FETヘッドホンバッファアンプ(単3×2)

はてブ数 2007/12/24電子::アンプ

2009/09/19 全面修正

※旧タイトル「単3電池式 高音質ヘッドホンアンプ(改良型)」

『FETヘッドホンバッファアンプ』(または「FETヘッドホンアンプ」)*1


目次

コメント欄トラックバック欄にみなさんの作例がありますので、ぜひ参考にしてください。

リンク等はご自由にどうぞ。

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抵抗の音質を正しく評価する

はてブ数 2007/12/16電子::アンプ

新しい記事→「薄膜チップ抵抗を含めた、抵抗の聴き比べ(音質再評価)」。この記事は古くなっています。


音質というと、コンデンサやIC(オペアンプ/トランジスタ)に目が行きがちですが、抵抗はかなり音質に影響かあります。

従来「抵抗の音質評価」というと、抵抗Aと抵抗Bの比較論に終始してしまい、抵抗でどう音が劣化するのかよく分かりません。基準として「正解の音」のある状態で音質比較を行いました。正しくとはいえあくまで主観です、ご了承ください。

※金属箔抵抗は高すぎるので検証していません。

評価回路

rtest_fet.gif

rfest_opamp.gif

この2つの回路はアンプではよくみられる形です。ボリュームを最小や最大にしたとき(配線のL成分で)FETは簡単に発振してしまうため、発振保護抵抗R(100~1kΩ程度)が必要になります。しかし、ボリュームを最小や最大にさえしなければ、動作には問題ありません(発振はしません)。

評価方法

音量を固定し、抵抗Rの部分(ソケット式)のみを置き換えます。ジャンパ線を使用したとき(0Ω直結)の音を正解として評価しています。

rtest.jpg

写真が使用した抵抗です。すべて100Ω(ジャンパ除く)。左から、タイヨームFTR33、XICON カーボンソリッド(カーボンコンポジション)、DALE CMFになります。

回路はFETの回路図が基本となっているヘッドホンアンプを使用し、ボリュームにはミニデテントの 10kAΩ を使用しました。

音質

ジャンパ(0Ω)を使用したとき、音の広がり、ひとつひとつの音の分離(混ざらない)、高域の伸び、どれを取ってもすばらしいとしか言いようがありません。これを正解(基準)として扱います。

千石酸化金属(タクマン電子 RLF1S 1W)

ボーカルが平面的に鳴り、全体に音がガヤガヤしとて聞こえます。

タイヨームFTR33

実売30円。安価ですが、XICONやCMFと比べると明らかに明瞭感にかけます。非音響用抵抗よりはるかにマシですが、それでも細かい音がガヤガヤとまざり音が随分凡庸に聞こえます。

XICON

実売30円。FTR33と同じ値段ですが、かなり優秀な抵抗です。ボーカルなどの明瞭感はきちんと聞こえますが、バックのオケがやや明瞭感にかけ音の広がりがやや狭くなります。

DALE CMF-55

実売60~80円。さすがによく使われるだけあって優秀です。きちんと広がりのある分離の良い音がしますが、ボーカルなどメインの音が曇ります。電解カップリングコンデンサのように高域がかけるという印象で、ボーカルについての奥行き感がなくなります。

女性ボーカルを聴かずクラシックメインとかならば、CMF-55はかなり良い選択でしょう。

テスト2

rtest2.jpg

左からチップ抵抗(ソケットに取り付け)、千石酸金、アムトランスAMRS、東京光音ローノイズカーボン、DALE NS-2Bです。

チップカーボン抵抗(1608/松下電器ERJ3GEYJ~/千石) 1円以下/本

普通のチップ抵抗です。ボーカルが平面的になり奥行き感がなくなりますが、曲全体のムードはけっこう忠実に再現されています。あと高域の伸びがありません。やはり非音響用です。

酸化金属皮膜1W(タクマン電子RLF1S~/千石) 10円/本

一部には評判の酸化金属被膜抵抗です。たしかに普通のカーボン抵抗などと比べればよいのですが、やはりボーカルが平面的になり奥行き感がなくなります。高域の伸びもありません。チップ抵抗より平面的に鳴ります。音もがやがやと混ざった感じになります。非音響用の音です。

アムトランス製 音響用カーボン抵抗ARMSシリーズ 50~60円/本

結構期待して聞きました。曲のムードは良く再現され、奥行き(広がり)感もあります。ボーカルが若干かすれます。声の一部の音が消えている感じです。あと全体に若干歪みます(細かい音が混ざります)。

XICONよりやや中高域が綺麗ですがほとんど似た傾向です。

東京光音製(RDシリーズ/海神無線) 90円/本

ローノイズカーボンとして海神無線で売られています。

中高域の明瞭感、歪みのなさはさすがのものです。わずかにボーカルが平面的になり、少しだけ中域が濁ります。これまで聞いてきた抵抗とは格が違います。しかしながら本来あるべき高域のキレが無くなります。

DALE/Vishay 無誘導巻線抵抗(NS-2B/海神無線) 500円/本

あの有名な無誘導巻線です。ジャンパ状態(正解)と全く聞き分けが付きません。細かい音まできちんと聞こえます。わずかに違う言われれば違うような気もしなくもないですが、ブラインドテストで当てる自信は全くありません。

よくNS-2Bにすると「情報量が増える」(ある種の歪みか起きている)という説がありますが、情報量が増えるのではなくて、他の抵抗では情報が消されていると考えるべきです。ジャンパ状態と、非音響用抵抗などを比べると、実際に音が消えて聞こえます。

テスト3

rtest3.jpg

左からKOA RD16S(秋月1円カーボン抵抗)、KOA MF1/2CC(千石金皮1/2W)、OHMITE カーボンソリッド(カーボンコンポジション、1/2W)。

メーカー不明 RD25S(秋月1円カーボン抵抗)

音の細部はつぶれます(歪みます)が、全体の表現や音の奥行き、広がりはきちんと表現されます。他の音質の悪い抵抗は、すべて音の広がりがなくなるのに対し、音のひろがりを維持したまま(ムードはきちんと保持したまま)、細かい音の表現が完全につぶれます。

KOA MF1/2CC(千石金皮1/2W)

非音響用の代表的な鳴り方です。音の奥行き感覚がなくなります。

OHMITE カーボンソリッド(1/2W)

Digi-Keyにて購入。XICONと似ています、ほとんど同じ音です。比べるとわずかですが OHMITE の方が歪みが少ないように感じますが、入手性や価格を考えるとこれを買うのだったらXICONのカーボンソリッドで十分だと思います。

テスト4 (2008/04/20)

rtest4.jpg

上から進工業RE35(プレート抵抗)、ニッコームRP-44C(プレート抵抗)、DALE RN60(金属被膜抵抗)、DALE RS-2B(巻線抵抗。無誘導ではないタイプ)。

進工業 RE35(1/4W 180Ω) 10円/本

プレート抵抗です。MPC78などのプレート抵抗の経験から期待していたのですが、さほどよくはありませんでした。カーボン系音響用抵抗と同ランクで、音が曇ります。

ニッコーム RP-44C(1/4W 130Ω) 10円/本

RE35と同じプレート抵抗です。RE35がダメダメだったので期待してなかったのですが、見た目がとても似てるにも関わらず音は大違いでした。クリアで歪み感のないとても良い音です。

直結とあまり遜色ありませんが、入念に聞き比べてると直結やNS-2Bと比べ、若干余計な音がします。また100~200Hzぐらいの低音が若干もやつくようです(どう思います?)。

東京光音 RN60(100Ω) 60~80円/本

東京光音RDに代わるのかと思いましたが全然ダメでした。音響用の中では良い方ですが、音が濁った感じになります。同価格帯でいえば、CMF-55やRDを選ぶ方が良いでしょう。

DALE RS-2B(5W/100Ω) 200円/本

DALEの巻線抵抗です。よく使われるNS-2Bが無誘導巻きという特殊な巻き方(L成分が出ない巻き方)をしてあるのに対し、円筒状にぐるぐると単純に巻き付けた抵抗です。

オーディオ界の常識から言うと「L成分を持つ抵抗=磁気歪み」ということで、お話にならないはずですが、実際に聞いてみるとその辺の音響用抵抗より格上の、よっぽどマシで明瞭な音がします。

ただやはり、NS-2Bや東京光音RD(や直結)と比べて、若干中~高音が濁りますのでこれがL成分による影響でしょう。

テスト5 (2008/06/15)

rtest5.jpg

左から多摩電子工業LF(足加工済)、フラット電子RF(1/4W)、ニッコームRP-24C(1/2w)、DALE CMF-55?(1/2W)。

多摩電気工業LF 10円/本

鈴商にて10個100円。ほとんど濁りのない明瞭な音です。RDに近いのでしょうか。中域~高域にかけてわずかに濁るという印象です。変な癖はなし。多摩電気工業のLFは現在はKOAにて販売されています。

追記。エージングが進むとこの濁りがかなり解消され、大変に澄んだ音がします。タクマンREYとほとんど変わりません。

フラット電子RF (1/4W) 40円/本

鈴商にて5個200円。こちらも金属プレート抵抗です。中域がわずかに曇るかなという印象。上の多摩電気工業よりも曇りますが、東京光音RDよりは曇りません。

ニッコームRP-24C (1/2W) 42円/本

若松にて購入。RP-44Cと音の差があるか気になって購入してみました*1。大きさが違います。当たり前ですがほとんど同じ音でした。

しかしながら、RP-44Cに比べて高域~中域が曇る印象があります。同時期生産のを比べていないため(鈴商のRP-44Cは明らかにジャンクなので)判断の難しいところですが。

タクマン電子 REY(1/4W) 30円/本

海神無線にて購入。DALE CMFが廃盤となったため、在庫がなくなった場所に代わりに置かれている抵抗です。水色をしているのですぐ分かります。公式ページはここ。今は千石電商で容易に手に入ります。

CMFとは大違いの抜けの良い非常にクリアな音です。わずかに中域の解像度が落ちるかな(曇るかな)という印象はありますがほとんど気になりません。CMFはちょっと許容できなかったのですが、積極的に使っても良いかなというぐらいの音質です。

*1 : ネットの評判によると進RE55よりニッコームRP-24Cの音が悪いとなっていて、進RE35とニッコームRP-44Cでは後者の方がはるかに音が良いので気になっていた。

LPFの抵抗対決 2008/08/24

USB-DACのLPF抵抗(10kΩ)として、ニッコームRP-24C、多摩電気工業LF、タクマンREYで対決してみました。

ニッコームRP-24C

低音がよく出るように感じますが、これはわずかな付帯音(余計な音)のせいだと思います。これだけ気になりますが(このせいでわずかに全体が薄いベールを被ったように感じてしまいますが)、明瞭感もあり申し分ないです。

多摩電気工業LF

エージングが終わらないとザラザラとした音(中域がガヤ付く)ですが、エージングされるとかなり明瞭な音がします。

それでもRP-24Cに比べるとわずかにザラザラしているかなという印象があります。付帯音がない分だけ、わずかですがRP-24Cよりもすっきりして聞こえます。非常に伸び伸びと慣らします。

タクマン電子REY

これもエージングが終わらないとひどい音(中域がガヤ付く)ですが、エージングされるとかなり明瞭な音がします。この辺の感じからしてLFそっくりです。

実は音もかなり似ています。中域がわずかにザラザラしているかなという印象があります。

抵抗のエージング

単純に電圧をかけておくだけはだめのようで、音楽を再生させた方がエージングされるようです。コンデンサもこの傾向がありますが、抵抗の方が顕著です。理由はよく分かりませんが実に不思議です。

抵抗聞き比べ時、差し替えた直後は若干悪い音がします。抵抗そのものというより回路が安定しないせいがあるのだと思います。

LFとREYの音は大変似ていて、ほとんど聞き比べ不能でした。…しいていえば「LFの方が全体的に音がまろやか」でした。僅差ですので、どっちが良いかというのも難しいかも知れません。

総合評価

前までは「抵抗なんかで音の差は出ないよ」と思ってたんですけどね(苦笑)。最近は知らない抵抗を見つけては手当たり次第購入しているような(汗)

一通りまとめるとこんな感じです。

SランクOHMITE 無誘導巻線抵抗、NS-2B、LGMFS/LMFQ(後述)
Aランク1タクマン REY(1/4W)、ニッコームRP-44C/24C
Aランク2多摩電気LF、フラット電子RF、東京光音RD
A-ランクRS-2B
BランクXICONとOHMITEのカーボンソリッド、RE35、RN60、AMRS、CMF-55
C1ランクFTR33、千石金皮(KOA)、千石酸金(タクマン電子)
C2ランクチップ抵抗(松下)、秋月カーボン

Cランク

C1とC2は便宜上分けただけで、どちらが上という訳でもありません。Cランクとはいえ、曲によってはそれほど違和感を感じません。しかしながら、うるさい曲(たくさんの音が鳴る曲)を聞くと一目瞭然で、C2グループは極端に音が歪みます。この2つはダントツ悪いです。

C1ランクはC2ほど極端な歪みは感じないものの、それでも音の奥行きや広がりが無くなります。仮にも音響用のFTR33がここにあるのは、少し悲しいところです。

Bランク

音響用なら普通はBランクだと思いますが、多少の違いはあれど似たり寄ったりです。コストパフォーマンスを考えればXICON、高域の曇りを我慢出来るならばCMF-55(高域の曇りを除けば他は文句なしです)になります。*2

Aランク

Aランクは格違いです。Aランク以上ならアンプ等で使っても許せます(Bランク以下はアンプの信号部には許せない)。

A-

RS-2BはL成分のせいでやや高域が(東京光音RDと比べても)綺麗ではありません。そのため、他と比べても下にせざる得ません。

Aランク1グループ

高域の抜けが比較的良いタイプです。

ニッコームRP-44C/RP-24Cは中域の上の方が若干濁ります。100~200Hzぐらいの低音が若干もやつくようです。タクマンREY(1/4W)はCMF等と比べて音の抜けはよいのですが、中域あたりが若干曇る(濁る)感じがします(CMFと同程度濁ります)。

このRP-44CとタクマンREYをよく聞き比べてみても、非常に難しい問題です。十分にエージングして相当入念に比べてみないと結論は出なそうですが、今のところREYの方が実力が上のような気がしてます。

Aランク2グループ

高域の抜けがやや悪いタイプです。そのせいで音が地味な傾向になります。

例えば、グループ1で代表的なニッコームRP-44Cと、グループ2で代表的な東京光音RDを比べると、音が濁り高域が丸くなるRD、中高音にやや色が付くRP-44Cといった具合です。

  • 東京光音RDはかなり明瞭なのですが、音がやや濁ります。
  • 多摩電気LFはかなり明瞭で、A1グループとの差はほとんど気にならないかも知れません。

Sランク

NS-2B。唯一、直結状態とほぼ聴き分け不可能*3。間違えなく一番の音質です。値段はともかく

これ以上にさらに高級な抵抗もあるようですが、ちょっと試したことはない(苦笑)

*2 : この2つは互いに一長一短で、完全に聞く人の好みになります。

*3 : 当時の感想。いま試せばすこしは差が分かると思う

まとめ 2012/12/30

  • 金額は気にしない → NS-2B、OHMITE 無誘導巻線抵抗(Digikey)
  • おすすめ
    • 42円 LGMFSA(LGMFSより高音質)
    • 21円 LGMFSLMFQ
    • OHMITE 無誘導巻線抵抗
  • 以前のお勧め
    • 10円 多摩電気工業LF(鈴商/JUNK扱い?)
    • 30円 タクマンREY 1/4W(千石電商/海神無線での扱いは一部のみ)
  • 初期のお勧め

以前のおすすめはタクマンREYと多摩電気工業LF。当初は入手難だったREYですが、現在は千石で扱われるようになり、広い抵抗値に渡って非常に安価に手に入るようになりました。

現在はbispaの高精度抵抗LGMFS/LGMFSAと、OHMITEの無誘導巻線抵抗を併用しています。

本当にお金にいとめを付けないのなら金属箔抵抗が一番良いのでしょうが、高すぎるので試聴すらしていません。

備考

抵抗の音質は再生装置やアンプ回路その他要因が悪いと、そもそも聞き比べられません。オペアンプの聞き比べもそうですが、差がほとんどないと思ったら、載せ替える前に別の要因を変更する方が賢明です。

なお使い方によって音質の傾向は多少変わりますが、いくかの抵抗をLPFやDACのIV変換抵抗で使ってみたところ同じ傾向が得られましたので気にする必要はほとんどなさそうです。

参考

*4 : あれこれみましたが、唯一まともに評価しているような気がします。

仮説

巷で言われる磁性/非磁性はほぼ無関係で、抵抗の誘電体としての性質が音質(特に明瞭感)を大きく左右しているようです。

放熱用としてセラミックの芯(高誘電率物質)が入っている抵抗もあり、この辺が怪しいと感じます(誘電体吸収)。保護被膜で音が変わるという話もこれなら説明が付きますし。あとはフリッカ雑音と深く関係しているように思います。

経験上、同じシリーズなら温度係数が良いほど音が良くなるようです*5

*5 : LMFQ≒LGMFSよりLGMFSのほうが同一構造で温度係数(ppm)が優れる

SE-U55SXの音質

はてブ数 2007/12/12電子::SE-U55SX

音質を主観的に述べてみます。おもな比較対照はProdigy 192VE改(カップリングコン置換済)です。ヘッドホンアンプは自作のものを使いました。

よく見られる方法で並べると

オンボード <<<<< 192VE <<<<< SE-U55SX < 192VE改 < SE-U55SX改

です。最近のオンボードはかなり良いですけど、やっぱり専用カードには負けます。192VEはノーマル状態だと主にNJM4850に起因する歪みがひどいのです。

SE-U55SX(購入時のまま/ノーマル状態)では大変歪みの少ない綺麗な音がしますが、音の立ち上がりがやや悪く、高域が丸く感じます。192VE改の方が、高速オペアンプAD8066のおかげもあり綺麗ではっきりとした音がします。比較するとややドンシャリですが、それを抜きにしてもやはり通常状態のSE-U55SXは高域が丸いです。あとSNRが(単体オーディオにしては)余り良くありません(注:測定値ではなく主観)。

この丸さとSNRはSE-U55SXのオペアンプ電源のコンデンサを変えてあげることで改善します(関連記事)。その他多くのコンデンサ交換を行い、もともと少なかった歪み感がある時を境にまったくなくなりました。これは192VE改の音を越えますが、でもまだ少し高域が丸く音の躍動感(?)がやや悪いです。これは出力カップリングコンデンサによるもので、DC直結に改造することで改善しました(関連記事)。

ここまで来ると192VE改の1ランク上の音になります(好みと言えば好みですが、歪みや明瞭感で若干上です)。音が徹底的に歪まないらしく(但し単純なTHDでは計れない)、不思議なことに音量が下がったように聞こえます。それでいてボリュームを上げなくても満足感を得られます。アンプとかでもそうですが、優秀なアンプでは歪んで余計な音がしないため、同じ信号(p-p)でもボリュームが下がったように聞こえます。*1

*1 : これはとても重要な発見でした。回路とかを作る際・アンプの音質などを見分ける際の大変便利な指針ですので、覚えておくとよいです。

「SE-U55SX改」の恩恵

アンプの聞き比べが非常にやりやすくなりました。前はどこが違うのかよく分からなかったのですが、コイツを使うとはっきりと違いが分かります。安物……かどうかは分からないけど、もらいもののイヤホンで十分ヘッドホンアンプの聞き比べができます。

次にしたいことは

オペアンプの載せ替えですけど、DIPだから載せ替えにくいですね。SOPの方がよっぽど載せ替えやすい(=取り外しやすい)です。NE5532Aは大変優秀なアンプなので載せ替える気はほとんどなかったのですが、CMoy型アンプで色々試聴してて格の違うオペアンプを見つけたもので*2、遊びがてららIV変換ぐらい変えてみてもいいかなと(苦笑)。そうそう、VLSCは下手に高速オペアンプに変えると理屈上悪化しそうな気もします(発振の可能性も十分にあります)。

OPA627は高すぎるのでイヤです。そしてたまに見かけるOPA2604の載せ替えは悪化させてるだけのような…ry


というわけで、SE-U55SX関連はこれにて一区切りです。質問とかは各記事までどうぞ。追試報告とかありましたらお知らせ頂けると嬉しいです。

SE-U55SX関連一覧はこちら

*2 : 自作ヘッドホンアンプとタメを張ります。とか言うと悪いオペアンプだと思われてしまうのでしょうか。

SE-U55SXの回路

はてブ数 2007/12/12電子::SE-U55SX

改造のために信号ラインの回路図を解説します。"*"付きの部品番号は「基板裏面に付いています」。回路は間違っている可能性があります。ご了承ください。

ADCまわり

SE-U55SX_ADC.gif

ボリュームより手前は省略しています。LPFと、反転・非反転増幅によるシンプルな回路です。LINE IN入力部にはさらにLPFがあります。反転増幅を使ったバイアス回路というのは初めてみました。

オペアンプはLとRで共有しています。

DACまわり

右チャンネル(基板上では上部に該当)を示します。

IV変換VLSC回路
SE-U55SX_DAC_IV.gif
SE-U55SX_DAC_VLSC.gif

IV変換回路は基本に忠実でシンプルです。VLSC回路は要するにLPFの一種です。イメージが完全に掴めないまま追跡したので回路も間違ってるかもしれません。

VLSC回路について

特許文献をみてみた(特許3616878)解釈。正確ではない部分もあるかと思いますが、DAC出力信号を入力とみなして、オペアンプを使った積分回路(LPF)の出力とDAC出力信号をオペアンプで比較し、等しくなるまでフィードバックをかける(積分回路に電流を流す)仕組みのようです。最終出力が積分回路(電流駆動されるコンデンサ充電電圧)であるため、高出力抵抗*1によるCRフィルタが構成されパルスノイズがでないという理屈です。

音声信号だけうまい具合に入力に最終出力が追従する訳はなく、オペアンプの性能次第でパルスに反応して積分回路が動くはずです。このVLSC回路というのは、オペアンプの非理想的な特性*2である動作速度の限界(スルーレート/帯域の制限)を積極的に利用したものと言えるでしょう。

*1 : 理想電流源の出力インピーダンスは無限大

*2 : 高速ピークホールドを作るのが難しい理由と一緒

DACのDC直結改造

IV変換抵抗であるR426とR428の抵抗値をうまく合わせると出力オフセット電圧を0mVにできます。こうすると出力コンデンサを外してDC直結にできます。実際試したところ、Rチャンネルはきっちり同じ抵抗値で揃いましたが、LチャンネルはそもそもDACチップの出力電流にオフセットがあるらしく、あえて抵抗値の違うものを付ける必要がありました。

デジタルテスタを駆使し、Q404(LならQ403)の2つの出力電圧(mVまで)とIV変換の抵抗値(mΩまで)を調べて出力電流値を計算し、それに合わせて正確に抵抗値を合わせれば出力コンデンサを外して直結できます*3。その他オペアンプの入力オフセットもここで吸収する必要があるため、Q404の出力電圧差と実際の出力電圧オフセットとの差(=オペアンプによるオフセット)も調整の際の計算に入れた方がよいです(こっちはほとんどないハズですが)。コンデンサ手前のオフセット値で数mV以下なら許容範囲内でしょう。

0mVと4mVに調整出来たため出力カップリングコンデンサをバイパスしましたが、やはりDC直結の音質は捨てがたいです。(注:書いてあることの意味がわからない人は、安易にDC直結改造してはいけません

*3 : オフセットをゼロ調整するにはテスターでオフセット電圧を正確に計ります。そのオフセット打ち消すようにR425~R428を、適切に設定します(抵抗の5%誤差レベルで値を設定・調整します)。R426をR428に対して大きくすればオフセットはプラスにずれるし、R428をR426に対して大きくすればオフセットはマイナスへずれます。

SE-U55SXの音質改善(コンデンサ交換)

はてブ数 2007/12/11電子::SE-U55SX

みなさんお待ちかね(?)のコンデンサ載せ替えです。お約束ですが、この記事を参考にする場合はすべて自己責任でお願いします。著者は一切の責任を負いかねます。初めから改造する気だった人のために情報を提供しているだけであり、改造を推奨しているわけではありません。

回路構成とコンデンサの役割

board_conlist.jpg

アダプタから入力された5V電源は、簡単にフィルタされた後、中央部の電源用コンデンサで平滑化されます。+5V はすべての回路の電源であると共に、DAC/ADCのアナログ電源となっています。ここのノイズを取ると音質が大きく改善します。

5Vは3端子レギュレータを介して+3.3Vデジタル部の電源となります。デジタルノイズがアナログ段に回り込まないようにすることも重要です。

5VからDC-DCコンバータを介して±9V電源を生成します。この9V電源は主にオペアンプの電源となりますが、回路のほとんどの電流はこれらオペアンプなどのアナログ回路で消費されているようです。

効果が高いと思われる順

いかにしてアナログ段のノイズを減らすかということが目的になります。

アナログ部に関する電源はどこを取り替えても音が変わりますが、交換しながらノイズを観測した様子から効果が高いと思われる順に述べてみます(保証はしません)。

効果予想部位付け替えの例
必須DC-DCコンバータ1次側6.3V/100uF、2次側10V/10uF
ADAC部のオペアンプ電源(±8~9V)10V/220~470uF
ADACアナログ電源(5V)6.3V/100~220uF
BDAC基準電圧用電源(L/R)6.3V/220~470uF
B5V電源(全体の電源=主電源)6.3V/2200uF

必ずこの記事を参考にDC-DCコンバータに電解コンデンサ(等)を付けてください。これが付いていないとお話になりません。(良い子は耐圧は16V以上を使いましょう

付け替えに使用したコンデンサはOS-CONです。元より容量が減っているものもありますが、容量よりもESR/ESLを重視しました。自分は470uF品の手持ちがなく220uFを付けました(全部千石で買ったものです)。

カップリングコンデンサ

カップリングコンデンサは好みに応じて変えてください。SILMIC 2は決して悪いものではないので、このままでもいいと思います。印可電圧は±2V程度ですので、変えるときは(電流はほとんど流れないにしろ)逆電圧がかかるということ念頭に置きましょう。

ここはほとんど電圧がかからないので、コンデンサ取り付け時にハンダ熱で痛んだ場合、電圧印可による修復は期待できません。ソケットにしておく方が無難です。

エージング

というよりも修復時間です。コンデンサはハンダ熱を加えることで性能が著しく劣化するので、取り付け時はリードを多少延ばしてでもコンデンサ本体に熱か伝わらないようにして素早くハンダ付けすることが基本です。

また取り外し時にGND側で熱が逃げるため、どうしても長く加熱する必要が出てしまい、外しているコンデンサ以外のコンデンサが熱疲労します。取り替えるなら一気に外してから載せ替えましょう。

このようにハンダ熱の加え方にもよりますが、10~100時間(場合によってはもっと)ぐらい電源を入れて放置しないと本来の性能を発揮しません。

ADCのコンデンサ交換

録音機能の音質改善です。

ADCアナログ電源は主電源である+5Vと0Ωの抵抗で繋がれています。これは、主電源の5Vのコンデンサを変えれば大きく性能が改善することを意味していますが、同時にADC動作ノイズが5V電源にダダ漏れすることも意味します。録音と再生を同時に行わないのならば、主電源コンデンサだけ放置するというのも手です。

本格的に改造するならばコンデンサ手前に0Ωのチップ抵抗が乗っているので、これを3.3Ωぐらいに替えた方がいいです。コンデンサだけ載せ替えてもあまり意味はありません。チップ抵抗がなければリード抵抗でも構いませんから、載せ替えた方がいいです(少々技術が必要なので、無理にはすすめません)。

部位付け替えの例
ADCのオペアンプ電源10V/220uF
ADCアナログ電源(5V)10V(6.3V以上)/220~470uF
ADCカップリングコン(2組)削除(バイパス)
ADC終段カップリングコンMuse FX 16V/47uF

あまり物療投資をしても仕方ないので、ほかはそのままにしました*1。Muse-FXはたまたま余っていた(他に使い道もなかった)ので付けてみました。ADCに関しては基準電圧コンデンサとADC電源の手前のチップ抵抗「0Ω」を「3.3~10Ω」等に変更する方が大きいと思います。

*1 : 一部取り外したコンデンサを流用しました

デジタル部の改善

これだけ改造するとデジタルノイズがあまり回り込んでいるようには(オシロでは)見えないのですが、チップ積セラを持っているので、デジタル部とDC-DCなどの「パターンはあるけど付いていない積層セラミック」を20個ぐらい付けました。この他タンタルのパターンもあるので、こっちもつけておくとデジタルノイズのアナログへの回り込みが減るかもしれません。

使用前、使用後

交換前交換後
board.jpg
board_con_after.jpg

やりすぎ(笑)

RMAA

Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB
+0.01, -0.09
Excellent
Noise level, dB (A)
-96.3
Excellent
Dynamic range, dB (A)
96.2
Excellent
THD, %
0.0036
Very good
THD + Noise, dB (A)
-83.1
Good
IMD + Noise, %
0.0059
Excellent
Stereo crosstalk, dB
-79.2
Very good
IMD at 10 kHz, %
0.0058
Excellent
General performance
 
Excellent

録音ボリュームの位置によって、SN、IMD、THDなどは若干変化しますがだいたいこんな感じです。ステレオクロストークは録音ボリュームが原因ですので改善できません(確認しました)。

THDなどは恐らく電源電圧の変動によるものですが、3端子レギューレータがないため(LC/RCフィルタのみのため)これ以上の改善は難しいようです。

音質は?

購入時は「歪み感のない良い音だけど高域が若干丸い。イマイチ明瞭感がない」感じでしたが、コンデンサを載せ替え等をすると高域の伸びがよくなり、圧倒的なクリア感があります。SNの向上が一番大きいのですが、歪み感もより一層無くなった感じです。ついでに低音もハッキリ出るようになりました。