ボルテージフォロワは入力ラインのL成分で発振するか?
エミッタフォロアには、入力抵抗を付けないと発振する現象が知られています。これは入力ラインのL成分により単体でコルピッツ型発振回路を形成するためです。FETのソースフォロアでも同じことが起こります。
では、オペアンプの場合のボルテージフォロアでも同じことが起こるのでしょうか?
発端
Chu Moyヘッドホンアンプ製作のコツにこのように書きました。
オペアンプ+側入力抵抗 1kΩ は発振防止用です。これを付けないとボリュームを絞ったり最大にしたとき、入力ケーブルのL成分で発振するとがあります。
エミッタフォロワが発振するのだから当然だと思っていたのですが、司さんのサイトで次のように書かれていました。
入力の「1KΩ」も保護目的です。これは「あくまで発振防止ではなく、保護目的」として入れる為の物です。(この抵抗を推奨しているオペアンプのデーターシート内に「発振防止効果として」と説明されている記述を見つけられませんでした。)
たしかに明かではないので確認してみしまた。発振防止で説明しているサイトを見たことないですし。
回路図
入力に接続する配線は通常コイル成分を持ちます。GNDと入力間にコイルが形成されると発振回路を構成した発振するはずです。ブレッドボードを使いテストしました。
4.7uHは大きすぎとの話もあると思いますが、他に適当なものがなかったので。でも装置内配線でも1uHぐらいは不思議ではありません。
実験結果
- 案の定発振しました。電源のコンデンサをはずしても発振しました。
- 増幅度を+2倍(1kΩ/1kΩの非反転増幅)にして試してみましたが発振しました。(0.7Vpp)
- 増幅度を+11倍(10kΩ/1kΩの非反転増幅)にして試してみましたが発振しました。(0.8Vpp)
- 出力にZobelフィルタ(0.1uF+10Ωの直列接続負荷)を付けた状態で、+11倍を確認したところ発振は収まりました。
- 出力にZobelフィルタ(0.1uF+10Ωの直列接続負荷)を付けた状態で、+2倍を確認したところまだ発振してました。(0.4Vpp)
- 入力ラインに直列に抵抗1kΩを挿入しても発振は収まりませんでした。
追加実験
最初は「やっぱり発振した!」と思ったのものの、後日嫌な予感がしたため回路を一箇所変更。入力コイルと並列に抵抗を付けて入力インピーダンスを充分下げた状態で検証を行いました。
案の定、発振は収まりました。つまり入力部のコイルLが、電源の変動やオペアンプ動作などのノイズを拾い140dB倍されて出力に戻され、それがまた電源の変動を生みだし発振していたと考えられます。
ちなみにこの状態でも、電源のコンデンサを外すと発振します。
まとめ
エミッタフォロワやソースフォロワとは違い、オペアンプのボルテージフォロワは(同じ原理では)発振しないようです。しかしながら、オペアンプ特有の増幅度の高さから、別の作用により発振することが分かりました。
増幅度が高いことを考えると、配線がある程度長さがあるとき、または周囲のラインから浮遊容量や浮遊誘導などにより信号を拾いやすいときは、オペアンプ端子の近くで10kΩ*1程度の抵抗を使いGNDに落とした方が安全だと言えます。*2
参考
なお司さんによると入力抵抗は電源投入時の保護になるそうです……なるほど。その保護でしたか。ノイズの面ではあまり大きな抵抗は付けたくないですけどね(汗)*3