604の載せ替えは悪化させてるだけのような…ry


というわけで、SE-U55SX関連はこれにて一区切りです。質問とかは各記事までどうぞ。追試報告とかありましたらお知らせ頂けると嬉しいです。

SE-U55SX関連一覧はこちら

*2 : 自作ヘッドホンアンプとタメを張ります。とか言うと悪いオペアンプだと思われてしまうのでしょうか。